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久しぶりにウォン・カーウァイ監督の『恋する惑星』を観て恋をした
今日、無性にウォン・カーウァイ監督の『恋する惑星』を観たくなった。
初めて観たのが10年くらい前で、今日観たのが5回目くらい。
映画は、同じ映画であっても観るタイミングやそれを観る時の心情によって全然違う印象を残してくれるけど、今日観た『恋する惑星』は今までで一番キュンときた。
そもそも映画の雰囲気がいい。
アジア特有のごちゃごちゃした感じと混沌とした雰囲気が映画のはじめから終わりまで画面いっぱいに映し出される。
怪しげな音楽が相まって、アジアを旅行したときに感じるちょっとした不安感とか、誰かを恋しくなる気持ちとか、ドラマがあちこちで起きているような騒々しい感じが伝わってくる。
『恋する惑星』は2部構成になっているけど、なんだかんだどちらも好き。
第一部作目は、金城武が演じる失恋した警察官が、麻薬ディーラーの謎の女と出会う話。
ストーリーはあってないようなもので、どちらかと言えばミュージックビデオを観ているような感じを受ける。
一方は失恋した警察官、一方はビジネスに頓挫したドラッグディーラー。
なんの接点もなかった二人がホテルで一夜を過ごし、またそれぞれの生活へと戻っていく。
香港という混沌とした孤独な街で孤独な気持ちを抱えた二人がたまたま同じバーに寄り、なりゆきで1晩を共にする。
ただそれだけの、数時間だけの関係性。
人生を少し休憩して、またそれぞれの人生へと帰っていく。
その休憩場所にたまたま居合わせたという感じだ。
でもこういう数時間だけの関係性も、ちょっと切ない余韻を残して、もともと孤独な香港という都会の雰囲気とマッチする。
翌日にはお互いがまたお互いの人生を歩まないといけないけど、今だけ何も考えずにただただ体を休めていたい。
そういう関係のない者同士のちょっとした関わりは、意外と癒しになったりするんだよななんて思いながら観ていた。
そして第2作目。
これは、トニー・レオン演じる警察官663号に飲食店の店員フェイが恋してしまうお話。
フェイは、恋人とのすれ違いの生活に傷心の警察官663号の部屋に忍び入っては、家の中のものを少しずつ変えていく。
家の中にあるサンダルを変えたり、コップを変えたり、水槽に魚を泳がしたりと。
冷静に考えたらそもそも犯罪行為なんだけど、無邪気なフェイの性格と爽やかな『夢中人』の音楽が可愛らしい恋愛ストーリーに変えてしまう。
始終切ない感じが漂ってるのに、『夢中人』が流れた途端、急に希望の光が差し込んでくるような感じになる。
それがまたとってもいい。
それまで漂っていた不安げな雰囲気が一瞬にしてキュートなストーリーへと変わっていく。
幸せな空気が映画を漂いはじめて、急に未来が明るくみえるようになる気がしてくる。
でもこの『夢中人』をより一層盛り上げてくれるのが『California dreamin'』の存在だ。
『California dreamin'』のおかげで香港という大都会の寂しさや無秩序な感じが際立つし、それが切ない雰囲気を醸し出してくれる。
だからこそ『夢中人』が流れた瞬間そこに救いを見いだせたようですごくほっとさせてくれるのだ。
久しぶりに観たけど、『恋する惑星』はやっぱり好きだと改めて思った。
今日は雨が降ったからきっと観たくなったのだと思うけど、次観たくなるのはきっと夏が来ようとするときのような気がする。