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2024年11月の記事一覧

庵野秀明による「安野モヨコ作品への批評」が的確すぎる。

庵野秀明による「安野モヨコ作品への批評」が的確すぎる。

「後ハッピーマニア」を5巻まで読んで、「監督不行届」に掲載された庵野秀明のインタビューの中の「安野モヨコ作品への批評」を思い出した。

「後ハッピーマニア」を読んで、自分もこの作品の「現実に対処して他人の中に生きているところ」が好きで凄いと思っているんだ、と気付いた。

 状況(現実)をどう考えどう反応をするか、その反応によって相手がどう反応してどう状況が変化するか、その状況にまた自分が置かれてど

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「【推しの子】をどう読んだか」をもう一度整理しながら、この物語のどこが好きかを語りたい。

「【推しの子】をどう読んだか」をもう一度整理しながら、この物語のどこが好きかを語りたい。

 ↑で「自分が【推しの子】をどう読んだか」を書いたが、もう少し整理しておきたい。

◆【推しの子】は「ご都合主義の物語」である。

 最初に【推しの子】を読んだ時から、これは「吾郎が必要としたから存在する、吾郎の内面世界に強烈にリンクしたストーリーだろう」と感じていた。

 作内現実が吾郎の妄想でてきている、というわけではなく、「読み手である自分たちが観測しているストーリーは、吾郎が必要としている

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「【推しの子】」とは何だったのか。

「【推しの子】」とは何だったのか。

 最終回を読んだ。

と書いてあるので、一読者である自分にとって【推しの子】とは何だったのか?を語りたい。

◆なぜ吾郎はアクアに生まれ変わったのか?

 自分は【推しの子】で重要なのは、この問いに対する答えだと思う。
 この問いにどう答えるか?で【推しの子】の読み方はかなり変わる。

「なぜ吾郎はアクアに生まれ変わったか?」

「生まれ変わりというズルを神(作品)が許した理由」それは「使命を見つ

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「公正世界仮説」に反する物語が好き。

「公正世界仮説」に反する物語が好き。

 先日、高橋ツトム「ブルーヘヴン」が好きだという記事を書いた。
 上の記事には入れられなかった好きな理由のひとつが「『公正世界仮説』に反する原理が働いているから」だ。

 盛龍たちが乗る漂流船を見つけた時、ブルーヘヴンの社長と船長は「救助すべきか否か」で揉める。

 社運を賭けた豪華クルーズ船の航行中に、漂流船の救助などしていられない、身元不明の人間を乗せるわけにもいかない、人道など知ったことでは

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串刺し公ヴラドを主人公にした「ヴラド・ドラクラ」が、3巻から急激に面白くなるのは何故か。

串刺し公ヴラドを主人公にした「ヴラド・ドラクラ」が、3巻から急激に面白くなるのは何故か。

 ドラキュラのモデルにもなった「串刺し公ヴラド」を主人公にした、「ヴラド・ドラクラ」を既刊7巻まで読んだ。
 実は三巻の途中までそこまで面白いとは思っていなかった。

「ヴラド・ドラクラ」は15世紀に黒海東岸にあったワラキア公国が舞台だ。
 ワラキアはハンガリー王国とオスマン帝国という二つの強国に挟まれているため、この二国、どちらかの後ろ盾を得なければ公座につくことができない。
 政情が不安定で、

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「信頼のできない語り手」の支配と検閲をかいくぐって物語を読む。

「信頼のできない語り手」の支配と検閲をかいくぐって物語を読む。

 少し前に読んだこの話が面白かった。
 自分は「信頼のできない語り手」&独裁国家(※)として読んだが、なぜそう思ったか、どこでそう感じたかについて話したい。

※造語。詳しくは過去記事を参照。

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