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読む本で変わるマインド|ポジティブとネガティブ

ここ最近はジム・コリンズの『ビジョナリーカンパニー』とかドラッカーの『マネジメント』をコツコツと読んでいて、1年くらい小説を読んでいない。

こうしたビジネス書は、マネジメントにおける優れた知見だけでなく、生き方や考え方についても、一般的に日本人が持っていないようなポジティブな要素を得ることができる。

日本人は仕事への満足度が国際比較でもかなり低い。その割に労働時間は国際比較でも長い方で、転職しないランキングでは上位だ。


仕事の満足度が低い日本人 ~ISSP国際比較調査「職業意識」から~

日本という仕事に対してネガティブな国で長年働いているなかで、『ビジョナリーカンパニー』や『マネジメント』の様な、アメリカ人が書いたアメリカの企業分析による本を読むと「本来は仕事ってこんなにも素晴らしいものだったのか」といった気持ちになってしまう。

もちろん、ネガティブな意識が蔓延した組織においても、これらの本を読んで役に立つことはたくさんあるが、自分ひとりがポジティブになってもすぐには組織は変わらず、歯痒い気持ちになることがあるのは空しい事実だ。まぁ、自分が仕事に対してポジティブになれるだけでも素晴らしいことだが。

一方で、昔はよく小説を読んでいた。小説の中では仕事をする組織に翻弄される登場人物や人生に対して過度に悲観的な登場人物がたくさん出てくる。仕事の役に立つどころか、悪影響の方が大きいかもしれない。それはそうだ、ビジネス書ではないのだから。

ここ数年で読んだ最もネガティブだった小説はウェルベックの『セロトニン』だったと思う。一気に読み終えたが、凄まじく暗い気持ちになったことを覚えている。今は文庫でも手に入るらしい。

ウェルベックの作品はいつも厭世的であり、西欧のエリートである中年男性の苦悩が描かれている。自由と豊かさを手にした現代社会の欺瞞や矛盾をネガティブな筆致でさらけ出すように書いているのだ。

『セロトニン』では、上流階級出身で中年のフランス人男性が蒸発してしまい、過去の恋愛を辿りながら、彼の視点で現代のフランス社会が描かれていく。蒸発した彼は恋愛や性に対して希望を求めそうに思えるが、抗鬱剤を服用していることから、その副作用によって性欲が消失してしまっている。彼には逃げ場がないのだ。

こういう鬱屈した小説を読んでいると、斜に構えた思考をするようになり、現代社会にも希望ではなく欺瞞や矛盾を見つけてしまうようになる。ビジネス書とは全然異なる価値観なのだ。

では、どちらから影響を受けた方が、より良い人生を送れるのだろうか。

これには正直なところ正解は存在しないように思える。ビジネス書を読んで奮起して働き、数々の苦労を乗り越えて成功を手に入れることができれば、それは素晴らしいことだが、ウェルベックが描くような没落するストーリーの主人公になってしまうかもしれない。

そもそも、ビジネス書と小説では役割が違い、読者のターゲット層も違う。ビジネス書は仕事の課題を解決するためのノウハウや考え方を教えてくれるもので、小説は社会や個人を表現することで読者を楽しませてくれるものだ。

個人的にはウェルベックの小説にのめり込むことなく、ビジネス書を読んでポジティブに働き続けて成功したいものだが、きっとこれからもウェルベックの小説が出たら読み続けてしまうんだろうと思っている。

その方が性に合っているし、これだけ好んで読み続けている以上、もはやもう元には戻れなさそうだ。

人生は厳しくてしんどい。だからこそ小説が必要なのかもしれない。

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