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奇跡だなんて簡単に言わないでくれ

命と向き合う人々のノンフィクションを読むのにはいつも勇気がいる。

剥き出しの生命と対峙する人の姿に私の心は耐えられるだろうか、と考えてしまい結局手に取るまでにかなりの時間を要する。

ただ今回は、文庫のカバーに書いてあるあらすじにやられ、「はじめに」を読んで完全に止まらなくなってしまった。

ということで、今回は全編嫁の独り言です。書評なんてかっこいいものではなく、おもしろかったよ、これはいいよ、という勝手なおすすめです。

片野ゆか『ゼロ! 熊本市動物愛護センター10年の闘い』(集英社文庫)

※上記リンクは単行本発売時のもので、文庫のリンクは文末にあります。※

熊本市動物管理センターが、保護動物の「殺処分ゼロ」を目標に掲げてからの10年を追う、闘う「公務員」のリアルストーリー。

もうこの概要にぐっときたらもう、読まないという選択肢はない。

動物が好きな人はもちろん、あまり得意ではない人も、今まで興味のなかった人も偶然手に取った人も、きっとこの本のどこかで心に引っかかるものがあるはずだ。

特別な人ではない、公務員である職員たちの奮闘ぶりに。あるいは「殺処分ゼロ」という不可能と言われた目標を堂々と掲げる勇気に。何度ピンチが訪れても諦めないその芯の強さに。そして積み重ねた努力と苦労が実を結ぶ喜びに。

「とにかく動物を殺したくない」

彼らを動かしたのはその素直な感情だ。その強い思いが多くの人を引き寄せ、困難なことも実現させる。「人を変えるのは人だ」という言葉が本書にあったが、「命を救いたい」という自然な感情は大きな原動力になることを本書は証明してくれた。

動物の描写もとても活きいきとしていて、保護環境が改善されてからの犬たちの様子は、想像するだけでもとても気持ちよさそうだ。それは動物に関するノンフィクションを多数出版してきた著者だからこそ。

「これは奇跡の物語ではない」と著者は言う。作家の森絵都も解説で「奇跡よりも尊い努力の蓄積がある」と書いている。不可能といわれたことを実現させるとつい奇跡が起きたと言いたくなるが、その裏には当事者でなければわからない思いや語られていない出来事がたくさんあるに違いない。

彼らの成し遂げたことは、絶え間ない努力のたまものであり、試行錯誤を繰り返した結果に辿り着いた事実なのだ。それを「奇跡」だと賞賛するのもいいが、そこに辿り着くまでの彼らの奮闘、いや激闘を私たちは目を凝らして見るべきだ。

◇◇◇

…うーん、なんとなく勢いで書いてみましたがなんだかこそばゆいですね。

まあ伝えたいことは「面白いから読んでみて!」の一言の尽きるんですが、それを伝えるのってとても難しい!まったくどうしたらいいんだ。

とりあえず、次回からは再び夫とのくだらない会話をお送りしようかと思います。では。


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