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青の炎【ぐすたふ】のシネマ徒然草子.Chapter11

今日は、懐かしい邦画から。

この映画は公開当初、友達と見に行った映画だったと記憶していますが、R-15指定だったのか…。
誰だ、これを見に行こうと言い出したのは…ナイスチョイスだよ!

その後の人生でいい映画だったと紹介することも何度かあったこの作品。
とても思い出深いので、おセンチな気持ちで、さあ、いきます〜。

※記事の中にはネタバレも含まれますので、これから映画を見ようと思っている方は作品概要以降、ご自身の判断で読んでいただけますと幸いです


1.作品概要

 題:青の炎
 監督: 蜷川幸雄
 出演: 二宮和也、松浦亜弥、鈴木杏、秋吉久美子他  
 制作国、日本 公開年:2003年

 ※画像はNetflixより、お借りいたしました

 ストーリー概要:
 離婚して疎遠となっていた義理の父が、なぜか突然戻ってきた。
 勝手に家に居ついた傍若無人なその男のせいで、平穏だった生活がどんどんと狂っていく。
 高校生の秀一は、母と妹を守るため、義理の父:曾根を殺すことを計画する。
 完全犯罪の計画を練り上げ、実行に移す秀一であったが、予期せぬ事態が秀一を襲い、彼はどんどんと追い詰められていく。


2.ぐすたふの「ここを見て!」

 今回ピックアップしたシーンは、映画のタイトルでもある「青の炎」が灯った瞬間。

 曾根によって母も妹も苦しめられ、家の中がどんどんとおかしくなっていく。
 そんななか、何もできない無力な自分に絶望し涙する秀一を、テレビから流れ出す青白い光が照らし出す。

 青白い光はチェレンコフ光だ、とテレビのナレーションは説明する。 
 また、次のように説明する。
 “水などの透明な物質中をエネルギーの高い電気を帯びた粒子が高速で通過する際に発生するもので、使用済み燃料や原子炉の炉心など、非常に強い放射線を出す物質の周辺で見られることが多い。
 放射線というと怖いイメージをもたれがちだが、自然界にも放射線を出す物質があり、人間の身体からも…。”

 ナレーションが流れるなか、秀一の瞳に映る青い光。
 秀一の心に「曾根を殺す」という「青の炎」が灯った瞬間でした。
 彼の中に渦巻く強い強い怒りが、ついに「青の炎」となって放射し始めることを予兆させるワンシーン。

 映画館で見た当時はこの表現に気づかなかったのですが、静かに燃え上がった決意の炎を、とても美しく知的に表現したシーンだと感じました。


3.ぐすたふのひとりごと

俳優として高い評価を得ている二宮和也さんが主演を務めるこの作品。
ひとりごとまでに書かせてもらうと、彼は「セリフがない方が多くを語れる」俳優さんだなあ、と感じています。

個人的にも嵐が好きなので、その影響もあるのかもしれないのですが、彼がセリフを発すると「あ、ニノが演技している…」と急に現実に戻るようなことが結構あるのです(あくまで個人的な意見です)。

なので、彼が出演している映画では、どちらかというとセリフがないシーンのほうが、映画に入り込めるかつ彼の表現力に感動することが多いです。
セリフの言い回しより、表情・雰囲気・仕草の演技の方が、私にはとても響くのです。

と勝手なご意見を惜しげもなくさっそく披露してしまいました。

もう一つ、この映画関連でひとりごとを言わせてもらうと、このお話の原作者である貴志祐介さんの作品が好きで、映画と本を色々と見ています。
貴志さんの講演会に一度行ったことがあるのですが、なんとまあ、穏やかな雰囲気の方であること。
こんな穏やかな方が、あのサイコパスな教師や恐怖のファンタジー世界を生み出しているのかと思うと、「人は見た目によらない」を勝手ながら今までで一番強く実感した時間でした。(笑)

そういう私も、見た目によらずグロテスクな作品が好きなんだね、と引かれることがあるので、お互い様ですね!

そんな貴志さんの作品を通していつも思うのは、「人間が一番怖いな」ということです。
お化けや自然災害は私たちの理解を超えた存在だからこそ怖いのはよくわかるのだけれど、「人間」は自分自身でもあり、一番身近に存在し、常に接している生き物なはずなのに、いつまでたっても理解しきれず、想像を超えてくる。
相手は本当は何を考えているのか、何を求めているのかがわからない。

人間が一番怖い。

そういうことに気づかせてくれるから、貴志さんの作品は素晴らしいと思うのです。

今回のひとりごとは、映画から派生してあちらこちらに飛んだ内容になってしまいましたが、それもまた一興と思っていただけますと幸いです。

ちなみに「チェレンコフ光」を発見したパーヴェル・チェレンコフと、発生原理を解明したイリヤ・フランクとイゴール・タムは、1958年のノーベル物理学賞を受けたそう。
まだまだ知らないことがいっぱいだ。