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なぜ人事は嫌われるのか

大学院、最初の授業にて。学問としての「人事」を探究する意欲と希望に溢れ、目を輝かせる人的資源管理コース専攻の学生たちを、いきなり崖下に突き落とすようなドSな問いが教授から発せられた。

「なぜ人事は嫌われるのか」

私は思わずニヤニヤしてしまった。
こんなテーマを最初のクラスに持ってくる、この教授のセンスがとても好きだなーと思ったからだ。

仕事は好かれる事を目的にしている訳ではないし、時には敢えて嫌われ役に回ることもあるだろう。とは言え、お互いにポジティブな感情(信頼、共感など)を持ちながら仕事した方が気持ちいいし、私は出来たらそれを目指したい。

しかし残念ながら、人事って、つくづく嫌われリスクの高い仕事だと思う。実際に仕事をしている時にも
「だから人事は信用できないんだよ!」
「人事部は本当に何も分かってないな。」
などなど、相手を怒らせたり、お叱りを受ける場面には少なからず遭遇してきた。

こういった事象の大半は自分の力不足によるもので、その愚かさを嘆くことも多かったが、このクラスでは「なぜ人事は信頼を失うか」という問いについて、自分の経験の目線だけではなく、学術的なレンズで眺める機会を与えてくれた。

以下、ざっくり触れた過去の研究達の概要と私の受け止めを羅列。
 
※ご注意
さけとばの悲観的人格に基づく意訳を含みます。ご気分を害される方がいたらすいません。

1.人事に対する評価


・現場の管理職達は人事部門を、受け身で消極的でビジネス感覚がなく、リスクを嫌い、官僚的であると見做している。(1980年代の複数の調査から)

・Cappelli (2015)は、”Why we love to hate HR” (この表現好き)という記事の中で以下のように示している。

" 我々はどのようにふるまうべきか指示されるのが嫌いだ。そして、人事部ほど(財務部以上に!)に組織において我々にそれを強要する部門はいない。(中略)更に、人事部は、私たちが嫌うような文書化の仕事などを押し付け、私たちが採用したいと思う人を採用することを妨げる。”

Cappelli(2015) さけとば訳

→ さけとばネガティブ意訳
「仕事に面倒を持ち込んで、あれこれ強制してくる癖に、現場がやって欲しいことはやってくれない、保身的でビジネス感覚に疎いお堅い部署=人事 。」

2.人事に対する期待値のブレ


・Ulrich(1997)は人事の役割として①戦略的パートナー ②変革のエージェント ③実務のエキスパート ④従業員のチャンピオン という4つを上げているが、社内ステークホルダーによって、何を重要視するかは異なる(Buyens and De Vos, 2001)。例えば、トップマネジメントは変革の推進を求めるが、ラインは人事インフラと実務の専門性(特に採用と研修)を求める、など。

・ちなみに「戦略人事」はHRのトレンドではあるが、実際に戦略的役割を最重要視するステークホルダーはこの調査では挙がらなかった。

→ さけとばネガティブ意訳
「いろんな役割で八方美人した結果、どれも中途半端。信頼も得られず、戦略性なんて期待されない=人事。」

3.悪循環に陥る人事


・Legge(1978) は、役割の曖昧さ、組織内政治力の弱さなどを指摘し、人事が陥る悪循環の例をいくつか示した。


人事が陥る悪循環の例
HRに対する現場の管理職からの低い評価 
→ HRは意思決定プロセスに招かれない
→HRの観点から問題のある意思決定がなされる
→HRに問題解決のプレシャーが降りかかる
→火消し対応に追われて重要な戦略にリソースを割けない
→HRに対する現場の管理職からの評価は更に低下 
→ 振り出しに戻る

Legge(1978) ※さけとば訳

 ほかにも、「HRが組織にどう貢献するか分かってない故の悪循環」や
「HRのステータスの低さにより優秀人材を獲得できず、落ちぶれる悪循環」 
など、冷や汗が出る例が紹介されていますが割愛。

→ さけとばネガティブ意訳
「1970年代に指摘されている負のループから40年以上経過しても未だに抜け出せない泥沼=人事」

4.人事の計画とラインでの実施の乖離


・人事施策の多くは、現場の管理職の力を借りて現場に落とし込まれていくが、人事が「意図したこと」は、さまざまな要因で「意図しない形での実施」に変容する。

→ さけとばネガティブ意訳
「頭でっかちの施策立案・現場に丸投げ→ラインが混乱・炎上=人事」

5.さて、どうする?


まず、人事が信頼されない背景について、研究、探索がなされているという事実がとても興味深かった。
研究されているという事は、同様の課題を抱いている組織が複数あるわけで、「ウチの会社の人事が遅れている」とか「私の仕事の仕方が悪いから」だけでは完結しない人事共通のハードル(機能的な性質/課題?)があることが垣間見られた。
自分が感じていた人事のモヤモヤは、先人達がこんなにも明確化してくれていたのか、と嬉しさすら感じた。(←勉強不足)

さあ、ここまで人事の残念な立場を振り返ってきた訳だが、嘆いていても仕方がない。こういうモヤモヤを打開したくて、私は勉強を始めたのだ。

教授は、
「まあ、人事ってのはこういう苦境がデフォと思って、どうやれば価値を生めるか、過去の知見やエビデンスに基づいて、これからしっかり学びなされ
という感じで、人事が取りうるアプローチの次回予告を取り入れつつ、華麗に講義を締め括ったのであった。


人事は難しい。だからちゃんと勉強する

本記事だけで終わっては人事のネガティブキャンペーンになってしまうので(汗)、その後の授業で学んだ人事がというるアプローチについても、今後少しずつアウトプットしていきたいと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました!
最後に、誤解なきよう、以下の3点は申し添えさせていただきます。

・世の中には、しっかり組織の信頼を勝ち得て活躍されている人事の方もたくさんいること(そんな方々、組織からしっかり学んでいきたいです)

・色々ネガティブに書きましたが、大学院で人事の勉強をしたいと思うようになったのは、そんなハードルがあっても、徐々に信頼を寄せてもらえるようになったり、関係者と一緒に苦境を乗り越えられた時には、それはもう、この上ない達成感を得られるからであること

・詰まるところ、なんだかんだ私は、人事の仕事が好きだということ!


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