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【現代詩】20240622sat
娘も思春期真っ只中なのでふたりだけで出かけるなんてことは以前に比べるとずっと減ってしまって、時々映画を観に行ったりする程度になっているのだが、たまーにどうかすると「ちょっと近所をぶらぶら散歩」程度の何気ない誘いに、ついてくる事がある。
気まぐれに。
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彼女は写真を撮るのが好きなので、ミラーレス一眼とフィルムカメラ(トイカメラ?)を首から下げ、私は先日部屋を片付た時に発掘した20年以上前の古いコンデジをポケットに入れて。
今日も午前中、誘ったら付いてきて、一緒に近所の海へいったのだ。
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その海は、海岸が侵食されていて崖のようになり、縁までいくとそれなりに危険なのであまり近づく人はいないのだが、完全に立ち入り禁止というわけでもないので、潮風を浴びながらのんびり歩くには悪くないのだ。
ジャリジャリした海岸を歩いて、一旦遊歩道に出て、途中でいい感じの景色を見つけた私はガードレールを乗り越え海側に降りた。
後ろを確認すると娘も同様にレールに足をかけ、跨いで、こちらに、降りようとする。
私は極自然に手を出したのだが彼女もまた極自然に、私の手を頼り、無事着地。
また、しばらく、歩いて。
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やや崩れかけた砂利の隙間から波打ち際の方に少し降りてみると、娘もあとを付いてくる。
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足元がおぼつかないので手を出すと、やはり当たり前のように握り返してくる。
降りた先が思ったほどいい景色ではないので崖を登って砂利道へもどる。
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私は上から手を伸ばし娘は下から握り返す。
互いに引き合って力を込め、娘は私の隣に立ち、頬を紅潮させている。
そうして小一時間。
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ぶらぶらと散歩。写真を撮りながら。
今一度ガードレールを乗り越えて遊歩道に戻る時、先ほどと同様に手を伸ばす。
娘はその手を頼り、コンクリに足を着いた。
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遊歩道を歩く。信号機に従って国道を渡る。
どうってこともないド田舎の空気を切り取りながら自宅に戻った。
思い返してみると、ああいう風にしっかりと手を握り合うなんてことは最近、殆どなかったな。
娘が思春期で、以前よりつまらないと、世の父親同様に、私も思う、ふだんから思っているしかし。
悪くない。
久しぶりに握り合う手の感触その懐かしさ。
全然悪くないむしろ、これでいいのだ。