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霧島はるか
2022年3月8日 06:11
清世さんの企画『第二回絵から小説』に参加させていただきました。※注意※この作品は過激な性的・暴力的描写を含みます。また、非常に不快かつ残虐な描写が存在します。そういった描写が苦手な方はご注意、またはご遠慮ください。「わが心狂ひ得ぬこそ悲しけれ狂へと責むる鞭をながめて」夢野久作 『猟奇歌』より 1磯の香りにまじる、硫黄のような刺激を伴ったきつい香りが鼻をつく。強力な流れが川面
2024年4月2日 01:00
「あなたへの好きをとっておくことなんて、できないから」涙香(るいか)はそういって、寂しそうに笑った。鼻をつく春の風は、甘ったるくて切なくて。桜流しで湿ったアスファルト。遠くから聞こえる、電車の音。逃げ出したいと切に願っていたこの町が、今日はなんだか少しだけ、愛おしく感じた。「私が好きなもの先に食べるタイプだって、糸雨(しう)は知ってるでしょ?」地面を弄ぶ、涙香の白茶けたコンバース
2021年4月29日 21:00
「東京」という連作短歌を三部作に分けて投稿した。この連作は物語形式になっていたのだけれど、主人公にはあまり救いのないエンディングを迎えさせてしまった。昨日三作目を投稿した際、コメント欄にテラダスオウさんがこの連作に対して素敵な短歌を送ってくださった。 明けがたのセットリストを編集すあのこも野良も陽にあいされる 上記がその短歌なのだけれど、この短歌のおかげでどうしようもないどん底にいた主人公
2021年8月15日 23:45
こちらの作品は、清世@会いに行く画家様の企画「絵から小説」に参加しています。もう10年以上も前の話なんだけどね。私昔から色々あって、高校生の頃にはもう人とか人生に興味っていうか、愛着っていうのか、そういうのがまったくなくなってたの。生きるのが嫌で仕方なかったけど、死ぬのも嫌。そんなだから何してても中途半端で味気なくてね。ほら、手首のこの薄い傷跡。いっぱいあるでしょ?これはあの頃に自分でやっ
2021年8月13日 19:34
こちらの作品は、清世@会いに行く画家様の企画「絵から小説」に参加しております。私の輪郭は酷く曖昧でつかみどころがない。だから常に他人の輪郭と混ざり合って、うっかりすると完全に溶け合ってしまいそうで。そうなったらいよいよ私という存在はこの世から消えてしまうと思うから、だからなんとか踏ん張って私らしさにしがみつこうと思ってみるけど、私らしさなんてそもそも持ち合わせてないようで。でもそんなこと認めて
2021年5月10日 11:38
切りあった手首から溢れ出したのは、それまで味わったことのない優しさだった。僕は二人の傷口から溢れる優しさを見つめながら、それまで自分を取り囲んでいた張り詰めた空気が、柔らかみのあるものに変わっていくのを感じていた。それは決して僕に気を許そうとはしなかったのに、今は温かく僕を包み込んでいる。ふと彼女の顔を見ると、僕には一度も見せたことのない、とても満たされた表情をしていた。彼女はまるで、子宮の中
2021年4月12日 10:23
眼下に広がる無数の日常は、僕のことなんか気にもとめずに、今日も勝手に時計の針を進めているわけで。僕は僕で、こうでもしないと自分のちんけな命をここに留めておく気にもなれず、今日も気づけばこうして縁に立っている。「飛ばないの?」背後から前触れなく発せられた言葉に、飛び上がらんばかりに驚き、危うくバランスを崩しかけた。とたん、下腹部の内側が締め付けられ、内臓だけがふわっと外に放り出されたようなかん