見出し画像

“ピダハン 「言語本能」を超える文化と世界観” 第11章


今日のおすすめは!
D・L・エヴェレット “ピダハン 「言語本能」を超える文化と世界観”
屋代通子訳


*本との出逢い
堀元見さんと水野太貴さんのYouTubeチャンネル”ゆる言語ラジオ”で話題となったこちらの1冊。



イビピーオってなんだろう、水野さんが語らなかった箇所について自ら読みたいという想いで手に取りました。
学びがあった記述やピダハンの情報などを、これから各章毎に分けて読書記録を残そうと思います。
ゆる言語ラジオリスナー(ゆるげんがー?用例?)に楽しんで頂けたらと思います。


今回から第2部に突入します!
これまで読んで下さってありがとうございます!
それでは第11章からどうぞ!



*第11章


*ピダハン語の研究に役立てた知識

  • メキシコ南部のツェルタル語の現地調査

  • コマンチ語とチェロキー語の話し手による訓練

  • 伝道団でのアマゾン諸語の分析の手伝いの経験

  • 読み漁った膨大な文献



*ピダハン語の音

〈男性〉

  • 母音3つ(a,i,o)

  • 子音8つ(p,t,k,s,h,b,g,声門閉鎖音のx)

〈女性〉

  • 母音3つ(a,i,o)

  • 子音7つ(p,t,k,h,b,g,声門閉鎖音のx)
    →男性がsを使う語ではhを使用する。

男性より子音が少ないのは珍しいケース

*ピダハンの単語

子音が少ないため、1つ1つの単語が長くなりがちだが、そこまで長くなっていないのは、「コンテクスト」と「声調」があるから。



コンテクスト

コンテクストとは、文脈の事。
同じ音でも文脈で判断出来る。

例:「いくつですか?」の質問の「two(2つ)」は、同じ音の「to」ではないと判断出来る。
  • ピダハンは子音が少ないにもかかわらず、同じ単語でも驚くほど寛容に幅広く変化させる。(=自由変異)

例:頭にあたるのは1つの単語だが、以下を容認している。
・アパパイー ・カパパイー ・パパパイー ・アアアイー ・カカカイー


声調

  • 音の高低差には決まった高さがあるのではなく、相対的なもの。

  • 高い声調と低い声調がある。

ピダハンの単語は単語によっても音の高低差で意味が変化する為、エヴェレットは単語を書く際にアクセントも記録するようにした。

例:
バギイ(友人)→愛情を持って触れるもの。
(敵)→団結を起こさせるもの。

ちなみに
(敵)は、その人物そのものではなく、事物を集めさせる原因となるものという意味があるそう。
人を憎まず、原因を敵とする考え方が素敵だなと思いました。
友人と敵が同じ単語なのも、昨日の敵は今日の味方のように表裏一体だからなのかしら。


  • 音節の長さは5つある。
    (=ディスコースのチャンネル。伝達の回路。
     社会言語学者デル・ハイムズが提唱)

①口笛語り

→ピダハン同士でも注意していないと聞き分けられないことから、
自分が言おうとしている事や正体を隠す役割がある。男性のみ使用。
狩りの最中や男性同士の荒っぽい遊びの中での語り。
「酸っぱい口で話す」「すぼめた口で」の語りと呼んでいる。

ピダハンだけに限らず、他の民族でも口笛語りは男性だけに限られているのが普通。
狩りの最中に口笛語りを使用するのは、音が長く音を引いてジャングルの中でもよく伝わるうえに、通常の男性の低い声よりも獲物を警戒させずに済むからだと考察している。

②ハミング語り

→非常に低い声調。他人が聞き取れるように囁くのではなく、通常の音量で語る。プライベートな語りとしても使用。

物をほおばっていたり、母親が赤ん坊に話す際によくハミングする。

③音楽語り

→音の高低を誇張し、単語や文のリズムを変える音階のような語り。
新しい情報を伝える際や精霊との交渉に使用。精霊自身も音楽語りで返事する。主として踊っている際に使用される。

「顎が外れる」という特別な呼び名で呼んでいる語り。

④叫び語り

→母音のa、もしくは子音のkか声門閉鎖音のxのどちらか1つの子音を使って叫ぶ。
強雨で雷の日や、遠く離れたピダハンと話すときに使用。裏声で発する事もある。

例:子音kのみ使用の場合
叫び語「カアー、カアーアカカアーア、カアーカアー」
通常のピダハン語「コー イアーイソアーイ。バオーサイー」

⑤子音と母音を使用した通常の語り



*現代言語学理論の観点から

  • 当時の現代言語学理論の認識では、通常、文化的背景は音声構造には関与しないと考えられていたが、ピダハン語は、文化的背景に影響を受けているとエヴェレットは考察している。

  • その考えは、チョムスキー言語学が完全に無視している現象を説明できる可能性がある。

  • エヴェレットが1995年までにピダハン語の音声学に関して精力的に論文を出していたため、ピダハン語は有名になり、音声構造の性質に関する論争の象徴になっていた。

  • 論争の確信は演繹対帰納。完成されていたと思われていた理論体系を見直す革命となった。



*それではまた次回お会いしましょう!


いいなと思ったら応援しよう!