「創作大賞感想」〜『銀山町妖精綺譚』を読んで〜
著者である福島 太郎氏と私との出会いは、このnoteの中でスズムラさんと言う大好きなnoterさんを通じて知り会った事から始まる。
それは昨年のクリスマス・イブの事だった。
福島氏は私の拙い小説「僕の喪失」を読んで、亡き夫の愛犬「ゴンちゃんへおやつを買ってください」と言ってサポートをしてくださった(感涙)
まだ知り合って間もない頃の話しである。それまで私はクリスマス・イブが嫌いだった。主人が
「死か脳死、良くて植物人間」
と医師から宣告を受けたのが、ちょうどクリスマス・イブの日だったからだ。
でも昨年のこの福島 太郎氏の優しい粋な計らいで、薄皮が剥がれるようにクリスマス・イブが好きになった。そんな経緯で、いつか福島 太郎氏にお礼をしたいとずっと思っていた。
福島 太郎さんは、読んで字の如く福島県に席を置く公務員である。そして東日本大震災で大きな打撃を受けた福島県の復興を心から願う一人の人間であり、作家である。
実は私はこれまで「公務員」が大嫌いだった。
それは主人が倒れた時に助けて欲しい立場に居た私に数々の心ない言葉で罵倒したのが公務員と言う職業の人達だったからだ。
でも福島 太郎さんは、そんな私の偏見を見事に粉々に打ち砕いてくださった。
それに関して、私は心からお礼を申し上げたいと思う。
公務員も個である。私が出会った人達とは明らかに違う公務員像を福島 太郎さんが創ってくださった。
本当にありがとうございますm(__)m
「銀山町 妖精綺譚」を読んで
さて私が今回、初めて「福島文学」に触れて感じたのは、先ず「誰も悪人は居ないのに小説として成り立っている」と言う点だった。
私も小説のような物は書いているが、ドラマチックに仕立てたいが為に「悪人」も登場させるし「殺人」も犯す。まぁ、ミステリー好きなので、それは勘弁して頂くとして(苦笑)
※此処からは若干の「ネタバレ」を含みます。
物語は田中と言う何処にでもいるような大学を卒業して職を探していた青年が、銀山町の町役場に就職して来るところから始まる。
目を閉じて欲しい。
えっ、目を閉じたら読めないじゃないかって(苦笑)それはそうだね、では心の中で想像して欲しい。
「妖精の住むふるさと」と言われる美しい只見川の深緑色や渓谷、銀山湖、山々の姿を…
物語自体は簡単に言うと「妖精の住むふるさと」造りと称した「町興し」の物語なのだが、公の職にある人々が限られた予算や限られた枠の中で、意見をぶつけ合い、苦しみながら目的に向かって一丸となって動いて行く様が実にリアルに描かれている。
それはそうだ。福島氏は現役の公務員なのだから、これ以上リアルに描ける作家は彼をおいて他に居ないだろう。思わず私はこんな公務員の方々に出会っていたら、あんな酷い目に遭わなかったのにと登場人物全てに熱い拍手を送りたい気持ちになった。
主人公の田中も、その上司の高橋も、半沢も郷田も桜井も……皆が銀山町を真剣に愛し良くする為に動いている。この皆の姿が私は著者である福島氏と重なって胸を打たれた。
物語の伏線として出てくる稲村助教授の「絶対に黙っていてね」と言う「これから小説」になるであろうお話しが、また魅力的で良い(語彙力)
このお話しが後半を読み応えたっぷりに読者を妄想の世界へと引き連れて行ってくれる。
「下町ロケット」のようなひたむきさもあり、淡い恋がところどころに散りばめられた福島 太郎氏の筆の柔軟さが光る。
読み終えると私の心の中に、ほわんとしたホタルのような光が芽生えた傑作である。
努力しても報われないこともある。けれど努力しなければ何も始まらない。それは縁や運も、もちろん作用する。正に「妖精」のような不思議な力と言っていいかもしれない。
稲村助教授の「恩は返さなければね」の一言が点から線へと繋がった時、貴方はきっと「あっ、そうだったのか」と気付くはずだ。
福島氏は「優しい人が穏やかに暮らせるのがいいですね」とコメントで言った。
貴方もそんな福島 太郎さんの文学に触れて、人の温かさを感じてみませんか。
↓こちらから、読み進められます。
妖精は皆さんの心の中に居るのかもしれません。
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