【芒種】梅子黄(うめのみきばむ)-お稽古日記、再開します-2022
去年のわたしは、お茶のお稽古に行っては淡々とその日のお稽古の記録をnoteにつけていたというのに、その習慣を2022年にうっかり忘れてきてしまったようだ。やっと取り戻してきたので、2023年も下半期に入るというこの芒種の末候から、ひっそりまた再開しようと思う。
といっても、わたしがお稽古記録をつけるという習慣を去年に忘れてきてしまっていた間も、お稽古は淡々と続いていた。
お社中のお姉様方と、かの首相や政界の方々も通われている懐石料理のお店「辻留」さんに集った年始の初釜。
写真を見返すたびに、ずっと憧れだったお店で運びのお手伝いまでさせていただいたあの緊張感と高揚感を思い出す。
冬の間はまた世の中が不安定でお稽古も休み休みではあったけれど、炉の間に四ヶ伝のお稽古をひと通り経験させていただいて。
お茶のお稽古は、先生が「次はこれをやりましょうかね」とGOサインを出してくれるまでは絶対に次には進めない。特にこの四ヶ伝のお稽古は、教本に載っていない口伝のお点前。先生にとっても気合の入るものらしく、着物で正装してのお稽古。
手取り足取り教えていただきながらのお稽古だったけれど、毎回新しいお点前を覚えていくのはとても楽しいし、なにより、四ヶ伝は出てくるお菓子の量が多くて。水族館でショーをするアシカみたいな気持ちでお菓子を楽しみに通っていた気がする笑。
お茶の世界では4月までが冬、5月からが夏になり、使うお道具がガラッと変わる。
冬の間にひと通り経験したはずの四ヶ伝も、夏になるとまたお点前が変わるらしい。夏休み頃からまた夏の四ヶ伝が始まるらしいから、それまでにnoteにお稽古記録を残す習慣をつけておこう。
さて。この日お稽古に行くと、茶室に台子が置いてあった。
台子というのは、格式の高いお茶会で使われる棚のこと。他の方がお稽古された翌日にお茶室に入った日に何度か見たことはあったけれど、これも先生から「使っていいわよ」と言われるまでは使えないのでずっと見たことはあるけれどよくわからない棚だった。
この日も台子は目に入ったけれど、わたしには関係ないんだろうな……と別の棚を使ってお稽古が進んでいた。二服目を吸い切ったそのとき、先生がにこにこしながらわたしにこう言った。
「折角ここに台子があるのだから、三服目はこの台子を使って点ててみましょうよ」
びっくりしたのやらうれしいのやら。
「うれしいです。わたしにも使わせていただけるんですか……‼︎」
と答えると
「もちろんよ。お濃茶はまだ難しいけれど、薄茶だったらあなたにもできるはずよ。」
とのこと。
ドキドキしながら、初めて手に取る蓋置や箸に触れていく。
最初は先生の指示を待っていたけれど、少しずつきっと次はこう動いていくんだろうな……と頭で考えるよりも先に身体が動いていって、あっという間に一服のお茶が点った。
「ほら。ちゃんと身体が動いてくれたでしょう。真摯にお稽古に取り組んでいる証拠よ。」
ふわふわと泡立つお茶が、いつも以上に愛おしく感じる。今日この日の、初めてお道具に触れさせてもらえたこと、そのお道具たちを考えるよりも先に身体が扱っていた感覚を、これからも大切にしていきたいな……なんてことを思いながら飲んだお茶は、身体の中心をツーッとあたためていった。