見出し画像

【前書き公開】なぜ外国人に「ちゃんと」が伝わらないのか -日本企業で外国籍人材に力を発揮してもらうために-

9月16日取次搬入の新刊、『なぜ外国人に「ちゃんと」が伝わらないのか -日本企業で外国籍人材に力を発揮してもらうために-』(稲垣隆司 著)の前書きを公開します。 

会社業務における基準(モノサシ)は国によって大きく異なっています。その違いを理解しないまま、急に外国人社員のマネジメントを任されると管理職は戸惑うことになります。「ちゃんと時間を守って/ちゃんとルールを守って」と指示しても、その「ちゃんと」の基準が大きく異なるからです。
いまやこのようなトラブルは一部の企業で起こっていることではありません。
本書では、それらの問題を解決するための考え方や具体的な方法を、外国人採用で広く使われる適性検査CQIに蓄積された世界110カ国・地域の人材ビッグデータの分析結果や、著者の海外赴任時の経験などをもとに解説していきます。


はじめに

 筆者には6歳の息子がいるのだが、朝から晩まで「ちゃんと」を連発してしまう。
「ちゃんと起きなさい」
「ちゃんと見なさい」
「ちゃんと言いなさい」
子どもに投げかけている言葉を書き出すと、親としての教育姿勢を反省し冷や汗が出る次第だが、「ちゃんと」という言葉がなんとも便利な言葉だと実感する。
 英語では、伝えたい内容に応じて、“early”(早く)や“carefully”(注意深く)、“clearly”(はっきりと)などの具体的な言葉を使う。
Wake up early.
Watch carefully.
Say it clearly.
そう考えると、どんな状況でも「ちゃんと」の一言で伝えられる日本語は面白い。 外国籍の方と仕事をしている日本人が、「彼らはちゃんと仕事をやってくれない…」と嘆いているシーンをよく見かける。私自身、英語もろくに話せない状態で、2014年39歳にしてインドネシアに移住し、初めて海外で働くという経験をした。言葉の問題がなかったとしても、仕事の仕方が違うことに苦戦し、失敗をたくさんしてきた。
 日本のグローバル化は加速する。2023年10月には、外国人労働者数は204万人を突破し、過去最多となった。少子高齢化の一途をたどる日本としては、外国籍人材に力を発揮してもらうことが欠かせない。さらには、労働力やマーケット、技術、ネットワークなどを得るために、国境を超えて活躍する日本人が増えていくだろう。
 この本を手に取っていただいた方は、海外で働こうとしている方、外国籍の方と仕事をしている方、また興味のある方だと思う。
 私がこれまでの仕事で経験したことや、大学の先生方と積み重ねてきた研究結果、クライアントや外国籍の方と向き合い見えた解決策などを余すことなくお伝えしたい。
 この本をきっかけの一つとして、グローバルに活躍する日本人、日本企業が増えていくことが何よりの望みである。グローバル化は明るい日本そのものである。
2024年初秋 著者 


書誌情報

書名 なぜ外国人に「ちゃんと」が伝わらないのか-日本企業で外国籍人材に力を発揮してもらうために-
著者 稲垣隆司 著
判型 四六判並製372ページ
ISBN978-4-384-06127-7 C0036
定価2,640円 (本体 2,400円+税)
電子書籍あり

目次

第一章 なぜ外国人に「ちゃんと」が伝わらないのか(文化編)
 英語もろくに話せない三十九歳が海外に飛び込んだ
 「自分の価値観」を押し付けて大失敗する
 イスラム教を理解せず、部下にたしなめられる
 日本人の「ちゃんと」と外国人の「ちゃんと」の違い
 世界の文化分類に属さない特殊な日本文化
 文明と文化の違い
 月一回しか遅刻を許さない日本と、月四回許されるインド

第二章 なぜ外国人に「ちゃんと」が伝わらないのか(コミュニケーション編)
 日本人の特殊能力「空気を読む力」
 日本人のハイコンテクストに戸惑う、ローコンテクストな欧米人
 ハイコンテクスト同士でも会話がズレてしまうワケ
 日本企業の競争力の源泉、暗黙知
 メタ認知能力を高め、自分の「暗黙知」に気づく

第三章 「ちゃんとやって」からの脱却法
 早期離職の実態
 モチベーションダウンの実態
 文化の違いから起こるトラブル
 形式知化のフレームワーク「モノサシ・理由・メリット」
 そもそもそのルールは必要なのだろうか
 自分の常識は世界の常識ではない

第四章 文化の知能指数「CQ」が必要な時代
 IQ、EQ、そして文化の知能指数CQ
 外国籍人材の適応力を測る、世界唯一の検査CQI
 CQI活用事例
 スポーツチームから学ぶD&I
 日本人の受容力を測るCQI-II
 CQI-II活用事例
 「意識」と「感覚」に訴えるて、海外希望者を増やす
 日本人の海外赴任力を測るCQI-III
 CQI-III活用事例

第五章 CQIからみるこんなに違った各国の常識と文化
 平均値で捉える各国の常識と文化
 自国文化の誇りが強く、成長意欲の高い韓国人
 自律しつつも、強い仲間意識のある中国人
 温和で、モチベーションの強いフィリピン人
 輪を乱さず、信頼関係を大切にするカンボジア人
 マイペースでシャイな、仲間意識の強いインドネシア人
 思いやりが強いが深く干渉しない、ポジティブなタイ人
 外向性が高く成果にこだわる、生き抜く力の強いインド人
 ハングリー精神とキャリア志向の強いベトナム人
 短期間で人間関係を作り、建設的主張のできるネパール人
 真面目で、洞察力が高い日本人

第六章 日本のグローバル化への挑戦(鼎談・対談集)
 グローバルで戦うために、ポリシーを形式知化せよ(JERA代表取締役社長奥田久栄・一橋大学名誉教授米倉誠一郎)
 違いを楽しもう!(レアジョブ代表取締役社長中村岳)
 「なりたい自分になる」外国人エンジニアを増やす(ヒューマンホールディングス代表取締役社長佐藤朋也)
 国の後押しを引き出すグローバル化(パソナグローバル事業本部副本部長小林景子)
 高度移民政策で日本をグローバル化させる(フォースバレー・コンシェルジュ代表取締役社長柴崎洋平)
 法律の整備で日本の外国人雇用を進化させる(Global HR Strategy代表社員弁護士杉田昌平)
 国境を越えたONE TEAM(元ラグビー日本代表キャプテン廣瀬俊朗)
 もう一つのD&I、女性活躍が経済発展の鍵となる(morich代表取締役社長森本千賀子)
 もう一つのD&I、障がい者とシニアがもたらす光(ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ代表理事志村季世恵・ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン創始者志村真介)
 異文化コミュニケーションとは(東京女子大学准教授正木郁太郎)
 自由であれ! 無駄なことはない!(一橋大学名誉教授米倉誠一郎)

おわりに


著者プロフィール

稲垣 隆司(イナガキ タカシ)
株式会社エイムソウル代表取締役社長。
同志社大学卒業。急成長したベンチャー企業で人事部責任者を務め、年間600名の新卒採用の仕組みを作る。2005年株式会社エイムソウルを設立し、700社を超える顧客の採用や教育などをサポートする。2014年インドネシアに進出し現地に人事コンサルティング会社を設立。海外に進出した日系企業に特化して人事コンサルティングを行う。2020年に異文化適応力検査(CQI)を開発し特許を取得。集まったビッグデータを基に日本のグローバル化を促進させるべく課題解決に取り組む。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?