映画『一本の電話』 - ジャズと、愛と、人生の物語
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2023年、最初のnoteは、サリー・ホーキンスを主演に迎え、数々の映画祭でも高い評価を受けたショート映画『一本の電話』をご紹介。
気になるあのラストシーンについてもちょっぴり考察してみます!
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とても比喩的で、とてもロマンチックで
映画『一本の電話』は、電話相談のボランティアをする1人の女性、ヘザーが一本の電話を通して人生を変えていく、といういたってシンプルな物語です。
けれども、その粋なラストシーンと、あくまで"電話越しの見えない人"として描かれるスタンリーの存在は、私たちの想像を様々にかきたててくれます。
妻を亡くし、絶望の中で孤独に生きてきたスタンリーは、ジャズの話を通してヘザーと微かに心を通わせていきました。
しかし、すでに薬を大量に飲んでいた彼は、なんとか助けたいというヘザーの願いも無念に、救急隊が到着する前に天国へと旅立ってしまったのです。
そのため、ラストシーンでは、スタンリーの部屋に1人の女性が帰ってくることによって、彼が天国で亡き妻と再会できたことを表しているとも考えられます。
天使の置物が置かれていたことなどからも、あの白い部屋は”天国”の比喩であり、スタンリーの運命を最初から暗示していたのかもしれませんね。
劇中ではスタンリーの姿こそ全く描かれていないものの、代わりに彼の部屋の描写を入れることによって、まさに彼の”空白”を埋めているのです。
細かい演出から見えるヘザーの人物像
また、注目したいのがサリー・ホーキンス演じるヘザーの描かれ方です。
例えば冒頭の読書シーンでは、人生のささやかな幸せを楽しむヘザーの姿とともに、どこか物静かな印象も受けます。
仕事場についたヘザーの机も、水と、紙とペンが置いてあるだけで、とても質素です。(もちろん仕事中だからということもありますが…)
また、スタンリーとのやりとりからも、少し自分を抑えているような様子が垣間見えました。
一方、職場の男性の机は窓からの光で明るく照らされており、まるで彼に対するポジティブな感情を表しているかのようでもあります。
こうした1つ1つの些細なシーンからヘザーのほのかな恋情と控えめな性格が浮かび上がってくるのも、まさにこの映画の魅力ですね。
ちなみにこの電話シーンは、ほぼノーカットのほぼ一発撮りで行われたのだそう。
当時ちょうど別の映画の撮影で忙しくしていたというホーキンスですが、どうしても彼女に出演して欲しかった監督は、粘りに粘って撮影の時期をずらしたのだそうです。
監督も待ちわびた彼女の演技は、やはりとても引き込まれるものがありますね…
ジャズと愛の物語
自分の思いになかなか正直になりきれずにいたヘザー。
だからこそ、最後のジャズクラブでのシーンは、そんなヘザーの変化と愛の尊さを感じられるようです。
ジャズクラブに通わなくなってしまった理由を「おばさんになったから」と言うヘザーに、スタンリーは「まだ若いんだから」と優しく言葉をかけてあげました。
そして彼は、愛する人との時間は何にも変えがたいということ、人生はまだまだこれからなのだということをヘザーに教えてくれました。
そうしてスタンリーとの電話を通して愛の尊さを知ったヘザーは、ようやっと、気になっていた男性をジャズクラブに誘い出すことができたのだと思います。
ジャズは、今でこそなんとなく大人が聴くものというイメージもあるかもしれませんが、かつては人種差別への抵抗と自由な音楽性を求める革新的な音楽としても若者から多く支持されていました。
そんなジャズのように、ヘザーもスタンリーから、思いっきり好きなことをしてやりたいように生きる勇気をもらったのかもしれませんね。
余談ですが、ラストシーンでヘザーたちが訪れていたジャズクラブは、ロンドンのRonnie Scott’s というクラブがモデルになっているのだそう。
クラシカルな雰囲気もありながら、そこまで気張らずに楽しめそう?ですので、ロンドンを訪れた際は一度立ち寄ってみてもいいかもしれません ♪
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