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タロットカードと写真

タロットカードと写真

写真を撮り貯めていくうちに、特別な思い入れやエピソードのある写真というのができてしまうことがある。
その写真を撮るに至った経緯や心情、偶然のできごとなど、その一枚には背後にストーリーが潜んでいる。
人物を撮った時には、被写体となった人がその写真に収まるまでのストーリーもプラスされる。

時に写真が思いもよらなかった自分の本心を暴き出すことがある。
自分でも気づかずに心の奥底に秘めていた本心が意識よ

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テイクとメイク

テイクとメイク

写真を学んでいた頃、写真にはtakeとmakeがあると教えてもらった。
外に出て自然や街のありさまや人々のスナップ(当時は今ほど厳しくなかった)を撮るのがtake、スタジオでイメージを作り上げていくような撮影がmakeの写真だ。

私は撮るのも見るのも断然takeの写真が好きだ。
その時そこにしか表れないものを探して歩き回るのは楽しかったし、そんな瞬間に立ち会えた時は感動する。
なにより、原因と結

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無音のバイオリン弾き 2

バイオリニストの写真は良い仕上がりだった。

人気の無い河川敷。
頭上の線路から漏れる柔かな光の中で風を含んで揺れる髪。
こちらをまっすぐに見つめる瞳。
私の持つ力以上の何かが、この瞬間の為に向こうからやってきてくれたのだとしか思えなかった。

私はプリントした写真を彼に見せたかったが、彼が喜ばないのは分かっていた。
草を掻き分けながらけもの道を歩く間に私達はバイオリンと写真についての会話をしてい

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無音のバイオリン弾き 1

夏がまた戻ってきたような暑い日、カメラを首から下げて私はじっと立っていた。

河川敷は地面からの照り返しが酷く、あまり歩く人もいない。
ギラギラと容赦ない光に目を細めて眉間にシワを寄せて歩く人、ここぞとばかりにランニングで汗を絞り出す人がたまに通るぐらいだ。

もうそろそろ40分は経っている。
私は人を待っているのだ。

この場所に相応しいその人は必ずやって来る。

私の撮影の進め方は、当てもなく

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工事

工事

その人のことは、五分間くらい話した頃には気になりだしていた。
とにかく話を聞き出すのが上手なのだ。
仕事で悩んでいた私はその人と話しているうちにやるべき事が明確になり、解決に向けて動けるようになった。

その後も何度か顔を合わせ、その人とさり気ない日常会話をしているだけなのに、毎回元気になれたり新しい事に踏み出す勇気を貰えたりした。

その人は普通の会話の中に催眠暗示を織り込んでクライアントの潜在

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樹海

通りを歩いていると、ふと写真展をやっているギャラリーが目に止まった。
ちょうど時間も余っていたし入ってみることにした。

さほど広くないギャラリーには、シングルベッドより一回り大きいプリントで樹海の写真が7、8枚ぐるりと展示されていて、青緑の空間の中にいるようだった。

鬱蒼と茂った樹海らしい樹海、それ以外の感想も特に無いまま始めから一枚ずつ全ての写真の真正面に立ってみた。

まあ、樹海だよな。

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芸術と占いと潜在意識

作品をつくる事を目的に写真を撮っていた頃、自分の撮った写真は時に占い師のように私の隠していた心境を暴いたり、未来を的確に予言した。

拙い私の写真でさえそうなのだから、世の素晴らしいとされている芸術はもっととんでもない事になっているに違いない。

芸術は作者の潜在意識が現れたもので、潜在意識は自分や他人、過去や未来の境目がない。

芸術は見る人を写す鏡で、芸術性の純度が上がる程、鏡の面が増えていく

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