あしたへの翼〜おばあちゃんを介護したわたしの春〜 中島信子
子供の頃から家族ぐるみでおつきあいのある児童文学作家の中島信子氏。新作を謹呈いただき、昨日一気に読みました。
ヤングケアラーである主人公の物語です。
「ヤングケアラー」という言葉、どれくらい浸透しているのかわからないので、本の帯に書かれているものを抜粋しますね。
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いま、大きな社会問題となっている「ヤングケアラー」。
「家族にケアを要する人がいる場合に、本来大人がやるべき家事や、家族の世話、家族の世話、介護などをおこなっている18歳未満の子供」のことを指す言葉です。
親にかわって幼いきょうだいの面倒を見ていたり、病気や障がいのある家族の世話をしていたり、多くの子供がヤングケアラーとして、家族を必死に支えているのです。
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この物語の主人公は佐高理夢(さたかりむ)という11歳の女の子。両親と姉の4人家族でつましくも楽しく生活していたところに、父方のおばあちゃんが火事でアパートに住めなくなり、身を寄せるところから話が展開していきます。コロナで色々な事が起きている今現在の物語。
本当に色々考えさせられました。
おばあちゃんの介護、普通だったらお母さんがするのでしょうが、お母さんはおばあちゃんが身を寄せてからほどなくして、出て行ってしまいます。後から理由が出てきますが、それというのも痴呆が進んだおばあちゃんに毎日ドロボウ呼ばわれされ、団地中に言いふらし耐えられなくなってしまったから、というもの。ただの身勝手なお母さんだったわけではなく。お姉さんも後を追って出て行ってしまい…
最初の頃はまだ身の回りの事も出来ていたおばあちゃんでしたが、とうとう寝たきりになり、11歳の彼女がオムツをとりかえ、それだけでも本当に大変な事なのに、消臭袋に入れてオムツをゴミに出しているのに団地のおばさん達に呼び出されて臭いと注意され…
コロナ禍で役所も混乱していて介護サービスも受けられず、懸命に奮闘している彼女。お父さんが家にいるような環境だったら良かったのでしょうが、長距離トラックの運転を仕事としている関係で何日も帰宅出来ない状況。
物語の終わりも決してハッピーエンドでは無く。読者に色々と想像させ、考えさせる為の物語だと思いました。
フィクションだと思いますが、似たような環境の「ヤングケアラー」は私が知らないだけで、たくさんいるのでしょう。
「ねぇ、大人って何だろう。
世界中の大人が子供の人生をしっかり考えているのかなぁ。
いない。
考えているとは思えない。」
という理夢の言葉がつきささりました。
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2021年3月の調査では、中学2年生の17人に1人が必死に家庭を支えている。幼い弟や妹の育児、病気の父や母、そして祖父母の介護。小学生で若年性痴呆症の父を見守り続ける子もいる。
*トップ画像は以前ルーブルで撮ったサモトラケのニケ像です。
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