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【読書感想文29】現在の世界を数値的に見る「FACT FULNESS」

FACT FULNESSとは思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣である。残念ながら多くの人の世界に対する認識は間違っている。世の中は想像よりは遥かにまともだし、進歩している。この本を見ると世界に対する認識が変わると思う。

1.世界に関する質問

あなたは世界の現状についてどれほど知っているだろうか?本著の冒頭にいくつか質問があるので、5つを抜粋してみるので、回答していただきたい。

質問1 現在低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?
A. 20% B.40% C.60%
質問2 世界で最も多くの人が住んでいるのはどこでしょう?
A.低所得国 B.中所得国 C.高所得国
質問3 世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?
A.約2倍になった B.あまり変わっていない C.半分になった
質問4 世界の平均寿命は現在およそ何歳でしょう?
A.50歳 B.60歳 C.70歳 
質問5 15歳未満の子供は現在世界に約20億人います。国連の予測によると、2100年に子供の数は約何人になるでしょう?
A.40億人 B.30億人 C.20億人 

FACT FULNESS

正解はC,B,C,C,Cである。何問正解できただろうか?もし勘でやっても1,2問は正解できるが、それを上回れただろうか?もし正答数が0個でも恥じることはない。世界の有識者でも3割(1/3)を上回る人は稀なのだから。

この質問の意図は、「我々は意外と世界の現状のことを知らない」と「世界は思ったほど悪くなっていない」という二つの事実である。人は自分が賢くて世間のことをよく知っていると思うし、世界はうんざりするほど不条理にまみれているように信じている。

2.増え続ける良いことと、減り続ける悪いこと

しかし実際には世界はどんどんよくなっている。以下の二つの写真も本著からの抜粋である。自然保護は進み、女性参政権は増え、識字率は上がる一方で、奴隷は減り、乳幼児の死亡率は下がり、飛行機事故は減り、天然痘は撲滅した。

増え続けている16の良いこと
減り続けている16の悪いこと

しかし一方で残酷な現実は確実に存在する。今現在ウクライナでは市民が戦争の犠牲となり、貧困に苦しむ家庭もあり、新型コロナによって亡くなった人もいる。

「良くなっていること」と「悪いこと」は両立しうるのである。大事なことは事実を事実として見極めることだ。それが本著のテーマである。

3.緩やかな進歩と劇的な事件

前項のグラフより、世界の情勢はますます改善、向上している。しかしなぜそれを人間は認識できないのだろうか?残念ながら人間はそれほど簡単に感情と理性を切り離せない。たとえばウクライナ紛争や貧困国の飢餓の報道を見るたびに心を痛める。その感情は正当なモノだ。しかしそれだけが世界のすべてではない。むしろ最もその環境から程遠いのが先進国の国民である。

緩やかな進歩を観察することは極めて難しい。専門に統計を取っている人しかそれを実感することはできない。しかし統計を取っている人でも、まだ悲惨な現実を目の当たりにすれば、素直に喜ぶことができないだろう。

どれだけ精緻に統計を取ったところで、ときに一枚の写真や、Youtubeの動画によって人間の感情は大きく揺さぶられる。これも決して人間として間違ってはいない。しかし社会全体としてこれに過剰反応するのはあまり建設的ではない。

災害はその典型である。地震、洪水、火山噴火などの天災は一時期非常に大きな注目を集める。しかしその影響はせいぜい数ヶ月である。程度にもよるが、数十人、数百人が亡くなる(東日本大震災は例外)。しかしこれも貧困や飢餓によって死ぬ人に比べれば遥かに少ない。そしてそれが報道に乗ることも少ない。

レベルごとの災害対策の被害者

そして災害によって亡くなるのはほとんどが貧困国である。実際に先進国で亡くなる数は少ない。しかし先進国はもっともっと災害対策に金を注ぎ込むべきだと考える。しかし稀にしか起こらない災害対策に大量の国費を使うのは極めてコストパフォーマンスが悪い。

4.我々がすべきこと

今私たちは何をすべきだろうか?募金をして途上国にお金をばらまくことか?抗議活動を行い、政治を動かすべきだろうか?

それ以前にまず世界を知ることである。世界は分断されていない。世界は良い方向に進んでいる。着実に進歩する点を認めるべきである。プロパカンダに惑わされない。これらは実際には簡単ではない。

統計に基づいて世界を正しく知り、リスクを正しく評価し、予想外の天変地異にはある種の諦めも必要かもしれない。もし隕石が地球に落ちてきたら、人間にはどうすることもできない。そしてそこまで考えても意味がない。

できることを確実にやる。間違った情報に惑わされない。

この本を読んで、ぜひその視点を学んでいただきたい。

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