十二月の殺人鬼#「シロクマ文芸部」
十二月になると思い出す。
母と手を繋いで急な坂道を上った先に、その家はあった。樹々に囲まれた庭の向こうにひっそりと建つ瀟洒な洋館の前に立ち止まると母は一息付いてから、僕にこう言った。
「今日から、此処が私達の家よ」
幼かった僕は母が何を言いたいのか分からなかった。
母と僕が暮らしていた家は、坂道を下った所にある小さな借家で、いつも漁師が釣ってきた魚の臭いが充満しているあの場所のはずだった。母の顔を見上げて僕は聞いた。
「お引っ越しするの?」
僕の手を握りしめる母の手は、真冬