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混ぜる幸せ 〈菓子四季録 vol.15〉

菓子四季録では、イラストレーター 澤田清佳さんと一緒にお菓子のレシピをご紹介しています。ひとつのお菓子の魅力を、ふたりそれぞれの視点から綴る菓子四季録のマガジンページはこちら。今回紹介するお菓子は、南国気分に浸れる「すいかのグラニテとココナッツミルクのアイス」


夏の良いところ

夏は好きではありません。というかむしろ苦手です。理由は簡単「生きづらい」からです。暑さにも、湿気にも、日光(紫外線アレルギー)にも弱い私にとって夏は鬼門。外に出る時は長袖、帽子または日傘、手袋の完全防備が必須。もちろん夏にその格好は暑いです。なので日々を過ごすのがシンプルにツライ。食べ物はすぐに傷むし、花は飾ったそばから萎れていくし、なんか虫は多いし。私が好きなものはみんな暑さに弱く、嫌いなものは勢いを増していく感じです。もう、できることならば、ずっーと涼しい室内で過ごしたい。特にここ数年の猛暑は厳しく、毎年体調を崩しがち。毎年夏に修行を受けている気分です(これを書いている現在もイマイチ調子が悪い)。

夏に良いことがあるとしたら、果物と野菜がおいしいこと。夏の果物と野菜は瑞々しくてイキイキしています。身体が野菜や果物を求めている感じ。
そんな今月の季節の素材は「すいか」です。すいかが果物なのか野菜なのかはさておき、夏の風物詩であることは間違いないでしょう。黒と緑のしましま模様も、真っ赤な果実も全部が夏の雰囲気。今はすいかが大好きですが、こどもの頃は「すいかってメロンに比べると水っぽい」みたいに思って、そんなに好んでいませんでした(笑)。

せっかくなので撮影用に丸ごと購入
このチープな紐がなんともかわいい
この瑞々しさたるや

でも今はそのジューシーさが身体に染み込むよう。いくらでも食べられる気がします。食べた果物が身体にすぅっっと入っていく度ナンバーワンは間違いなくすいかだと思います。でもこれは「そう感じる」だけでなくちゃんと根拠があるお話なんです。すいかは90%以上が水分できています。さらに汗と共に体の外へ出て行ってしまうカリウムをはじめとするミネラルも多く含まれています。塩を少量ふって食べるとナトリウムも摂れて、スポーツドリンクと近い成分になるのだとか。成分的にも夏の水分補給にぴったりなんですよ。

果汁が滴るすいか
キラキラと輝く透明感のあるクリアな赤
皮が張っていて、包丁を入れたら
パーンと勝手に割れました

以前仕事ですいかのグラニテを作って、そのおいしさに感動しました。すいかのおいしさを丸ごと味わうダイナミック感があって、夏のデザートにぴったり。今回はそのグラニテをさらにアップデート。

すいかのグラニテにはラム酒を加えて、風味をアップ。ココナッツミルクのアイスを作り、一緒に盛り付け、混ぜながらいただきます。単品でもおいしいのですが、混ぜることでさらに1+1=2じゃないおいしさになるのです。トロピカルなリゾート感を感じられる夏のデザートは視覚的にも涼やか〜。今回のデザートは今まで1番簡単!ぜひぜひ作ってみてください。

すいかを丸ごと食べているような味わい
リゾート感もあります
2種類あるっていうのがまた贅沢
混ぜて食べるのが楽しい

すいかのグラニテとココナッツミルクのアイス(レシピ)

材料 作りやすい分量
<すいかのグラニテ>
すいか(正味) 500g
◯ グラニュー糖 60g
◯ ラム酒 大さじ1
◯ レモン汁 大さじ1
◯ 塩 小さじ1/4

<ココナッツミルクのアイス>
ココナッツミルク 400ml
牛乳 100ml
グラニュー糖 70g
ココナッツリキュール 大さじ2

<トッピング>
ココナッツロングまたはココナッツファイン 50g
カルダモンパウダー 小さじ1/2

すいかのグラニテ
ココナッツミルクのアイス
トッピング

作り方
<すいかのグラニテを作る>
1.すいかは適当な大きさに切り、種を取り除く。

程よい大きさに切ります
竹串を使って種を取っていきます
このひと手間がおいしさにつながります
あー、このまま食べたい

2.1と○をミキサーにかける。
*ミキサーがない場合はすいかを手で握りつぶし◯を加えましょう。

ミキサーに入れます
ミキサーがない人は手で潰せばOKです
赤が美しい
砂糖を入れて
ラム酒を入れます
レモン汁も忘れずに!
すいかジュースを作ります

3.保存袋に入れ、冷凍庫に入れる。少し固まってきたら揉みほぐし、再び冷凍庫に入れる。これを2〜3回繰り返し、しっかり冷やし固める。

マチ付きの保存袋が便利です
しっかり袋を閉じます
凍ったらほぐします
体重をかけてほぐします
全体がもみほぐされたら再度冷凍庫へ

<ココナッツミルクのアイスを作る>
4.牛乳とグラニュー糖を鍋に入れ、混ぜながら温める。

牛乳を入れます
砂糖を入れて温めます
混ぜながら温めます

5.砂糖が溶けたらココナッツミルクを加え、人肌程度に温める。火を止めてココナッツリキュールを加える。

ココナッツミルクを投入
火を止めてココナッツリキュールを

6.5の粗熱が取れたら保存袋に入れ、冷凍庫に入れる。少し固まってきたら揉みほぐし、再び冷凍庫に入れる。これを2〜3回繰り返し、しっかり冷やし固める。

保存袋に入れます
こちらもしっかり閉じます
凍ったら揉みほぐします
体重をかけると作業しやすい

<トッピングと仕上げ>
7.グラニテとアイスを冷やし固めている間に、ココナッツをローストする。オーブンペーパーを敷いた天板にココナッツを広げ、150度に予熱したオーブンで10分ほど焼く。冷めたら保存袋に移し、カルダモンパウダーを振り入れる。

カルダモンの量はお好みで加減してください
軽くふって混ぜ合わせます

8.グラスにグラニテとソルベを盛り合わせ、ローストしたココナッツを散らす。

作り方のさらなるポイント

・レモンと塩
すいかのグラニテにはレモン汁と塩を少々加えます。「すいかにレモン?」と思うかもしれませんが、このレモンは酸味というより爽やかさを追加する為に加えます。食べた時に酸味は前に出てきません。奥にいて、それが後味をすっきり爽やかにします。塩を少量加えると甘味が前に出て、味の輪郭がはっきりします。

レモンと塩は少量ですがとっても大事

・リキュールはぜひに!
今回はラム酒とココナッツリキュールという2種類のリキュールを加えています。ココナッツリキュールがない方はラム酒を代わりに使ってもいいですし、気になる方は入れなくても作れます。が、入れると一気に「リゾート感と高級感」が出ます。例えるならばちょっといいホテルのプールサイドとかビーチサイドとかラウンジとかで出てくるような感じ。「ああ、夏ねえ」と青い空をみて、悠々と味わう高級なデザートみたいな雰囲気です。

今回は「リゾート感と高級感」満載です

ココナッツリキュールはマリブを使っています。

夏にぴったりなリキュール

マリブは、ホワイトラムがベースのココナッツ・リキュール。厚みのあるココナッツの風味と味わい、シャープでメリハリのある香味バランスが特徴です。アメリカやヨーロッパのみならず、日本でも若者を中心に絶大な人気があります。

サントリーホームページより

加えるだけで南国リゾートの風が吹きます。余ったら、簡単に夏のカクテルも作れます。

・ココナッツミルクは一度温めて
ココナッツミルクは保存中に油脂分が固まってしまうことがあります。なので、開封前に一度思い切り振ってください。そして鍋で温めてから使います。この工程を省くと、固まった脂肪分がそのままになってしまい、舌触りが残念なことになることも。均一化するのが目的なので、人肌程度まで温めれば十分です。


思い切り振ってから開けます
人肌程度まで温めます

・一度しっかりほぐす
今回は本当に簡単なので失敗しようがないのですが、コツがあるとしたら、固まったものをきちんと揉みほぐして再冷凍させること。こうすると空気を含んでふわっとした食感に。口に入れるとすうっと消えていきます

しっかりほぐします
体重をかけていくのが私スタイル
ふわっとエアリーな口溶けに

冷凍庫に入れて6〜7割固まるまで3〜4時間かかります。ので「完全に固めて、ちょっと室温において溶かしてから崩す」でも大丈夫。もちろん保存袋に入れるのではなく「バットに入れて固めて、フォークで崩して再度固める」方式でも。うちにはバットを2つ入れる空間なんてない、ない。夏の冷凍庫スペースは有限です。保存袋だと流動的で、隙間にも入るから便利です。

保存袋は隙間にも入る!

「アイスに添えてあるウエハースは、冷たくなった口の中を緩和させてアイスをさらにおいしくさせる」みたいに言いますが、今回のローストココナッツはいろんな役割があります。もちろん、冷たくなった口の中をリセットする役割もあり。食感の香ばしさをプラス、ココナッツ風味をさらに増す、そしてカルダモンをまぶすことで味変も楽しむことができるんです。見た目もかわいい。いい仕事しております。

ココナッツ好きなので大量に準備
赤いグラニテにココナッツが映えます

食べ方は自由演技で!

食べ方は自由なんですが、個人的には「すいかのグラニテ(単品)」を食べ、「ココナッツミルクアイス(単品)」を食べ、そこから2つをいろんな割合で混ぜて食べるというのがお気に入りです。すいかが多いかココナッツミルクが多いかで香りも味も色も変わってくるのです。
どのタイミングで、どうやって混ぜるかはあなたの自由。

すいかのグラニテを単品で
こちらはココナッツミルク多めのミックス

最初から混ざったもの、例えば「すいかとココナッツミルクのグラニテ」を作ってもいいのではと思うかもしれません。でも「最初は分かれていて、それを自分で混ぜる」ってことにこのデザートの良さがあるなあと混ぜながら改めて思いました。自分の手で、意思で混ぜる幸せ。最初からピンクではなく、赤と白が混じってのピンクっていうのがいいのです。

食べるのが楽しい
ちょっと混ぜて食べてみたり
溶けてくるとまた混ざり方も変わる

ローストココナッツのカルダモンがまたいい風味を出すのです。最近カルダモンがマイブームでいろんなものにかけて試してみています。暑い国ではスパイスが多用されるのがわかる気がするのです。スパイスの清涼感って夏の食べ物にとっても合います。

カルダモンが加わることで
エスニックな風が吹きます(口内で)

三つ子の魂百まで

すいかと向き合いながら「なんで私、すいかよりメロンだったんだろう」と再度考えてみました。味もさることながら、たぶん見た目が大きいのです。見た目というか色?こどもの頃の私の好きなものは「キキ&ララ」「マロンクリーム」「ファミリアの水色のリボンをしたクマ(ファミちゃんという名前なのを今回はじめて知りました)」「スヌーピー」(若干スヌーピーだけ毛色違うけど、あれは哲学的に好きなんだと思う。見た目よりも)。

サンリオのホームページよりお借りしています
こちらもサンリオのホームページよりお借りしました
こちらはファミリアのホームページより


まあ、わかりやすくパステルカラーが好きなんです。そんな私にとってすいかの色は強すぎたんだろうなあ。黒と緑の色も、太めのしましまも。割った果実の赤さも。こどものころにメロンのあの淡いグリーンが心にピタッときてたのかと思うと、今と何も変わらないなとも思うわけです。
今はすいかの外見よりも中身をかなり好いておりますが。おやつにはもちろん、食欲がないときはよくご飯のかわりに食べています。夏のお助けアイテムです。

外見、色もパターンもかなり強め
果実の赤に種の黒も強め
赤い服は持っていないので
すいかの種をイメージしたドットのリンクコーデ

今月のテーブルは涼やかに。清佳ちゃんが選んでくれたお花と葉っぱがぴったりでした。残暑はしばらく続くと思いますのでぜひ、ひんやりデザート作ってみてください。

【Photos : Sayaka Sawada】

同じレシピをイラストレーターの澤田清佳さんが絵で紹介しています。絵のかわいさもさることながら、手順の流れがとってもわかりやすいです。個人的にはイラストで全体を把握し、写真で詳細を確認していただくのがおすすめです。

「清佳ちゃんが果物の中ですいかが1番好き」という事実は知っていたけれど、そのことについて何も思っていませんでした。頭の中でなんとなくのレシピはできていたし、絶対においしいと思っていたからです。でも清佳ちゃんの中では好き故のかなりの苦悩があったようです。「現地に向かうバスに乗りながら、頭には、すいかが好きすぎるゆえの不安がちらいていた。」ええ?そんなに不安にさせてたの??とこれを読んで改めて知りました。お眼鏡にかなうレシピでよかった〜(笑)

すいかへの「好き」は「恋」じゃなくて「愛」
清佳ちゃんのすいかへの溢れる思いをぜひ読んでみてくださいね。

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