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僕がSAMEYAを始めた理由 サメ編

SAMEYAが本格稼働するようになって、早3年。会社を立ち上げてから紆余曲折があったけれど、とってもありがたいことに、たくさんの方が応援して下さり、取材を受けることも少しずつですが増えました。
そんな中で、必ず聞かれるのが、「なぜ気仙沼なのか」「なぜサメなのか」という2つのこと。
東日本大震災から、今年で10年。僕がSAMEYAを始めた理由を改めて振り返りたいと思います。前回の気仙沼編に続き、今回は「なぜサメなのか」編です。

SAMEYAとは?
https://note.com/sameya/n/n12803ce1a492
僕がSAMEYAを始めた理由 気仙沼編
https://note.com/sameya/n/ne53f546ef185

はじまりはサメじゃなかった!

震災ボランティアがきっかけで出会った、命懸けでとびきりおいしい魚を獲ってくる漁師。この仕事をもっと若者が憧れる仕事にしたいと、活動を始めました。
憧れの仕事とは、「社会的」「経済的」な評価が高いことが重要ではないか。そして、「社会的」評価は「経済的」評価についてくるのではないか。そう考えた僕は、まずは「経済的」評価を上げる=漁師の収入を上げることを目標に据えました。

「年収=売上ー必要経費」
まずは、直接売上に関係する、魚の単価をアップさせることを目指します。そこで注目したのが、「メカジキ」。お世話になっていた気仙沼の漁師さんに食べさせてもらった魚の中で1番魅力的な魚でした。神奈川出身の僕は、「カジキ」というと、加熱用でパサパサした、あまりおいしくないものというイメージを持っていましたが、気仙沼の「メカジキ」はイメージとは全く異なるものでした。刺身にしたら、背の身でも脂がたっぷり。焼き物にしたら、お肉のようにジューシーでおいしい!高級なイメージもあり、市場価格でも格上のマグロよりも、おいしく感じたのです。

「実はおいしいのに、認知度が低いために、需要が少なく、単価が安くなっているのでは?」この仮説のもと、メカジキのPRを始めました。

料理未経験者が495回の試作に挑む

まず行ったのは、「テストマーティング」でした。新宿にある知人の店を借りて、気仙沼から漁師さんと奥さんを呼び、メカジキを中心とした魚料理を提供するイベントです。持ち帰りのメカジキもよく売れて、手応えを得るものになりました。

次に取り組んだのが、「加工品作り」です。どうしたらメカジキを高値で売ることができるのか考える中、今もお世話になっているメンターにすすめられたのが「味噌漬け」でした。伊勢丹の地下食品売り場に並ぶ、高級味噌漬けたち。贈り物用に、日常遣いに、購入されていく方々の姿を見て、可能性を感じました。

さらに、当時通っていた大学の近くで、ボランティア活動に参加していたのですが、そこで知り合ったママパパからの声も僕の背中を押しました。「魚って生臭い」「魚焼きグリルの掃除がめんどくさい」「レパートリーが少ない」など・・・魚より肉を選ぶ人たちの声。
洗い物も簡単で、メインディッシュにもなり、生臭さもなければ、骨もないーそんな「味噌漬け」を「メカジキ」で作ることができれば、「メカジキ」の価値を高めるチャンスになる!と強く思うようになりました。

しかし僕は、全くの料理未経験者。でも、ユーグレナ(ミドリムシを扱った東大発ベンチャー)の出雲さんの「495回の試行を行えば99%成功する。多くの人が成功していないのは、この試行回数が足りないからだ」という言葉を信じて、自宅のキッチンに塩分濃度計や糖度計を買い込み、試作の日々が始まりました。

「日本の漁師は動物虐待をしている」渋谷で見かけた衝撃の広告

試作も進み、大学生起業家としてテレビ出演もさせて頂き、残すはパッケージデザインだけ!というところで、ある衝撃の広告を目にしました。

「日本の漁師は動物虐待をしている」
打ち合わせのために歩いていた渋谷の街角で、偶然目にした広告。気になって足を止めると、そこにはサメのヒレをモチーフにしたアロマキャンドルが置いてあり、日本の漁師は「フィニング」と呼ばれるサメのヒレだけを取って身を捨てる行為をしていると書いてありました。サメを生かしたままに、フカヒレとして高値がつくヒレだけを切り落としている残酷な漁をやめさせようという趣旨のものでした。この広告との出会いが、サメの問題に向き合うきっかけとなりました。

大漁とは命をかけて得る対価として大金を受け取ること

お世話になっていた気仙沼は、サメの漁獲量日本一の港。広告に衝撃を受けた僕は、思い切って漁師さんに「フィニング」について尋ねてみることに。返ってきた答えは意外なものでした。

「お前、サメがなんぼか知ってんのかや?」

今気仙沼ではサメのヒレのみの取引は禁止になっていること、サメのヒレを売るには身体がついた状態でないと売れないこと、しかしサメの肉はほとんど値段がつかない価値のないものだということを話してくれました。

さらに、「大漁」とは、リスクと隣合わせで命をかける対価として大金が得られるものであるということも教えてくれました。浮力で浮いている船は、魚を載せれば載せるだけ、船の重量が重くなり、転覆のリスクが高まります。沖合から命を懸けて船を走らせ、安全に帰港し、全ての魚に価値がついた時に初めて、大漁は漁師にとって喜びに変わるのです。そんな命懸けの大漁の中身が、ほとんど価値のつかないものだったら・・・?僕は「フィニング」そのものを責めることはできませんでした。(※前述の通り、現在気仙沼港ではフィニングは行われていません)

調べてみると、サメの体重に占めるヒレの重さは1~3%だそうです。つまり、残りの90%以上の部分は、ほとんど値段がついていないのでは?と思いました。

サメが並ぶ食卓を当たり前の日常にしたい

しかし、全く食べる文化がないという訳ではありません。気仙沼市内でも、サメ肉を提供するお店はありますし、心臓は「モウカの星」と呼ばれ珍味としてとても有名です。さらに、昔からはんぺんの材料として使われていたり、山間部でサメの食文化が根付いている地域があることもわかりました。(伊勢神宮に奉納される食材の1つとして、サメの肉が選ばれているそう!)

実際に料理をして食べてみると、本当においしいサメ肉。白身魚のようにさっぱりとしているのに、鶏肉のようにジューシーな食べ応え。さらに、高タンパク、低脂質、低カロリー。サメを知れば知るほどその魅力の虜になり、フカヒレだけじゃないサメの価値を、多くの人に知ってもらいたい!サメの食文化を作りたい!そんな思いが強くなりました。

サメの需要を高め、価値を付けることができれば、年間およそ8000トンもの水揚げがある気仙沼のサメ漁に対して、相当なインパクトを作ることができるのではないか。サメの問題に直面した僕は、すでに値段がついている「メカジキ」から「サメ」に活動の軸を移すことにしたのです。

サメ専門フードトラックSAMEYAのこれから

現在は、フードトラックSAMEYAで、気仙沼産モウカザメを使用した料理を提供しています。大人気サメバーガーをはじめ、サメのガパオにタコライス、サメの担々麺やサメのムニエル、サメのパエリアなど・・・シェフの方に助言を頂きながら、みなさんに楽しんでいただけるメニューを開発してきました。

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今年はこのフードトラックの活動に加え、1年あまりかけてチャレンジしている「サメの加工品」も完成させ発売に結びつけたいと思っています。(開発を手伝ってくれているシェフに無理難題ばかり押しつけてしまいましたが、いよいよ光が見えてきました!)

まだまだ道半ばです。
サメの問題や漁師の課題に向き合うために、
みなさんと一緒にサメの食文化を大きなムーブメントにしていきたいです!

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