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act:5-禁じられた遊び 爆発四散する『野〇〇』

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 オレが住む大多喜町は、山や渓流などと、東京の隣の県の町とは到底思えないほどに自然が豊かで、その分、小さな市街地を離れるとまったく人が歩いていないような、人口密度が疎らな典型的な過疎の町だ。そんな町だからこそ、よく見かけたのが「野〇〇」(※1)である。
それも明らかに犬や猫、野生動物の落し物とはそのボリュームが違う。人通りがないので我慢できなくなったドライバーたちが道の脇にそっと車を止め、その陰で用を足していくのだろうか。
・・・そして何故か子供は昔から〇〇〇ネタが大好きで、もちろん当のオレたちも野〇〇を見つけるたびに異様に狂喜していたのを覚えている(※2)。

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みんなが興味シンシンの野〇〇、当然遊びのネタにならないワケがない。最初の頃は誰が一番指を近づけられるか、そして次には誰が一番顔を近づけられるか…
元来、人というものは、一度でも禁断の味を知ってしまうと、どうしても常に欲するようになり、求める刺激自体も徐々にエスカレートしていく習性がある、そこに男の意地とハッタリ、さらに禁忌を皆で行うという強い共犯意識、、度々理性を超越しがちな子供特有の無茶苦茶さが背中を後押しし続け、遊びの進化は無限軌道に、そして短時間でフルブースト状態になっていくのだ、やがて野〇〇は枝の先っちょにつけられ、鬼ごっこの鬼がその枝を持って追いかけまわす始末に、、
ここまで来ると鬼が本当にストレンジャー(脅威)以外の何物でもなくなる、みんな蜘蛛の子を散らす勢いで、まさに死を垣間見たような形相で必死になってスッ飛んで逃げていく。
大体の場合、みんなそのまま自宅まで必死に逃げ帰るので、鬼は最後まで鬼のままなんだけどね。

そしていつの頃からだろう、野〇〇遊びはその最終形態ともいえる最も凶悪なスタイルに進化していった。
バクチクを埋め込み点火!
・・・そう、完膚なきまでにブツを破壊殲滅するのである!

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これは例えようもなく過激だった、どれほど恐ろしいことなのかちょっと想像してみてほしい、あの野〇〇が激しい炸裂音と共に細かく四散粉砕し周辺にまんべんなく飛び散るのだ!
物理的な汚染は無論、それ以上に周囲に与える精神的ダメージは、その昔オスロ条約でも話題になったクラスター爆弾(※3)の比どころではない、阿鼻叫喚とはまさにこのことで、逃げ遅れた者にはしばらく立ち直れないほどの精神的ダメージ、トラウマがついて回る。
それはインドの山奥で修業をしたあの無敵の『レインボーマン』に、常に無謀にも立ち向かい続ける勇猛果敢な『しねしね団』でさえも、こればかりは尻に帆を立てて逃げだすであろう甚大な破壊力!ミスターKも思わず怯み『エーメン!』と指で十字を切りそうな恐ろしさなのである。
…まぁ白状すると野〇〇にバクチクを詰め出したのは、他でもない隊長のこのオレで、オレは周りから『テロリスト』と謳われる程に、バクチクやクラッカー、カンシャク玉などと、凡そ駄菓子屋で手に入る火薬類一式を常に携行しているような子供だった。オレがこういう男なのだ、こうなることは火を見るより明らかなことであり、太陽が西から昇らず常に東から昇ることと同じく自然の流れ、当然といえば当然の結果だった。

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そんな我々の遊びは日を追うごとにエスカレートをし、最初はバクチク一本、それがやがて二本、三本、四本と、その数は次第に増えていき、やがてはバクチクのひとつの束(確か20本ぐらい)を真ん中の導火線部分で山折りにし、全てを野〇〇に埋め込み点火するという荒唐無稽な状態にまで発展した。
おぼろげながら記憶している限りでは、最大で確か二段仕込み(計40本?)までやったのを覚えている。
そしてこの遊びが『大多喜無敵探検隊』隊員達の度胸試しとなり、やがては入隊の儀式となったのは自然の成り行きといえよう。
入隊の儀式といっても、別に入隊したヤツだけがやるのではなく、人が加わったら『みんなで』都度やるのだ!
その儀式の全容は、バクチクを埋め込んだ野〇〇を囲み、円陣を組んで野〇〇に刺された爆竹に点火後、それぞれ右手を前に出し中央で重ね、リポビタンDのCMのように『ファイト!いっぱーつ!』てなノリで、一気に四方八方に駆け逃げる!
間髪入れずに背後からバクチクの連続する炸裂音!同時に野〇〇の欠片がマッハのスピードで我々を追いかけてくる!
もぉースリルなんて可愛いもんじゃない、これぞ生死をかけた男の勝負どころ、真の花道!気合と根性と身体能力の見せ所であるのだ!
そういえばコケて逃げ遅れたヤツが全身に野〇〇の欠片を大量に浴びたことがあったなぁ、夕方ソイツの親がやってきてオレはコッ酷く怒られ、二度とやるなと散々絞られたことがある。
そう、まさにこれは『禁じられた遊び』だったわけだ。
しかしそれでも冒険心を忘れない『大多喜無敵探検隊』は、怒られたことなど次の日にはすっかり忘れ、その後ソイツも交えた上で、何度もこの謎の儀式を行い続けていたのであった。
今振り返ると、なんであんなにオレたちは野〇〇に魅了されてたんだろう、まぁそこが子供時代の不思議なところだよな。

1976年(昭和51年)、小学4年生の頃の想い出である。

【注意】登場人物名及び組織・団体名称などは全てフィクションであり画像は全てイメージです…というご理解でお願いします。

【解説】
(※1)野〇〇、ようは目立たない場所にされた人糞である。ここでは令和のよい子たちのためにも本文中に限り伏字で通した。
(※2)子供はそもそも基本的にウンチが好きである。NHKのTV番組『チコちゃんに叱られる』でも近年話題になったように、子供は『うんちを自分の子供だと思っているから』だそうだ、幼少期の頃の記憶によって、その後の小学生のウンチ好きが形成されるということだ。
2歳から4歳の年頃の『うんちをすると気持ちいいことを覚える時期』を、精神分析学者ジークムント・フロイト氏は肛門期(アナーレ・ファーゼ)と呼んでおり、この時期の子供はトイレトレーニングをすることに加え、さらにトイレでウンチをすると褒めてもらえる。この2つの要素、成功体験が重なり肛門期にウンチが好きになると分析している。
さらに、フロイト氏が友人の子供を分析した際に、ウンチを自分の子供だと思い込んでいたという。上記番組内では、幼稚園児にウンチを描いてもらう実験をしたところ、4人に1人がウンチに顔を書いており、さらに多くの子供が名前や愛称を付けて呼んでいた(参照元:ニュースサイトしらべぇ)。
(※3)クラスター爆弾とは、通常の爆弾の中に何百もの小型爆弾や地雷が詰められたもので、そのあまりの非人道的な殺戮性から世界的に廃止の方向で調整されている兵器。

大多喜町MAP 昭和50年代(1970年代)

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