スポーツの通訳ばかりしてきた私がボードゲームの通訳してきました
3月23日、24日に大阪でボードゲームビジネスエキスポが開催され、ここでシンガポールパビリオンにて通訳をさせていただきました。
私は2日目のみ担当させていただきました。
通訳者としてお仕事をしている方であれば共感していただけると思いますが、「言葉が話せれば通訳ができる」というものではありません。
業界やジャンルそれぞれの専門用語も出てくるので、それを知っていないと訳せません。専門用語の知識は必須です。
そして、自分が意味が理解できていないものを、別の言語に置き換えて誰かに説明することはできません。なので、ゲームの内容をしっかりと理解する必要があります。
ボードゲームはオセロしかしたことのない私‥
ボードゲームには馴染みがないこともきちんと運営者の方に事前に相談させていただいた上で、事前に準備できることはしっかりと行うというお約束をし、今回ありがたいことに通訳としてお仕事をいただきました。
せっかくなのでジャンルの違う通訳をした感想をここに記しておきます。
シンガポールパビリオンはシンガポールから3つの会社が集まって出店されていました。
朝到着し、シンガポールから来た皆さんと、通訳者の方達とご挨拶を済ませたところで、ボードゲームを全く知らないと分かった皆様から怒涛のレクチャータイムをいただきました!!!(みなさん優しくて本当に感謝しています😭)
私の担当はこちらのゲームでした
Nightmares of SUSHI
KABUKI TRICKS
カワイイ芝犬が描かれています。
実は数日前から調べて、「もしかしたらこのゲームを担当するかも」と思っていたのでYouTubeで遊び方を確認していたのですが、素人の私には少し難しく、あまり理解ができていない状態でした。
開演まで数十分の間に、まず、このゲームを制作されたジェフリーさんがとても丁寧に遊び方を教えてくれました。
YouTubeで一人で確認していた時よりも、実際にカードを触って遊んでみると案外スッと理解でき、どんな駆け引きが必要か、どんな予測をしながら遊ぶゲームなのかも分かってきました。
「これで一安心!」 ではありません!!!!
通訳の難しさとは、それを如何に相手に分かりやすく説明するかということ。
この時点ではまだ私はやっとルールを理解し出しただけで、“そのゲームの魅力をうまくプレゼンしながら相手に説明する”ところにはまだまだ到達していません。
大ピンチです。
ここで救世主が現れました。
前日にこのゲームの通訳をされていた方が様子を見にきてくれました。
「佐々木さんですよね、ボードゲームにあまり詳しくないとお聞きしていたので、少しフォローした方がいいかなと思って!」
‥や、やさしい‥。
その方はボードゲーム界では有名なデザイナーさんで、2日目は通訳としてではなく、ご自身が展示を回るために現場に来られていたようです。
それなのにわざわざ心配して来てくださるなんて、とても優しい‥。
まずはゲームのコンセプトを最初に分かりやすく伝えること、
「これはお寿司を振る舞うゲームです!」
と一言目に言うと、来てくれた人が興味を持ってもらえる&何をするゲームかイメージしやすいということを教えてもらいました。
そしてもう一つのKABUKI TRICKSのゲームでは専門用語が出てきました。
ボードゲームが好きな人なら、「マストフォローのトリックテイキング」で伝わるよ、と言われましたが、まず私自身がこの意味が分かりません!笑
トリックテイキング、マストフォローの意味を教えてもらうと同時に、
「お子さんが来た時や、あまりボードゲームに詳しくない人にその言葉を言っても佐々木さんと同じように理解できないから、その場合は“大富豪の特殊バージョンです”と言ったら分かりやすよ」
という言葉をいただきました。
なるほど‥。どのジャンルでもそうですが、通訳の大切なポイントは
【相手が理解できる言葉で伝える】ということです。
伝わっていないのに、専門用語を並べても意味がありません。
逆に、専門用語でじゅうぶん伝わっているのに、長々と説明することも意味がありません。
これは、その場その場で相手の様子を見ながら対応しなければいけないです。
不安を抱えながらも開場時間になりました。
カワイイ芝犬のイラストに惹かれて寄ってくれる人も多く、何度か説明を重ねるうちにスムーズに話せるようにはなりました。
ジェフリーさんもいつも近くにいてくれて、質問が出たらその場でジェフリーさんに確認することもできました。
その場でゲームの購入を決めてくれると、とても嬉しく「少しは役に立てたかな」という気持ちでした。
周りの出店者の方も優しく、他のゲームのジャンルも教えてくれたり、今流行っているキャラクターを教えてくれたり、ゲームのお話し盛りだくさんの1日でした。
今回のお仕事について事前に運営者の方とお話しした際にこのような事をおっしゃっていました。
「もしかしたら上手く訳せない場面も出てくるかと思います。ただ、終わった時に出店者の方に “この通訳さんがきてくれて良かったな” と思ってもらえるようにお仕事をして欲しいです。」
慣れていないので、理解が追いつかない場面はあったかと思いますが、この言葉を胸に少しでもお役に立てるように動きました。
最終的には「サポートしてくれて助かったよ☺️」と言ってもらい、記念にゲームもいただき、本当に本当に暖かい気持ちで1日を終えることができました。
仕事に対して、通訳に対して、“完璧”になる日はありません。
常に反省の毎日です。
ただ、今回の運営者の方の言葉のように
「この通訳さんが来てくれて良かった」
そう思ってもらえるような姿勢を持ち続けたいなと思いました。
ちなみに、シンガポールの英語が聞き取れるか不安でしたが、全く問題ありませんでした!
通訳として踏み出して10年‥。やっと色んなアクセントにも対応できる英語力がついてきたかな‥と思います。
ありがとうございました☺️