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【韓日ウェブ漫画翻訳の疑問】なぜ翻訳者が載らないの?

お待たせいたしました。

匿名メッセージサービス マシュマロへのお返事記事第3弾は、韓日ウェブ漫画翻訳における「なぜ翻訳者が載らないの?」をお送りいたします。

マシュマロで頂いた質問は現在このようにnoteの記事でお答えする場合と、マシュマロ上で返信させていただく2パターンでお返事させていただいていますが、後者は私の主観や個人的な内容が強い内容のため記事にするにははばかられるからです>< どちらも全力でお答えしているので何卒ご了承ください!

↓記事にしていないご質問と返信はこちらからご覧いただけます。
ぽにょかぺマシュマロ

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韓国産のウェブ漫画の日本語版にはなぜ翻訳者の名前が載ってないの?


そう、私たち韓日ウェブ漫画翻訳者は基本的に名前が出ないんですよね。

韓国産のウェブ漫画でも、他言語への翻訳物には翻訳者の名前が出ていたりしますので、ここでは「韓日ウェブ漫画翻訳」について書かせていただきます。

私が韓日ウェブ漫画翻訳を始めた2013年に受けた説明では、「日本の読者に韓国の作品だということを知られないように」という理由でした。

今は韓国という国や文化がかなり日本に浸透していますが、かつては抵抗を感じる人が多いのでは、と懸念していたのでしょう。

それゆえ私たちは頭を捻って韓国産をどうにか「日本化(ルビ:ローカライズ)」させてきました。

▼ローカライズについてはこちらの記事で軽く説明しています

とはいえ、いくらローカライズ翻訳で誤魔化したところで食卓に並ぶ食べ物はトゥッペギに入ったチゲやらキムチやら真っ赤なものばかり、緑の小瓶が出てきまくり、家族向けのマンションでも風呂(シャワー)とトイレが同じ空間にあったり、登場人物の男が急に大学を休学して何故か坊主に刈り上げ留学したり(入隊誤魔化し)で、異文化を全然隠しきれてなかったんですけど。

あ、でも昔はよく食べ物の絵は差し替えてましたね。

「左ハンドル・右側通行」は左右を反転して「右ハンドル・左側通行」に見せかけたりも、していました。

なんなら、作品全体を左右反転して翻訳していたこともあります。登場人物全員がサウスポーになってました。笑

左右反転翻訳ではPhotoshop上で反転後の原稿と翻訳文を見比べる作業もあったため、「ハングルの鏡文字」をスラスラ読むスキルも身につけたものです。

▼Photoshopでの韓日ウェブ漫画翻訳についてはこちら

そんなふうに、韓国産であることを隠すための徹底したローカライズが行われていた時代もありました。

しかし時は流れ、


タイトルは伏せますが日本で大ヒットした某ドラマの原作ウェブ漫画の日本語版がローカライズされていたことで「なんで登場人物の名前や地名が日本のものになってるの?」という大々的なローカライズバレ(?)が起きてしまった辺りから、「ローカライズではなく韓国舞台のままでの翻訳」が圧倒的に増えました。

「韓国舞台のままでの翻訳」は昔は本当に極僅かでした。法律系とか、どうしても日本に置き換えるのが困難なものなどが致し方なく韓国舞台のままになっていましたね。あとは、作者の希望で韓国のままとか。

話は逸れましたが、その筋の人から今もかつての方針をそのまま引きずってるだけという話を聞きました。翻訳者である私に本当の「大人の事情」を伏せているだけかもしれませんので、その真偽はわかりません。

私の知る限り、少なくとも黄色いイメージのあの大手のプラットフォームは翻訳者名を出せないわけではなさそうです。なぜなら韓日ウェブ漫画翻訳者の名前が出ている作品も掲載されているから。私も名前を載せていただいている作品があります。

少し前に誕生したこれまた超大手のプラットフォームも、翻訳者名の掲載予定はなし、という話です。

これは私の想像ですが、ひょっとすると、版元側の要望かもしれませんね。作者や翻訳会社が「翻訳者さんの名前も出してあげてください」と配慮してくれて名前が出るケースもありますので。

とはいえ、「翻訳者の名前が出ない=翻訳者がいない」わけではありません。私たちの情熱や苦労、努力がなくなるわけではないです。

努力の賜物である完成度の高い翻訳により、日本語版も原語版と同等に楽しんでいただけます。日本語版も楽しんで読んでもらえること、それが私の本望です。

「どうせ名前が出ないし~」と手抜きしていると、もしいつか「翻訳者の名前を公開します!」ってことになったときに大恥をかきますしね。(しかしながら、私にも知られたくない作品はあります。笑)

▼ギクッ!とした方は翻訳品質改善にこちらの記事もどうぞ

余談ですが、PDをしてる友達が「なら私たちの名前も載せてくれ!」と叫んでいました。そうですよね。翻訳クオリティーが低い作品だとPDさん(監修者さん)の血の滲むような手直しがあり作品としてなりたっていますので。翻訳会社の名前も、編集者(写植する人)も基本的に載らないですよね。縁の下の力持ちは私たちだけではないのです。

現状私たちにできることは「名前が出ても出なくても、作者と関係者をリスペクトして全力で翻訳し、読者のみなさんに楽しんでいただくこと」ではないでしょうか。

▼作者へのリスペクトについての私の考え


それでも、

もし名前が出たら、やる気がUPしますよね。


だって、人間だもの。

そのために私たちができることは何だろうかと考えてみたんですが…

私たち「翻訳者」がよりリスペクトされるためには、私たちがリスペクトされる翻訳結果物を生み出す必要があるのでは?


大事なので大文字+太字で言いました。

労働者の権利を~!みたいに行動に移して言葉で訴えることももちろんできるでしょうが、それをしない私たちもいけないのかもですね。

私の知る限りの情報でのお返事になりましたが、以上です。

ご質問ありがとうございました!


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このマガジンは、韓日翻訳家のかぶりSakeが共同で執筆・運営しています。

かぶり@Hidemi_K
1997年より韓日翻訳に携わり、字幕やウェブ漫画翻訳など多方面で活動中。著書に「ドラマで読む韓国: なぜ主人公は復讐を遂げるのか 」(NHK出版新書)「韓国語ネイティブ単語集」(扶桑社)「ためぐち韓国語」(四方田犬彦共著、平凡社)、翻訳書に「グッドライフ」「クミョンに灯る愛」(ともに小学館)「ヒトは誰も真実恐怖症」「オトコとオンナのもやもやモード」(ともに講談社)などがある。

Sake@koalaeatsmaccas
2013年より韓日ウェブ漫画翻訳を始め、人気作の翻訳やウェブ漫画翻訳者の新人養成、監修、出版用ウェブ漫画の翻訳も手がける。これまでに訳した話数は1万話ほど。南半球で隠居中。

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