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自然を目の前にすると、自然な「自分の声」が聴こえてくる
昨日、次男を保育園に送った帰り、近所の海辺を散歩してみた。
少し暑さが和らいだので散歩を再開。
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この1カ月ほど、暑さもあり家にこもりっぱなしだった。お盆連休明けから怒涛の仕事ラッシュ。家事仕事育児……ずっと続くタスクに追われて、頭がぼんやりしている感じがした。
この日は2歳次男の水筒をうっかり忘れてしまい、家に取りに帰り、再度登園した帰りだった。
その前の日は、次男の予備の着替え、またその前の日は、次男のおむつの予備補助を忘れていた。
きっと、保育園の先生には「忘れすぎじゃない?」と思われていただろう。多分、呆れられている。学生時代はほとんど忘れ物をしない子どもだったのになぁ……と苦笑する日々だ。
「忘れる」の「忘」って、「心を失う」って字が含まれている。
「忙しい」の「忙」って、「心を失う」って字が含まれている。
「今、心を失っているんだな」と感じて、なんとなく海辺に車を走らせてみた。
1時間くらい歩いたり海を眺めたりしたら、頭がスッキリした。
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波音が気持ちいい。
海と空が美しい。
何も考えずに歩くと、途中でウォーキング中のおじさんとすれ違った。いかにもウォーキングっていう服装だから常連なのだろう。
のどかですねぇ。
風が気持ちいいですねぇ。
おじさんに心の中であいさつして、ただひたすら歩いた。
海と空は驚くほど広い。
地平線がずーっと続いている。
大人になり、わたしは田舎が好きになった。でも子どものころは、田舎は何もなくて退屈だなぁーといつも残念に思っていた。
転勤族だった父が中学生のころ、この県に引っ越して住んでいたらしい。そのときに田舎が気に入ったらしく、都会にいたのに結婚後はわざわざこの田舎に越した。そんな父のエピソードを聞いて、「こんな田舎に住まなくても……」と子ども心に思っていた。都会育ちの母は、嫁いだ当初、何もない田舎にホームシックになってしばらく泣いていた日々だったとか。
でも、今はなんとなく、自然の近くに住むことを選んだ父の気持ちがわかる。
わたしは、小さい。
青空や海も比べると小さい。そして、わたしの悩みも不安もすごく小さく感じる。
ちょっとだけ今とは別の場所、遠くに行ける気がする。
大自然の中では人間の思考や悩み、抱えているものはちっぽけに感じる。だから人は、定期的に自然に触れたり見たくなるのかもしれない。歳を重ねるほど、さまざまな体験をするほど、そうなのだろうか。
そんなことをあれこれ考えながら、波音を聴きながら歩いていた。
途中で小さなパン屋があったので、パンとカフェオレを買って、ベンチで休憩。
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何もせず、ボーッと座っていた。なんとも贅沢な時間。側から見ると、ちょっと怪しい人かもしれないが。
仕事も、家事も、育児も。
今は忘れてただ目の前の青を眺めていた。
こんな時間は久々かもしれない。
すると、もう1人の自分の声が頭の中に流れてきた。今日はそのままのボリュームで、聴いてみることにした。
「遠くに行ってみたい。旅!一人旅!遊んでみたいよねぇー」
「イヤイヤ期、大変だよなぁ。ぜんぶイヤってさ、毎回理不尽だよなぁ。次男に怒りすぎてしまったとき、いつも反省しまくっているよね。お疲れさま自分」
「何にもしたくないよなぁー。今は。本当は」
「カフェオレに久々にガムシロップ入れた!昔はよく入れていたよねぇ」
「収入が増えても、時間はなくなる。意味ないよなーって、多分ほとんどの人が抱えている悩みだろうな」
「もっと、自由に文章を書く時間を増やしたい!書くのは楽しい。あまり意味ないやつ。誰かを笑わせるような、ホッとするような感じの」
「休まんとダメだよ。人は、仕事するためだけに生まれてきたんじゃない。わたしにとっては『体験を楽しむため』でしょ」
「心に関する学びを増やしたい。でも、カウンセラーになりたいわけではないんだよなぁ……何がしたいのだろう」
とめどなく頭の中に流れる声をただ受け入れ、共感しながら受け入れた。子どもっぽいのから、学生っぽいの、親っぽい声まで、さまざまだった。正直、ちょっと騒がしい。
でも、どれも私だ。いつもちょっと奥に追いやって、無視してしまう心の声を、ただ思う存分喋らせてみた。
帰りに歩いていると、同じように海を目の前にして、ボーッとコーヒーを飲んでいる人がいた。ふと目が合った。
この場所、いいですよねぇ。
大事ですよね。こんな時間も。
今度は、あいさつじゃなくて心の中でお互い会話できたと思う。多分。
*
おかげで昨日は久々によく眠れた。
何も状況は変わらないけど、なんだか自分が満足しているのを感じた。
やはり、人の心身の健康には適度な運動は欠かせない。さらに体を動かすことに加えて、美しい景色を見ることが私にとって効果的なのかもな。
また一つ、発見だ。
まず週1から習慣にしたい。
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