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魔法の扉と不思議な冒険(前編)

あらすじ

極度の人見知りで孤独を感じる主人公。どんぐりを追いかけて踏み入れた幻想的な扉の向こうには、不思議な場所。彼の前に現れた、翼を持つ猫に導かれるとそこには、夢のような世界が広がっていた。初めて感じる感情に少しずつ変わっていく彼。旅を通じて、自信を手に入れつつある彼の最後は?彼の心と世界が変わり始める、心躍る冒険が始まる。

第1章:どんぐりを追いかけた

「雨が降り出したね」って僕がお母さんに言ったら「また変なことばっか言って」ってお母さんはまた知らない人たちと話してる。僕は手を広げて確認するんだけど、やっぱり雨が降ったり止んだりしてるんだ。空を見上げても雲一つなくてお母さんたちも濡れていないんだよね。

なんでだろってあたりを見渡していたらどんぐりが、まるでヒマワリの種を植えるように落ちている。
僕は降っている雨からも逃げたくて、そのどんぐりを追いかけた。後ろではお母さんが話に夢中になっている。
僕はおかまいなしにどんぐりを拾い続けた。

どれくらい進んだのかな、全然知らない場所にやってきた。僕の両の掌では収まらないくらいのどんぐりになっていた。
そろそろ引き返そうと思ったら、小さなリスが大きな木の影からこっちを見ていた。どんぐりが欲しいんだと思った僕はどんぐりを全部渡してあげた。リスは警戒しながらもどんぐりをどんどんほっぺに詰めて、あんなにあったどんぐりがこんな小さなリスのお口の中に全部入るなんて、まるでマジックでも見ているような気持になった。

リスはこっちを見つめて大きな瞬きをしてどこかへ消えていった。なんとなく僕もついていった。どんな所に住んでるのかなーって、どこに帰るのかなーって、単純に見て見たかったから。リスは大きなしっぽをふわふわ揺らしながら走っていった。僕は気づかれないようにそっとついていった。
リスはキョロキョロしてから立派な木の中に入っていく。僕は慌てて木に近寄るとそこには大きな扉があった。

人見知りで自分から動くことができない僕はここで諦めた。どこに繋がるか分からない扉を開ける勇気はなかった。だけどお母さんのもとに帰るには少し寂しさを感じる。相変わらず雨は降ったり止んだりして体をジメジメさせていった。
僕は木の影から、ぼーっと扉を見つめながら座っていた。見ているだけでも幻想的な扉で、周りをよく見渡せば見たことない世界観に、ワクワクは膨らむばかりだった。もし僕に好奇心が勝っていれば、僕はあの扉をなんの躊躇もなく開けることができたんだろうなと、また空想の世界をイメージしてはやめてを繰り返していた。

そんな空想にも飽き飽きしたころ、右方向から猫がやってきた。猫なのかと疑いたくなるほどの美しい姿には翼が生え、こちらに気づいて近寄ってきた。とても眠たくなるような柔らかく優しい声色で「中で遊んでいく?」と声をかけてくれた。僕は嬉しくなって立ち上がりうんって答えた。
猫に心を開いた僕は不思議な世界へと足を踏み入れる。
ドンドンと響く、冒険の鼓動と一緒に。



あとがき
この物語は二部作です
まずは前編の扉までの世界を物語にしました。
この物語は、人見知りで人の顔色ばかり窺うような内向的で引っ込み思案な彼の成長物語です。

ここから下はこの物語の解説です。
彼とはどういう子なのか。出てくるメタファーの意味とは。
それらを私なりに、私の感性で解説しています。
SAIの頭の中を綴っているだけです。
興味のある方のみお入りください(`・ω・´)ゞ
物語りを読むだけでも十分楽しめます♡
いいねしてもらえると非常に喜びます。
では、後編をお楽しみ(*´з`)

では解説をどうぞ↓
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物語りの解説

「雨が降り出したね」って僕がお母さんに言ったら「また変なことばっか言って」ってお母さんはまた知らない人たちと話してる。僕は手を広げて確認するんだけど、やっぱり雨が降ったり止んだりしてるんだ。空を見上げても雲一つなくてお母さんたちも濡れていないんだよね。

彼はまだお母さんがそばにいるくらいの年齢です。彼は極度の人見知りで、一人で行動することができません。いつも一人で過ごすため、頭の中ではさまざまなことを想像して遊んでいる子供でした。「雨が降り出したね」という彼に、お母さんは「また変なことばっかり言って」と冷たく返答します。お母さんの反応は、彼の内面世界や感受性を理解できず、現実的な視点でしか物事を見ていないことを示しています。他の人たちとの会話に夢中で、彼の言葉に耳を傾ける余裕がないようでした。実際、お母さんは日々の忙しさに追われ、自分自身の感情や内面にも向き合う時間がなく、彼の感じる「雨」に気づけないでいるのです。

このシーンから、彼が自分の感情や内面世界を他人と共有することに難しさを感じていることがわかります。彼が「雨が降り出した」と感じるのは、心の中の不安や葛藤が具現化したものであり、実際には降っていない雨です。彼の手に降る雨は、彼にしか感じられず、それが彼の孤独感や疎外感を象徴しています。

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