赤ちゃんが座って抱っこを許さない理由
「大きくなるのが嫌なことがひとつある」
と5歳の娘が言った。
「抱っこしてもらえなくなる」ことだそうだ。
娘は毎朝抱っこで起きる。朝必ず抱き締めておはようして、抱っこする。
生まれたとき、あんなにすっぽり腕の中に収まっていた娘も19キロ……抱き上げるとき思わず「ンッショッ!!」と、本気の声が出る。かわいいヨイショじゃなくて、あの重量挙げの選手が出る声のやつ。
そんなある日、
抱っこして
と言われて、(重いなー)と思いながら
抱きしめてひざの上にのせていたら、
「違う違う。それは抱っこじゃない!」と全力で否定された。
確かに、いろんな赤ちゃんをみてきたが、どんなに小さくてもなぜかみんな、立って抱っこから座って抱っこすると、気づく。
不思議なほどに、そっと座っても気づいて「立って~」とばかり泣き出すことが多い。
背中スイッチと同様に、赤ちゃんのふしぎだと思っていたが、娘にいわせるとそもそも座って抱っこは抱っこじゃないらしい。
「じゃあこれはなに?」
と、聞くと
「これは『ぎゅー』」
という答えが帰ってきた。
「これは『ぎゅー』で、『ぎゅー』は、抱っことは全然違う」
そしてさらに、娘は続けた。
「『ぎゅー』と抱っこは、マックのリカちゃんと本物のリカちゃんくらい違う!」
例え!
なんかにてるけど、全然違う。
マックもかわいいけど、本物を知っていると違う!
どっちか選べるなら、やっぱり本物よね。
どっちか選べるなら、やっぱり立って抱っこよね。
同じリカちゃんだしと妥協させようとする大人。
抱っこだし変わらないじゃないと、座る大人。
子ども側からの実感値こんなに違うのかーと、笑えた例えだった。
いつまで抱っこ、できるかな。
抱っこする度に思う。
抱っこしない日々が早くきてほしいような、まだ惜しいような。