お耳の先輩と漆琳堂工房見学ツアーと@福井
なぜだろう。
わたしのまわりは、聴覚障害者であふれている。
いつもnote読んでくださっている方は充分承知だと思うのだけれども、このnoteを初めて読んだ方にとっては初めましてのカミングアウトをすると、わたしは聴覚障害者です。
あの、木曜日の22時からやっているsilentというドラマで、イケメン俳優目黒蓮さんが演じている男の子のように、高校生くらいからぐっと聞こえなくなって、今は補聴器をつけて生活しています。
ちょっと違うのは、家族以外の前でも声を出すこと。あと、口の形を読み取ったり音声を聞き取ったり、いろんなコミュニケーション手段を使いながら生活しているところでしょうか。
そんなわたしの左耳には、白い補聴器がちょこんとのっかっていて、特にわたしの聴覚障害を知らない初めましての人と会うときには意識的に補聴器が見える髪型をしています。
普通に喋れると「聞こえにくいんです」ってなかなか伝わりにくいから。補聴器がいつも見えると「あぁ、この子はやっぱり聞こえないのか」と、思い出して筆談してくれたり同じ話をもう一度してくれたりするので、ラッキーと思って。
「分からないから助けて!」と言うのは簡単だけれども、上手く伝えないと周りは「障害者を助けてあげる人」にならないととしんどくなるし、わたしも「いつも助けてもらわないと生きていけない人」としんどくなってしまうのです。どうしたもんなのかは永遠の課題だなと思いながら、察してくれる周りのおかげで、どうにかこうにか生きています。
さてさて。先日、学生の頃からの友人と福井県は鯖江市に行ってきました。
目的は、福井県鯖江市・越前市・越前町で開催される、持続可能な地域づくりを目指した工房見学イベント「RENEW(リニュー)」
以前からものづくりに興味があって、ずっとずっと行きたかったこのイベント。数年前に行く予定が台風で流れてしまって、その後はなかなか地方に行けるような世の中ではなかったので、この秋ようやく行けたこと、本当に本当に嬉しい。
この日は友人の乗ってきた電車の遅延があって、待ち合わせは会場へ向かうバスの中。鯖江駅を発車する直前に、ギリギリ集合できました。
田園風景が続くバスで向かったのは、総合案内所にもなっている「うるしの里会館」。
ここで検温と受付を済ませて、ちょっぴり腹ごしらえしてふらっと歩くともうひとつ目の工房が。
福井間河和田地区で約200年、八代に渡って越前漆器を作っているという【漆琳堂】さん。
入り口に行くとちょうどこの日の夕方に、工房見学があるとのこと。せっかくだからと受付の方へ見学の希望を伝えると、定員はあと一人だったようで。
と残念がってその場を去ろうとしたら、入り口にいた方が受付の方へやってきて何やら相談をはじめて。ちょっと待っていたら、「今回は特別ですよ」と工房見学ツアーに参加できることになりました。やったー!
工房ツアーの最後に、この漆琳堂は200年の歴史があること、現在八代目であること、そして先程入口でお会いした方は会長であること……‼︎を教えていただきました。
改めて会長を見ると、両耳にゴールドのかっこいい機械がちょこんとのっていました。そう、わたしの左耳にあるのと同じ補聴器……‼︎
つい嬉しくなってしまって、これは後でお話ししに行かないと…‼︎と(補聴器を付けている人は、みんな仲間だと思っているのでね。)工房ツアーが終わるやいなや入口へ駆け寄って
と話しかけに行きました。(人見知りしない酒飲みなのでね。)そしたらすぐに手招きしていただいて、工房の外へ。
そうですよね。工房のなかは賑やかで、わたしたち補聴器ユーザーにはしんどい場所ですよね。
そして、
「いやー。そんなに耳を見ないでよ。恥ずかしいじゃないか。」
なんて言いながらも
「ぼくもね、君の耳に気付いたんだよ。お友達はマスクもしているし、大変でしょう。頑張っているね。だから、ぼくたちの工房をぜひ見てもらいたいと思ったんだよ。」
とニコニコ教えてくださりました。
なんと……‼︎補聴器の見える髪型が、定員ひとりだったはずの工房見学ツアーという素敵な機会を運んできてくれたのか、とお耳に感謝。
やっぱり、補聴器を付けている人たちはみんな仲間でした。ふふふ。
北陸は福井のものづくりイベントでも、聴覚障害者にめぐり会ってしまうだなんて。本当にわたしの周りは、聴覚障害者であふれているんだなぁ、と嬉しくなった夕暮れ。
素敵な出会いをありがとう。わたしの相棒さん。