夫がお取り寄せするものからしか得られない栄養がある
一年近くになるだろうか。
夫はお取り寄せにハマっている。元々推し活をしていた彼だったが、コロナ禍で一気に推しとの距離が開いてしまい、現場に出向くとこがめっきり減った。推しに使わなくなったお小遣いを利用して、夫は自分の食べたいものをお取り寄せしている。
「いいの見つけた〜」
「週末は、これで海鮮丼だぜ」
「お得だった」
などと言いながら、堪えきれない喜びを口元に滲ませて、私にお取り寄せの報告をしてくる。
お金を要求されることはない。
美味しいものを家族に食べさせることができ、尚且つ自分も好きなものが食べられると言うのが嬉しいようだ。いいヤツすぎる。しかしこれは、私が自分の都合のいいように解釈しているだけなので、本当のところ夫が何を考えているかは分からない。お金を要求したいのかもしれないけれど、言葉にしていないので私には伝わってこない可能性もないわけではない。夫が何も言わないことをいいことに、彼のお取り寄せを私が勝手に好意的に解釈しているだけかもしれない。私は家でゴロゴロとしているだけで、美味しいものを口に運ぶことができる日々に感謝している。腹の底から。いや、心の底から。
今回、夫のお取り寄せから得られた栄養のラインナップは、以下の通りとなっている。
素晴らしい。
これだけの栄養素を含む夫の今回のお取り寄せは、これだ!
いくらとほたてとかにのほぐし身。
「週末は海鮮丼にしよう!」
平日に届いた海鮮たちを、土曜日の午前中に夫は冷凍庫から取り出しいそいそと解凍していた。家族みんなが真っ白いご飯の絨毯にたっぷり乗せられて、尚且つ余らない量を目分量で適当に測り、皿に乗せた。残りは冷凍庫にしっかりとしまっていた。
夕刻。
私と夫と長男は、炊き立てのご飯を丼茶碗によそうと、その上に海鮮をたっぷりと乗せた。その姿は、まるで北海道の積雪を彩るカラフルなスキーウェアを纏った女子や男子のキャピキャピとしたゲレンデのようだった。雪原は太陽の光を反射して、いつもより彼らを彼女たちをより美しく魅せてくれる。
まだ半解凍だった海鮮たちも、ひと冬の恋を求めて燃え上がる男女のように、熱々のご飯の熱に浮かされてゆるゆると解けるように溶けていく。私はぐるりと福岡の甘い醤油をかけると、海鮮をたっぷり乗せたご飯を口に含んだ。口の中いっぱいに、幸せが押し寄せる波となって広がっていく。
う、うまーい!
「美味しいね!」と伝えると、夫も「うまい」と満足そうだった。
私はグラスに注がれた琥珀色のビールを流し込む。美味しいものと美味しいお酒。家族の満足げな笑顔。我が家のリビングには、幸せが満ち足りていた。食事から取れる栄養素だけでない、代え難い栄養がここにはあるのだなと思った。夫はそれを求めているのかもしれない。家族の笑顔からしか得られない栄養があることを、彼はきっと知っているのだろう。
おまけ
次男は海鮮を食べないので、でっかいハンバーグを作った。28cmのフライパンの半分を占めるハンバーグ。これは長男や夫も食べたくなるだろうなと思ったので、ソーセージとキノコを足して、味付けはオリーブオイルとガーリックでアヒージョ風。
みんなで箸で突きながら食べるハンバーグ。
これもまた美味しかった。残ったオイルは少ししかなかったので、一口大に切った食パンをフライパンに入れ、余ったオイルでカリカリに炒める。オイルが少し染みている場所と、カリカリになった場所。中はふんわりしている食パンはアヒージョにつけたパンともラスクとも違い、すごくうまい。酒もすすむし、おやつとしても最高。
エビスビール。燻製されているビール。
これが、かなり好みだった。嫌味のないほんのりとした燻製の香りが鼻から抜けて、クセになる味。やばい。うまい。これ好き、となった。このビールを飲んだ後、愛犬の散歩に行ったのだが、コンビニで再び同じビールを買ってしまうほどに好きな味。期間限定でないことを祈る。
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