電池兄弟
わたしの使っている補聴器は、空気電池を入れて使っている。今は充電式のものも出ているらしいんだけれども、相変わらず電池式のものを使っている。
おなじみの細長いアルカリ電池は、太さによって単三とか単四とか電池の種類が分けられている。それと同じように、補聴器の電池は直径の大きさごとに黄色の10A、茶色の312、オレンジの13、青色の675の4種類。
補聴器の大きさによって、使う電池がかわってくる。経験的に、電池が大きいほうが持ちも良い気がしている。
今日も、外出先で電池が切れてしまったので、近くの眼鏡屋さんに行って新しい電池を購入してきた。時計とかもそうだと思うんだけど、電池がなくなりかけているときと新しい電池を入れたときでは聞こえ方にもちょっと違いがある。なんていうか、新しい電池の方がパワーが強い。
この電池は、補聴器屋さんや眼鏡屋さんに売っていることが多い。普段は補聴器屋さんで安売りセールをしているときに箱買いするんだけれども、それが底をついてしまった。ちなみに、家電量販店とかに行くより、その辺の眼鏡屋さんの方が確実に置いている。
外出先で補聴器の電池が切れてしまうということは、眼鏡屋さんに行く頃には無音の世界を歩いているわけで。お会計とかは全部、筆談で済ませてきた。
今はこうやってコミュニケーションモードを工夫すればいいやと開き直れるけれど、音に頼りきりだった学生時代は補聴器の電池が切れてしまうということは大事件だった。友達とのコミュニケーションはもちろん、外の音が聞こえないのはとてもとても不安で。いつも、予備の電池を両耳あわせて4つくらいは持ち歩いていた。
大学に入ると、同級生にも先輩後輩にも補聴器ユーザーがぐっと増えた。そのメンバーでお泊まりに行ったときのこと。
先輩の一人が
「ねーねー。青い電池の人いない?」
とみんなに尋ねていた。どうやら、予備の電池がないのに補聴器の電池が切れてしまったらしい。それは困ったなぁと当時オレンジの電池を使っていたわたしがそれを眺めてると、
「持ってるよー!わたしたち、電池兄弟なのね‼︎」
と嬉しそうに電池を分けてあげていた。その流れで、みんなの補聴器の電池はどれなのかという話で盛り上がった。
わたしの学年より上は青い電池を使っている子が多かったから知らなかったけれど、後輩たちの多くはオレンジの電池を使っているらしく、わたしにも電池兄弟がいることが発覚してとっても安心した。補聴器仲間ってだけでも貴重なのに、電池まで同じ種類というのはなんだか嬉しい。
社会人になって、また周りは聞こえる人たちだらけになったので、予備の電池は肌身離さず持ち歩いているけれども。街中で補聴器をつけている人を見つけると「この人は、兄弟かしら」とつい気になってしまう。声はかけないけどね。
とにもかくにも、今わたしのポーチには5つも新しい電池が入っているので、あと一ヶ月くらいは安心して生活していける。だいじ。