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89歳プログラマー 挑戦の先に見つけたつながりとは?

「うーん、スマホはまだ早いでしょう」そんな家族会議をしたのはたったの2年前。

今やスマホをさくさく使いこなす私の祖父母は、LINE のやり取りなんてもう朝飯前です。
とりわけ、毎朝祖母から送られてくる「おはよう」とイチゴの絵文字つきメッセージは、デジタルの文字列にも関わらず、じんわりとしたあたたかみさえ感じます。

近年、カフェや電車の中を見渡せば、どこにでもスマホをさくさく触る高齢者を見かけるようになりました。

今回の映画『ファミリー・コード』は、そんな時代の先駆者として、高齢者のテクノロジー支援に伴走してきた日本人女性、若宮正子さんをモデルとした作品。

81歳からプログラミングを学び始め、アプリ開発まで成し遂げた彼女の原動力とは一体何なのでしょうか。


活力あふれる彼女の人生と共に、映画『ファミリー・コード』を読み解いていきます!



81歳でアプリ開発 そのわけは

パソコンはおろか、スマホさえろくに持っていなかったおばあちゃんが、孫のパソコンをこっそり使いながら、プログラミングでコードを書くまでに急成長する...。

そんな漫画のような展開を繰り広げる映画『ファミリー・コード』は、フィクションではなく、実在する世界最高齢プログラマー・若宮正子さん(89)にインスパイアされ、アメリカの制作会社が製作した作品です。

若宮正子さん(89)(by The New York Times Style Magazine: Japan)

実は若宮さん、その行動力と発想が評価され、AppleのCEO ティム・クック氏からもお声がかかるほど、世界中で話題となりました。

もともと60歳でパソコンを購入し、大手銀行を退職後、余暇の一環として独学でインターネットを楽しむようになった彼女。

その後、当時はまだなかったシニア向けアプリが欲しいと作成者を探すものの、とある人物から「自分でやってみたら?」と勧められ、アプリ開発に挑戦することとなったそうです。

経験者から遠隔で教わりながら、なんとかアプリのリリースまで漕ぎつけ、
高齢者でも操作しやすいタップのみでプレイができる、シンプルで愛らしいゲーム「hinadan」が完成しました。

アプリ開発にあたり、エラーの表示やAppleへの申請など、多くの壁を一つずつ地道に乗り越えてきたという若宮さん。
その姿は、劇中で黙々と授業に通い続け、勉強し続ける映画の主人公と重なるようです。

プログラミングの勉強 ノートとペンだけで

映画の中で印象的なのは、プログラミング教室の中で、唯一主人公が紙とペンでプログラミングを学んでいる様子。

この、ちょっとベタというかわかりやすい演出に、私も思わずクスッときてしまいました。

でも、きっとそこが制作者の意図するところ。

「何かを始めるのに年齢なんて関係ない!」と言われるけれど、実際は何かと理由をつけてしまうのが私たち人間です。

それは年齢に限らず、環境であったり、日々の忙しさであったり、周りからの心無い言葉であったり……。

それでも、若宮さんはインタビューや講演の中で、「まずやってみること」という言葉を何度も強調されていました。

”時間がないから。身に付かなかったら無駄だから。難しそうだから。というのはあくまでも言い訳。失敗こそが資産です。毎日少しずつでも、もし結果にならなかったとしても、プログラミングがどういうものかを知るだけで大きなプラスになったと思う” 

そう語る若宮さんの、環境のせいにしない前向きな姿勢が、この映画の中の紙とペンにも現れているのかもしれません。


祖父の割れたスマホ

劇中でもう一つ気になったのは、亡き祖父の携帯がひび割れていたことです。

もともと主人公がプログラミングを始めたのは、「こっそり」プログラミングを学んでいた祖父(夫)の気持ちを引き継ぐためでした。

しかし、家族の話や様子から、当時は誰もそんな祖父を応援してあげる時間がなかったようにも感じます。

主人公も初め、孫のプログラミングの課題を手伝おうとしても「どうせ理解できない話だから」と門前払いされ、誕生日には、時限爆弾のようなSOSボタンがついたスマホをプレゼントされていました。

意図的ではなくてもつい、高齢者=デジタルという文字の並びに慣れず、彼らをテクノロジーの世界から追い出してしまうことってありますよね。

しかし、実際に若宮さんが高齢者のスマホ操作やPC操作をサポートする中でも、誰かが少し手を貸してあげればできることが多いそうですし、現に高齢者は、デジタル分野における重要な消費者層になりつつあります。

だからこそ、周りや家族のあとほんの少しのサポートがあれば、祖父の想いももっと早く実現できていたのかもしれません…。


エクセルで作ったアート とまらない想像力

最後は高齢者向けのアプリを完成させ、物語の幕を閉じた映画の主人公。

しかし、若宮さんの物語はその後も完結することはありません。
表計算ソフトのエクセルを使って図案を描く、“エクセルアート”を考案してしまうなど、そのクリエイティブな活動は、多岐に渡っているのです。

若宮さんがデザインしたエクセルアート(by The New York Times Style Magazine: Japan)


さらに、現在はデジタル改革の一環として、内閣官房や総務省関連の仕事に携わったり、高齢者の精神的居場所を支援するオンラインコミュニティ「メロウ倶楽部」の運営などにも従事したりしているそうです。

「メロウ倶楽部」は通常のSNSと違い、生活面でのさまざまな情報や悩み事を共有したり、Zoomで勉強会を開いたりと、本音で語り、交流できる場。

高齢者にとっても、居場所はオフラインにとどまらず、オンラインとしての可能性も広がっているのですね。

テクノロジーが目まぐるしく発展する現代において、「取り残されないために」というのはもちろんですが、それ以上に、「つながりたい」というみんなの思いが根底にはあるのかもしれません。

映画の主人公、そして若宮さんが続けてきた挑戦が、家族や友達、世界中の高齢者をつなぐ、新たなあたたかい繋がりを生んでいるような気がします。


私も、このところLINEを放置してしまいがちだったので、祖母のように、ひとつずつゆっくり返していこうかなと思います。

映画『ファミリー・コード』はSAMANSAで公開中です!


せひご覧ください!!!

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『ファミリー・コード』  14分52秒
監督:Kayla Sun
あらすじ:誰もがスマホとパソコンを持つ時代、取り残される高齢者が多い中、ある1人のおばあちゃんがプログラミングを学ぶために大学に通い始める。だがこの彼女の行動にはある思いがあったのだ...



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