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歳を重ねて、ほろ酔いで街を歩いて@福岡・小倉
「いやー。僕もね、長いこと教員という仕事をしてきたけれど、君たちの学年ほど大変な学年はいなかったよ。」
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この日は、中学校のときの恩師たちと夜ご飯。
わたしの出身中学校はひと学年8クラスもあるようなマンモス校で、その中で彼らはわたしの担任でもなかった2人だけれど。でも、ひょんなことをきっかけにFacebookやInstagramでわたしを見つけて、フォローしてくれている。
そしてこの夏、どうしても会いたくなって会いに行ってきたのだ。修羅の国、福岡は小倉へ。
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トイレにタバコが詰まっていたり、放課後の教室からシンナーの臭いがしてきたり、日常的に窓ガラスが割れたり、夕方の公園で隣の中学校とタイマン張ってたり、ヤンキー学園モノで見るような多くの出来事を、ナマで見られるような中学校で、わたしみたいな仙台から転校してきた耳のきこえにくい女の子が、彼らの目にとまって卒業して10数年を経ても記憶に残っているのは奇跡かもしれない。
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ここのサイゼリヤと喜久屋書店に通ってました。
今にも雨が降り出しそうなジメッとした駅に向かうと、支援学級の担任だった先生が、懐かしいそのままの姿でわたしのことを待ってくれていた。
「さんまりちゃん、おかえりなさい。彼ももう来ているのよ、どこにいると思う?」
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……‼︎
わたしたちが手を取り合ってニコニコしている様子を、隣の柱からこれまたニコニコして眺めている(当時の)教頭先生が現れた。
「よーし、行くか」
と彼の掛け声で、わたしたちは1軒目のお店へ。
まずは軽くビールを飲みながら、近況報告を。あの頃現役バリバリだった2人はもう定年を迎えて、今は再雇用として教育現場に携わっているとのこと。
もちろんわたしの近況も。お仕事のこと、プライベートのこと、今の仕事でちょっと悩んでいること。
イチ社会人として、彼らと向き合う日が来るなんて信じられないなぁと夢の中のような気持ちで2軒目へ。
まだ、酔っ払ってはいない。
次のお店は、コイン式で発泡酒をサーバーからいれるシステムのちょっとディープなお店。
教頭先生が意気揚々と注文や発泡酒の準備をしてくれるので、わたしたちガールズは席でおしゃべり。すると彼女が
「今日ね、家を出てくるとき家族に、この写真の子と会ってくるのよ。もうちゃんと働いてるんだって。って家族に自慢して出てきたのよ。」
と教えてくれた。
10数年前、当時出身中学校に通っていた妹の土曜参観に、進学した高校の制服を身に纏って遊びに行った日に撮った写真を、今もご自宅に飾ってくれているんだって。
大学進学も、今のお仕事も、彼女が支援級の子たちとかかわる姿がかっこよくて憧れて背中を追っていたもんだから、そんな彼女もわたしとの思い出をずっと大切にしていてくれたということに、幸せでちょっと泣きそうになった。
そういえば彼女は、あの日と同じお洋服を見に纏っていてくれていて。
「この人に会うからこのお洋服にしよう」「ここに行くからこのお洋服を着よう」
わたしも、旅に出るたびにその土地で会う人を考えながら、云々とその日に着るものを考えることがすごく好きで。あぁ、こういうちょっとした習慣もまた、中学生時代に彼女から感じたものをもって生きているのかもしれない、なんてことを考える。
夜が更けていく。
教頭先生と支援級の先生は、わたしの出身中学校以外でもよく一緒にお仕事をされていたらしく、今でもとても仲良くしているらしい。今回はわたしが個別に二人に連絡をして集ったのだけれども、お二人にとっても居心地の良いメンバーだったらしく、そんなところにもホッコリしたり。
今社会人になったからこそ分かる、先生たちのお仕事とか、社会の理不尽なところとか、ここ最近常々思うこととか、そんなことをこうしてお酒を交えながらおしゃべりする日が来るなんて、あの頃のわたしはびっくりしちゃうだろうな。いや、案外「そうだろうなー」とニマニマしているかもしれない。
とにかくわたしたちの学年は大変だったらしく(だろうな)、あの頃聞いてはいけないんだろうなと思っていた、〇〇先生の××のこととか、△△くんの▫︎▫︎のこととかを教えてもらっては「あぁ、ご苦労様でました」となったりしていたら、良い感じに3人ともフラフラに。
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締めのブラックコーヒーを飲んで二人を改札口まで見送る。改札を通って一回振り向いて「またねー」と言った後は一度も振り返らずにズンズンとホームへ向かっていくところとか、その姿があの頃よりちょっぴり小さく見えたこととか、何年経っても彼らはわたしの大切なひとたちなんだなとか、そんなことをぐるんぐるんと想いながら、今宵のお宿へのんびりと歩いた。
だいぶ、酔っぱらっちゃったなぁ。
年も重ねちゃったなぁ。
でも、その全部が愛おしいんだなぁ。
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