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【韓日ウェブ漫画翻訳の疑問】週に何話翻訳してる?1話あたりの作業にかかる時間、修正の数、スケジュール管理方法は?

またしても、大変お待たせいたしました。

匿名メッセージサービス マシュマロへのお返事記事第4弾は、韓日ウェブ漫画翻訳における

・週に何話翻訳してる?
・1話あたりの作業にかかる時間は?
・修正はどのくらい入ってくる?
・複数の担当作品のスケジュール、どうやって管理してる?

この4つのテーマでお送りいたします。


https://marshmallow-qa.com/messages/901ce43b-57f1-42bc-8471-0546f693f4df

ベテランは週に何話くらい翻訳するの?


私は会社員のように、月~金の平日、1日最大8時間のみ翻訳作業を行っています。つまり、週に最大40時間、翻訳していることになります。

この条件で、私がストレスにならない「1週間辺りの作業話数」は、ずばり20話です。

1日に4話ずつですね。

このペースなら、疲れたら昼寝をしたり、庭仕事をしたり、お菓子作りをしたり、仕事の合間にのんびり自分の時間を楽しむことができます。

なんなら1日に5話ずつ翻訳して週休3日にすることも可能です。

とはいえ、「この新作は是非Sakeさんに!」とお願いされたりして、何だかんだで大体週に25話前後を翻訳してきました。1日に5話ずつですね。

ほどほどに休憩は挟みつつ、でものんびりとはいかなくなってきます。

「この作品はSakeさんしかいません!」なんて言われたりして、週に35話作業していた時期もあります。

30話を超えると「本当に満足のいくクオリティーで納期までに納品できるのか…?」という心配も出てきて、精神的に疲れます。

実際、35話をこなすとなると、週40時間の作業時間では足りなくなることもありました。そんな時私は…

風呂に入る時間を犠牲にします。


私は睡眠を削ったり、土日を返上するのが本当に嫌なんですよ。

なので「風呂に入らずその時間でもう1話納品」していました。笑

多忙な時は担当者さんがよく私に「ちゃんと風呂入ってますか~」って聞いてくれたりしてましたね。笑

~まとめ~
・20話=のんびり作業できる
・25話=ちゃんと働いた感がある
・35話=人間らしい生活ができなくなる恐れあり

※私が翻訳クオリティーを維持した場合

週末も返上して稼ぎたい!という人なら週に50話くらい作業できるかもしれませんね。

1話あたりどのくらいかかる?


私は1話を翻訳するのに大体1時間~2時間かかります。

ものによっては翻訳自体には1時間もかからないことがありますし、分量が多いものだと2時間くらいかかります。

1時間もかからない作品だと、1日に9話は納品できますね。

とはいえ、短い作品も長い作品も、最終回や見せ所など、より気合を入れて丁寧に作業したい場合に+αでさらに時間がかかることもあります。

いまいちビシッと決まらなくて「どんなセリフにしよう…」と数日悩むこともあります。とはいえ悩んでただ時間を溶かすのではなく、こういう時は作業を中断して別の作品の翻訳をしたり、料理中や就寝前に悩むようにしています。

昔より分量が多い?


昔はよくコマ数で分量を表現していましたが、最近は連載元のページ数を基準にしています。大抵アプリの一番下に表示されていますよね。

確かに長い作品が増えてきたように思いますが、分量は作品によりけりです。

短めだなぁと感じるのは、100ページ前後。かなり短いものだと50ページ以下とか。

Kakao pageの90ページ作品
Naver Seriesの135ページ作品


長いなぁ、分量多いなぁと思うのは200ページを超えたあたりでしょうか。

Kakao pageの287ページ作品


500ページを超えてくると、気絶しそうになります。

Naver Seriesの539ページ作品


分量は今もこのように「短いものもあれば長いものもある」ので、その作品が単価と見合っているかも重要になってきますね。

1週間あたりの作業話数と、1話あたりの作業時間は以上です。

ご質問ありがとうございました!

▼単価についてはこちらの記事をどうぞ!


https://marshmallow-qa.com/messages/8a548979-7682-4f95-8544-db8cccf02940

修正の数は?


単価の記事を読んでくださったんですね!ありがとうございます^^

韓日ウェブ漫画翻訳の修正は、

・担当者(監修者)
・会社
・プラットフォーム

によって大きく差があります。

たとえば、同じ会社・同じプラットフォームなのに修正がほぼゼロの担当者もいれば、修正が多めの担当者もいます。

前者は翻訳者の結果物を尊重しているのでしょう。
後者は担当者の好みによる修正であることがほとんどです。

「好みによる修正」というのは、どうしても読み手(訳し手)によって感じ方が違ったり、思い描く登場人物像が違ったりするため、そういった解釈や表現方法の違いによって生じる修正事項です。

必ずしも修正しないといけないわけではないけど、こう手直しするのはどうですか?といったような、作品をより面白くするための提案のようなものですね。

私の場合、前者の担当者だと自信に繋がり意欲が湧き、翻訳の調子がよくなります。

後者だと、「修正」という言葉に少し凹みますが「そういう表現もあるのか~!」といった学びもあり、表現力アップに繋がっています。人って自分がよく使う表現に偏りがちですからね。この場合だと、担当者の好みに合わせていくことで修正の数を減らせます。

ただし、もし修正事項が「好みによる修正」ではなく「誤字脱字、誤訳、文法ミス、不自然な日本語」などである場合は、しっかり反省して二度と繰り返さないようにしましょう

ケアレスミスは注意することで必ずなくせるミスですし、不自然な日本語も国語力を鍛えることで改善可能です。

修正内容にどうしても納得できないとき(修正後の日本語がおかしかったりする、ストーリーに合わない内容になっているとき)は担当者さんに問い合わせるようにしています。

無駄な修正が発生すると、編集者(写植する人)の負担になってしまいますからね。

あと、最初の20話くらいまでは作品初期のすり合わせのため修正が多くなる傾向があります。まだWT翻訳を始めて1ヵ月とのことなので、その時期の真っただ中なのではないでしょうか。

このように、修正の数は時と場合でまちまちですが、私は「ほとんどの場合、ゼロ~2,3個」で、ケアレスミスはほぼゼロです。

取引先・担当者と長い付き合いになってくると相手の好みがわかってくるので、経験とともに修正が減ったように思います。

~こぼれ話~

会社によっては「修正が少ない信頼できる翻訳者」には監修がつかないことがあります。
このような場合は編集(写植)後に翻訳者自身でチェックして、修正か所があれば自分で編集者(写植する人)に修正依頼をして納品という手順になります。
なので私にはそもそも「監修者による修正」が入ってくる作品がそんなにありません。信頼していただけるのは嬉しいものです。

他の分野の翻訳歴が長い方でもマンガ翻訳はまた違うコツが必要だったりするので、いかにクオリティーを改善できるかのヒントが隠されている修正としっかり向き合い、思いっきり吸収してみてください。徐々に修正の数を減らしていけることでしょう。

それでも人は落ち込むものです。修正が多いときは美味しいものを食べたり、趣味に走って発散しましょう!
それでもモヤモヤする時はいつでもマシュマロに吐き出しに来てください^^

ご質問ありがとうございました!

▼韓日ウェブ漫画翻訳のクオリティーをアップする方法はこちら


https://marshmallow-qa.com/messages/82f4dcb7-b610-4ac8-8dea-f6d89600eea9

スケジュール管理、どうしてる?


私は常に大体20タイトルくらいを担当しているのですが、おっしゃるとおり、作品ごとに締め切りが異なります。

スケジュール帳にはちゃんと「12月1日 月曜日 作品Aの15話」のように格作品の各話数の納期を書き記していますが、納品は同じ日にまとめてしています。

たとえば…

月曜日に作品A、火曜日に作品B、水曜日に作新C、木曜日に作品Dを納品しないといけないとします。

それを、前の週の金曜日に全部まとめて納品するんです。前倒し納品ですね。

前もって納品しておけば万が一体調を崩したり、突然出かけることになっても安心ですし、まとめて納品することで納品忘れを防止できます。

また、私はGoogleスプレッドシートでスケジュール帳を作って管理しているのですが、納品済みのセルに色を塗って「納品したか、してないか」が一目でわかるように工夫しています。

スケジュール帳をしっかり作成して毎日必ずそれをチェックすれば納品を忘れることはまずないので、特にストレスに感じたことはありません。

~こぼれ話~

たまに、「日本での連載が韓国の連載に追いついてしまった」等の理由から原本供給が遅れることがあり、納期前日~納期後に原本を受け取ることがあります。なんなら日本での連載予定日直前に原本を受け取ることも。

そのような場合、担当者さんは「いつ頃納品可能でしょうか…?」とちゃんと私の予定を聞いてくださいますが、私はウェブ漫画翻訳1本で食べていて本業や副業もなくスケジュールに融通がきくため、原本を受け取ってから数時間以内~その日中(最低でも翌日)に翻訳して納品するようにしています。

翻訳のあとには編集(写植)作業もありますし、監修作業もあります。そのためこのような「なる早」に対応できる翻訳者はかなり重宝されるのですが、急ぎの仕事にストレスに感じる人もいるはずです。

とはいえ、最近ではそのようなケースは滅多にないように思いますのでご安心を!

新作の依頼を受けたときは、「1話あたりどのくらいかかる?」でお話しした分量の基準から予想される作業時間を算出し、スケジュールにフィットするか検討したのちに引き受けるかお断りするかを決めています。

ご質問ありがとうございました!

▼作業時間にスケジュールの組み方の次は「ぶっちゃけいくら稼ぐべき?」もどうぞ!


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このマガジンは、韓日翻訳家のかぶりSakeが共同で執筆・運営しています。

かぶり@Hidemi_K
1997年より韓日翻訳に携わり、字幕やウェブ漫画翻訳など多方面で活動中。著書に「ドラマで読む韓国: なぜ主人公は復讐を遂げるのか 」(NHK出版新書)「韓国語ネイティブ単語集」(扶桑社)「ためぐち韓国語」(四方田犬彦共著、平凡社)、翻訳書に「グッドライフ」「クミョンに灯る愛」(ともに小学館)「ヒトは誰も真実恐怖症」「オトコとオンナのもやもやモード」(ともに講談社)などがある。

Sake@koalaeatsmaccas
2013年より韓日ウェブ漫画翻訳を始め、人気作の翻訳やウェブ漫画翻訳者の新人養成、監修、出版用ウェブ漫画の翻訳も手がける。これまでに訳した話数は1万話ほど。南半球で隠居中。

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