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ワーパパと成人発達理論

こんにちは。
3人娘を育てている、ベンチャー企業のCTOです。


なぜ部下とうまくいかないのか
「自他変革」の発達心理学

「成人発達理論」とは、ハーバード大学の教育大学院の教授ロバート・キーガン氏によるもので、「成人になっても成長は続ける」という理論です。

・・・それは当たり前のことでは?と思うかもしれませんが、これはスキルアップに限った話ではなく、精神的な成長をも含めた理論になっています。

近年、欧米の企業では、この成人発達理論の知見を取り入れた人材育成がされているそうです。

今回、以下の書籍を読みました。
タイトルには「成人発達理論」の記載がありませんが、内容は成人発達理論に従った内容となっています。

この書籍は、マネージャーとなった主人公が人材開発コンサルタントと出会い、成人発達理論を学んでそれを自社のメンバーの理解に活用していくといった、ストーリー仕立ての内容となっています。

成人発達理論

成人発達理論の概要は、「知性や意識は一生をかけて成長・発達する」という考えです。

知性や意識の成長・発達といったものは、例えば視野・視座・視点の拡大とも言えます。
それらは、様々なスキルを発動させるための前提条件となるため、知性や意識が成長することによってより高いパフォーマンスを発揮させることができるようになります。

成人発達理論は、自分自身だけでなく他者に対しても適用可能なため、組織開発・チームマネジメントにおいても効果を発揮します。

成人発達理論では、五つの意識段階を定義しています。

  • 発達段階1 ) 「具体的思考段階」
    ※これは言葉を覚えたての子どもの段階を指しているそうです。
    ※そのため今回は説明をskipします。

  • 発達段階2 ) 「道具主義的段階」「利己的段階」

  • 発達段階3 ) 「他者依存段階」「慣習的段階」

  • 発達段階4 ) 「自己主導段階」

  • 発達段階5 ) 「自己変容・相互発達段階」

なお、ここで注意が必要なのは、単純にレベルが高いから良い、レベルが低いから悪い、と単純に考えるのは危険と言われています。
あくまでも個人の評価とは直接結び付けず、それぞれの段階における特徴・特性を把握するといった使い方のほうが良いでしょう。

この発達段階に関するキーポイントは、「主体から客体へ移行する連続的なプロセス」ということです。
主観から客観へ、ということもできると思いますが、段階が進むにつれて自己から他者にフォーカスが移っていくことが特徴です。

発達段階2 ) 「道具主義的段階」「利己的段階」

この段階では、自己中心的な認識の枠組みを持っているのが特徴です。
自らの欲求を満たすために他者を道具のようにみなす傾向があるため、道具主義的・利己的段階とも呼ばれます。

「あいつは使える」「こいつは使えない」などの表現は、意図にもよるのでしょうが、発達段階2の特徴の現れでしょう。

また、発達段階2では、二元論・二分法的な考え方をしがちです。
善と悪、敵と味方、あちらとこちら。
実際にグラデーションがあるものに対しても、はっきりと区別をつけようとします。

この段階から発達段階3へのステップとしては、自分中心の視点から一歩離れた視点を持つことです。
他の人がどのような視点を持っているか、といった点にその人自身が注意を払うことが大切です。

発達段階2は、成人人口のおよそ1割ほどと考えられています。

発達段階3) 「他者依存段階」「慣習的段階」

発達段階3では、他者の立場でものを考えることができます。
その上で、組織や集団に従属し、他者の意見・意思決定に依存するという特徴を持っているのが特徴です。
意思決定を自らするのではなく、組織のルールベースで行動したり、上位権限の人の意見に従う傾向があります。

使う言葉の特徴としては「会社のルールだから」「上司が言ったから」というものがあります。
いわゆる「指示待ち人間」というものも、この段階の人の特徴と言えます。

この段階では、自分の意見がまったくないわけではありません。
しかしながら、自分自身の意見に気がついていなかったり、意見の言語化がまだであったり、表現方法がわからなかったり、という状態です。

発達段階4へのステップとしては、自分の考えを言語化する習慣を持つことです。
対話によって言語化が促されるため、内省を行う他には、1on1やコーチングセッションを受けるといった手法が考えられます。

なお、ヒエラルキー構造が明確な組織で、かつ、指示系統がそのまま「偉さ」のようになっている組織では、構造上、発達段階3から4に変遷するのが難しくあります。

発達段階3は、成人人口のおよそ7割ほどと考えられています。

発達段階4) 「自己主導段階」

発達段階4では、価値体系・行動基準を自分で構築することができます。
そして自律的に行動・判断ができます。

自分の思っている事を認識し、言語化し、他人に伝えることができるという特徴があります。

発達段階2と発達段階4は、どちらも自分自身の考えにフォーカスが当たりますが、明確な違いがあります。
発達段階2では欲求・衝動に従います。
発達段階4では価値観や自ら規定した規範に従います。

仕事の取り組み方として、決まりきったプロセスに従うだけではなく、状況にあわせた適切な手段を検討・採用することができます。

そして、強い成長意欲を持ち、自己啓発のために時間を投下します。

さらに、他者に対して、それぞれが独自の価値観を持つ存在であると認識し、敬意を示すという特徴があります。

発達段階4の限界は、自らの価値観に縛られてしまう点です。
発達段階5へのステップとしては、他者の存在を、自分の成長に必要不可欠な要素として認識することです。
自分の意見と自分自身を分離し、自分の意見に対する否定を許容し、自己変容・自己破壊を行えるようになることを目指します。

発達段階4は、成人人口の約2割ほどとみられます。

発達段階5 ) 「自己変容・相互発達段階」

発達段階5は、自分の価値観や意見にとらわれず、多様な意見を元に自己を変化させていきます。
アンラーニングを行えるという点が特徴です。

この段階では、自らの成長よりも、他者の成長に対して意識が向かいます。
そして、他者の成長を通して自らも成長するという認識を持っています。

発達段階5は、成人人口の1%未満と考えられています。

ワーパパと成人発達理論

大人になってからの成長について考えると、多くの場合はスキルアップをイメージすると思います。

できることが増える。
やっていることの質が高まる。
資格を取得する。

これは、水平的成長と呼ばれます。

一方、人間性や器といったものが成長することもあります。
これは、垂直的成長と呼ばれます。

これが成人発達理論では、垂直的成長の段階を示しています。

水平的成長は持っているアプリケーションの数を増やすことだと考えると、垂直的成長はOSのメジャーアップデートのようなものかもしれません。

ハードスキルとソフトスキルという言葉を使うならば、水平的成長はハードスキルで垂直的成長はソフトスキルと言えるかもしれません。

垂直的成長は、即座に役に立つといったものではありませんが、人生において長期的に効果を発揮するようなものに思えます。

ワーパパの世代は、リーダーとしてチームを任されている人もいると思います。
その時に、水平的成長だけでなく垂直的成長というものがあるということを認識し、自他ともに両面での成長について考えられると良いのだろうなと感じています。

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