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◎小説『わたしの知る花』


最後の最後でぐずぐずに泣かされてしまった、町田そのこさんの『わたしの知る花』。


ずっとどこか胸が軋んでいて、モヤがかかったような感覚なのに、最後にそのモヤが取っ払われるような、そんな本。


わたしのメモとともに、備忘録。


自分がいる世界の解像度が、めちゃくちゃ低くなってる気がしない?

一章 ひまわりを花束にして

貴博の言葉がグサッときた。
コロナでひとが遠くなり、そのことで自分が嫌っていた人の顔すら曖昧にしか覚えていないことに対しての言葉だったけれど、

正直、コロナ以前から自分の世界の解像度はあまり良くなかったように思う。


小学生の頃はクラスの人の名前や顔を鮮明に覚えていたのに、高校生にもなるとクラスの人をきちんと覚えきれずにいた。


わたしが見ている世界の解像度をもっと鮮明にしなければ、と心に誓った一文。


ひとってのはどれだけ相手を求め合っていても、考え合っていても、タイミングひとつでズレてしまう生き物なんだ。

一章 ひまわりを花束にして


ケンカした安珠に向けて、平が伝えた言葉。
一度読んでからこの言葉を目にすると、この言葉の持つ意味が、深みが増すよね。

人にはタイミングがあって、きっとそれは日本的に言うのであればご縁。


だからこそ人は言葉を尽くして伝えて、それでダメなら分かれる時なのだと、冷静になれない時ほど思い出さなければいけない。


思い込みに振り回されることなく、ただ、芯を見て、受け止めるようにしろ

一章 ひまわりを花束にして

これも安珠へ向けた言葉。
人はすぐに自分の思い込みを正として、相手を見ることをやめてしまう節がある。

相手の芯を見る、自分の心の内も曝け出す。


そんな素直な心持ちと相手を知る努力をやめない人間を目指していこう。


豊かな時間を過ごしたらなら、幸福を共有したのなら、それだけで奇跡なの。その時間に縋れば、もっともっと望めば、その瞬間の輝きすらもくすんでしまう。だから、その時間を芯として生きるの。そうするとね、強くなれる。

二章 クロッカスの女

香恵の言葉。最初に読んだ時はとても良い言葉だと思ったけれど、全てを知った今、とても複雑なきもちになる。


弱かった女が、生きていくために学んだ強さ。

誰かにとっては嫌な人でも、誰かにとってはとても大切な人。

香恵はそんな表裏一体な姿が一番表れた人物だな、とも思った。
(本来は平に対して抱きがちなものなのかもしれないけれど)

お前にしかない良さってのがあって、お前にしかない力もあって、そこに良さを見出す相手はきっといる。大事なのはさ、武器だよ。自分にとっての武器。

三章 不器用なクレマチス


ひとつ前の記事でも取り上げた、この言葉。多分今のわたしにとても必要な言葉なのかもしれない。
わたしにしかない力。

多様性、って薄っぺらく使われがちで本質を捉えきれていない気がするけれど、この作品を通して少し輪郭が見えた。


自分はありのままでいい、だからこそ自分にしかない力を伸ばしていくことが最善。


お前が、お前に素直に生きることだけが、正解だよ

三章 不器用なクレマチス

わたしは、わたしを大切にするために自分に素直に生きたい。


ということで、厳選して5つ響いた言葉を紹介した。この他にもたくさん素敵な言葉があるので是非。


最後に。この帯に書かれた平の言葉が、切なくてもどかしくて温かさを含んでいて。
最後まで読んで、この感情を味わって欲しい。


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桜
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