マーティン・セリグマンさんと学習性無力感って?
みんな、こんにちはなんだよね!
深海に住んでるサメの「さめざめ」だよ。
ぼくはまだ3歳くらいなんだけど、人間さんの世界には「心理学」っていう、人間の心を研究する学問があるんだよ。前にいろいろ学んだ「ポジティブ心理学」って言葉を覚えてるかな?今回は、そのポジティブ心理学を広めた中心人物、マーティン・セリグマンさんっていう人が、もともとどんな研究をしていて、どうやって「負の状態」から「正の状態」へと考え方をひっくり返したかについて、ぼくなりにまとめてみるよ。
もともと、昔の心理学は、人間がもつ「問題」や「弱さ」、「病気」を研究することが多かったみたいなんだ。たとえば、うつ病や不安障害など、ネガティブな状態を治して、普通に戻すことが大事な課題だったんだよね。人間さんは、「どうやってマイナスをゼロに戻すか」ってことに一生懸命だったわけなんだ。
でも、セリグマンさんは、その流れに大きな変化をもたらした人なんだ。最初はね、「学習性無力感」っていう現象を研究してたんだよ。これは、まわりからどうしようもない嫌なことが繰り返し起こって、何をしても無駄だって学習しちゃう状態のこと。実験では犬を使ってわかったらしいんだけど、避けられない電気ショックを何度も受けた犬は、たとえ後になって逃げる方法があっても挑戦しなくなっちゃうんだって。「どうせ無理だ…」って気持ちになっちゃうんだよね。
人間さんも同じで、コントロール不能なストレスやつらい状況が続くと、「自分なんてだめだ」「何しても無駄」って思い込んじゃうことがある。これが学習性無力感で、人間のうつ状態なんかにも関係してくるらしいんだよ。
でもセリグマンさんは、ただ「無力感ってこうやって起こるんだね」で終わらなかったんだ。「どうして人は無力感に陥るか?」を考える中で、「人間は、出来事をどう解釈するか(考え方、解釈の仕方)によって、無力になったり、そうならなかったりする」っていうことに気づいたんだよ。たとえば、何かに失敗したときに「自分はずっとだめな奴だ、何をやっても成功しない」って思う人は、簡単に無力感に陥る。でも、「今回はたまたまうまくいかなかっただけで、次は違うやり方でやれば大丈夫」と考えられる人は、また挑戦しやすくなるんだよね。
こうして、セリグマンさんは「ネガティブな状態」を説明する理論を作り上げていったんだけど、あるとき思ったんだ。「人間の心を0に戻すだけでいいのかな? もともとマイナス状態から普通に戻すのって大事だけど、そもそも人間にはもっとプラス方向に成長する力があるんじゃないか?」って。つまり、「ただ問題を直す」んじゃなくて「プラスを伸ばす」ことを研究してもいいんじゃないかってことなんだ。
1998年に、セリグマンさんがアメリカ心理学会の会長になったとき、スピーチでこう言ったんだって。「これからは人間の強みとか、善い行い、創造性、勇気、意味づけみたいなポジティブな要素を、ちゃんと科学的に研究しようよ」って。それまでの心理学は問題解決に偏ってたけど、ここで新しい動きが始まったんだよ。それがポジティブ心理学の誕生だったんだ。
ポジティブ心理学では、人間がどんな強みを持っているか(VIA強みとか言われる24の普遍的な強みを分類したり)、幸福やウェルビーイングをどう測って増やせるか(PERMAモデル)なんかを研究するようになったんだよ。セリグマンさんは、かつて「人が無力感に陥るメカニズム」を研究していたけど、今度はその逆を考えたんだ。「人はどうやって希望や前向きな力を学習できるだろう?」ってね。
学習性無力感を逆転させるなら、逆境にあっても「なんとかなるかもしれない」「努力すれば変わるかも」って思える態度を育てればいいんじゃないかってわけなんだ。そうすると、悲観的な人の心が楽観的になりやすくなるし、問題にぶつかったときも立ち直る力(レジリエンス)が高まる。セリグマンさんはこうしたプラス方向の成長が、ちゃんと科学的な根拠を持って検証されるべきだと考えたんだよね。
この考え方は教育現場、職場環境、政策づくり、地域活動……いろんなところに広がっていったんだ。子どもの頃からレジリエンス教育をしたり、組織で働く人たちのモチベーションを高めたり、幸福な社会をつくるためにデータを用いたりもしているんだよ。そんなふうに、ポジティブ心理学は人間の可能性を探る新しい方向性を示したんだ。
セリグマンさんの最大の功績は、学習性無力感という「負」を研究していただけじゃなくて、そこから一歩踏み出して「人間の強みや幸福」を科学的に解明しようとしたことなんだよね。つまり、「マイナスからゼロへ」戻すだけだった心理学を「ゼロからプラスへ」伸ばす方向へ導いたんだ。これによって、心理学はただ問題を直す医療みたいな学問じゃなく、よりよい生き方や人間の潜在力を引き出す学問になっていったんだ。
もともと無力感の研究は、人間が脆い存在であることを示したかもしれないけれど、その脆さの裏には「成長できる力」も隠れていたわけなんだね。セリグマンさんはその力を見つけて、引き出していく方向に舵を切ったんだ。
これって、深海にいるぼくにも参考になるんだよ。深い海で暮らしていると、暗くて孤独に感じることもあるかもしれないけど、そのなかでも光るプランクトンを探しだしたり、自分なりの強みを伸ばしたりできるはずなんだよね。人間さんが自分たちの心についてそんな新しい視点を持てたなら、ぼくだって、自分の暮らし方や考え方に新しいヒントを得られる気がするよ。
結局、セリグマンさんは、心理学を「欠点補修」から「プラスへ成長」へと導いた人なんだ。学習性無力感はその出発点で、無力感を理解することで、人間がどれだけ希望や強みを学べるかも同時に示唆してくれたんだよね。こうして、人間の心の研究は「欠点を直す」にとどまらず、「強みを活かす」という、新しい航路に出たんだ。
ぼく、さめざめは、これからもこういうお話を通して、人間さんたちがどう自分たちの可能性を見つけて、成長していくのかを学んでいきたいと思うんだよね。セリグマンさんの功績は、心理学を人間らしい豊かな学問にしていく大事な転換点だったんだって、ぼくなりによくわかったんだ。
これからも、深海から時々海岸に出て、人間さんの世界の知恵や考えを少しずつ噛みしめていくから、また面白い話を聞かせてね!