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□と○ どっちが好き? つぎに○のプレゼンします。
餅の話です。
昨日、四角い餅の魅力について(っていうか四角くなる前の段階)プレゼンをしましたので、今日は丸い餅のターンです。
私のおばあちゃんは九州に住んでいました。農家で、お米や野菜を自分で作っていました。
おばあちゃんは昔かたぎの人で、そんなものまで自分で作れるの?っていうものまでなんでも自分で作ってしまう人でした。
かつお節はクギが打てそうなカッチカチの塊をカンナで削るところから。お味噌は大豆から。そして餅はもち米を栽培するところから全部自分たちでやります。
お正月には親戚中を集めて餅つき大会が開かれます。おじいちゃんとおばあちゃんが丹精込めて作ったもち米を、親戚中からかき集めたどでかい鍋で蒸します。しかもとんでもない量作ります。親戚中に配っても余るほどのもち米を、たった1日で餅に変えなくてはなりません。
もち米が蒸しあがると、おじさん達が杵と臼でぺったらぺったらつき始めます。とんでもない量の餅を、おじさんたちはつき続けます。「よいしょー!よいしょー!」その掛け声に合わせて、おばさん達は手を打たれないように、水をいれながら餅を返す係をします。
孫たちは庭のまわりで走り回ってその様子を眺めていました。そのうち「あんたたちも手伝ったい!」と言われ、餅つきに参加します。こうやって餅つきの技を代々継承していくのです。
ようやくつきあがった餅は別のおばさんの手に渡り、ここで餅を丸める作業が始まります。そう、素手で丸めるのです。あつあつの餅を、まあるく丸める。これは手の皮が相当厚くなった熟練の主婦にしかできません。
おばあちゃんはかなり厳しい人だったので、この段階の餅を食べることは許されませんでした。絶対美味いに違いないのに、翌日の固くなった餅からしか食べられないのが残念で仕方ありませんでした。(1人食べ始めるとみんな食べてしまって、餅つきが頓挫しちゃうんですよね)
さて、餅は次から次へつかれ、丸められ、親戚中に配られていきました。
翌朝、その丸い餅をおばあちゃんが焼いてくれます。
トースターなんてしゃれたもの、おばあちゃん家にあるはずありません。
石油ストーブの上で焼くのです。
まだ寒い冬の朝、赤く光るストーブの上に網を置いて、まあるい餅をのせます。だんだんときつね色にかわる餅。早く食べたいと駄々をこねては「なんね!せからしか!ばあちゃんが今焼いとるが!」と叱られました。
真ん中がふくらんできて、きつね色が焦げ茶色に変わるころ、パリッと音がして裂け目からぷくーっと真っ白な餅が顔を出します。
おばあちゃんはその時を見計らって、菜箸でお皿に入れてくれます。
1つ目はそのまま。
口に入れた瞬間、めっちゃくちゃ美味い。
表面に少し粉っぽいさらっとした謎の何かがあって、焼き目が香ばしくてカリッとしてて、その中からもっちもちのもちが飛び出します。
どこまでも伸びていきそうなくらい、みにょーーーんと伸びる餅。こんな美味い餅食べたことがないくらい美味しかった。丸いから、角の固い部分がない。
ちょうど食べ終わるころ、2つ目の餅が焼きあがりました。
次は九州名物、甘醤油です。砂糖醤油とはちょっと違う、トロリとした甘い醤油。
焼きたての餅を甘醤油につけると、ジュッと音がなります。ちょっとつぶし気味に甘醤油につけて食べるまあるい餅。
めちゃくちゃ美味い。九州独特の甘めの醤油が餅に合う。最高。
おじいちゃんおばあちゃんが作ったもち米で、
親戚の皆がついた餅を、
石油ストーブで焼いて、
甘醤油で食べる。
こんな美味い掛け算他に知りません。
おじいちゃんもおばあちゃんも今はもう亡くなって、畑と杵と臼は叔父さんに継承されました。
が、おじさんの代で餅つき大会が開かれることはありませんでした。畑もいつの間にか別の人の物になっていました。仕方がありません。叔父さんは農家じゃなくてサラリーマンなんですから。
こうやって代々継承されるはずのものはだんだん消えゆくのでしょう。
そんな思い出補正も加わって、私はつい、スーパーでは丸い餅を選びます。
あなたはどっちの餅が好きですか?
#66日ライラン 7日目
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