「秋麗 東京湾臨海署安積班」(今野敏著)を読んだ話
北海道在住のコンサポ登山社労士のkakbockです。
先日、今野敏氏の著書「秋麗 東京湾臨海署安積班」を読みました。
この「秋麗」の感想について書き留めたいと思います。
(1)今野敏氏の作品
今野敏氏は、北海道三笠市出身の作家で、警察小説をたくさん発表されていて、シリーズ物もたくさん書かれている方です。
今野氏の警察小説では、他の作家の方と同様に刑事が主人公のものが多いですが、中には、「隠蔽捜査シリーズ」という、総務課長だったり、署長が主人公のものもあります。
(2)安積班シリーズ
今回読んだ、「秋麗 東京湾臨海署安積班」は、たくさんある今野氏の警察小説のシリーズものの一つで、安積班シリーズの最新作です。
安積班シリーズは、『台場をはじめとする湾岸地域を管轄する警視庁東京湾臨海警察署を舞台に、安積警部補率いる刑事課強行犯係安積班の活躍を描く。なお、『蓬莱』から『神南署安積班』までは、原宿の神南署を舞台にしている。(Wikipediaより)』というものです。
(3)キャラクター
今野氏のシリーズものは、主人公は勿論ですが、その他の登場人物がとても魅力的です。
安積班シリーズも、主人公の安積剛志(警視庁東京湾臨海署刑事課強行犯第一係・係長(警部補))と、その部下である刑事の村雨、須田、水野、黒木などがいて、それぞれが、キャラクターが立っているというか、とても特徴があり、すごく魅力的で愛らしいんです。
そして、係長である安積刑事とその係の部下である刑事たちをまとめて、「班」と呼ぶため、安積係長を「班長」とする「安積班」が通称となっています。
(4)須田三郎
これらのキャラクターの中で、私は、特に須田刑事が好きです。
須田三郎は、安積の部下で刑事課強行犯第一係の刑事です。
刑事としては太り過ぎなため、彼をよく知らない人からは頭の回転も鈍いという印象を持たれていますが、実際には鋭い洞察力と推理力を持ち、頭の回転も速いです。
須田の直感力が事件解決の一つの重要なキーとなることが多々あります。
いわゆる「刑事」という感じではなく、バリバリ仕事ができるという感じでもなく、むしろ目立たない扱いなのですが、安積は須田の実力を認めておりすごく頼りにしています。
その関係性も好きですし、須田のちょっとした気づきがあって、それを拾う安積がいて、そのことで犯罪捜査が大きく進むってことが多々あります。
私は、須田は、今野氏の別作品である任侠シリーズにおける市村徹と似ていると思っています。
市村徹は、任侠団体「阿岐本組」の組員なのですが、いわゆる「暴力団員」という感じではありません。
ただ、パソコンでの情報収集が得意なため、色々な問題解決の際に、すごく重要な役割を担います。
それほど目立った活躍ではないですが、非常に重要な人物だという点で、須田刑事と市村組員は似ていると思っており、好きなキャラクターである二人です。
(5)速水直樹
それと、この作品で好きなキャラクターとして、速水という人物がいます。
速水は、速水小隊長と呼ばれており、所属は警視庁交通機動隊で安積とは警察学校の同期のため、タメ口です。
いつも自信満々で堂々としており、安積を茶化すことが多いのですが、安積のことを大好きな感じがにじみ出ており、いつも安積を助けてくれます。
安積はいつも自信満々の速水をうらやましいと思っていますが、速水も安積を優秀な刑事と認めており、とてもいい関係ということが描かれています。
また、速水は喧嘩も強く、過去の作品では、暴走族のリーダーを制圧するみたいなこともありました。
(6)秋麗(若干ネタバレあり)
そして、今回読んだ「秋麗」です。
青海三丁目付近の海上で遺体が発見されます。
この遺体は、特殊詐欺に関わっていた戸沢守雄という七十代の男男性でした。
遺体の状態から、殺人事件として捜査本部が設置され、安積班もその構成員となります。
特殊詐欺で戸沢を逮捕したのが、葛飾署の刑事たちで、その中心だった広田係長の協力を得て、捜査が進んでいきます。
この広田のしゃべり方が非常に特徴的です。
ドラマとかであればまた違うと思いますが、文字で読むととてもひっかかるというか、気になりました(私の感想です・・)。
平行して、安積の部下の水野刑事に、安積たちと顔見知りの新聞記者の山口友紀子から、上司によるセクハラの相談がありました。
捜査が進むと、事件の関係者として、半グレの久志木鉄也や畑中力也が浮上します。
半グレとは、最近の紺今野作品に頻繁に登場するのですが、産経ニュースのサイトによると、
『半グレとは、暴力団に所属せずに常習的に犯罪を行う集団である。 「グレ」は「ぐれている」「愚連隊(ぐれんたい)」「グレーゾーン」などを意味する。 暴力団が組長を頂点としたピラミッド型組織であるのに対し、半グレは指揮命令系統が不明確で犯罪ごとに離合集散を繰り返す流動型組織である』
とされています。
捜査が進む中で、須田の一言や発見により、大きく捜査が進展することがあったり、安積が速水を必要とするタイミングで速水が当番で、すぐに速水の協力を得られたり、私の好きな人物が活躍してくれます。
最後は、戸沢の釣り仲間の猪狩修造と和久田紀道たちの切ないコメントがあったり、新聞記者の山口とその上司の高岡の話が回収され、物語は終了します。
安積班シリーズはそれほど大きなどんでん返しがない作品が多いイメージなのですが、この「秋麗」も結構素直に物語が進んでいくため、落ち着いて読むことができました。
私が今野作品を好きなのは、はずれがないという安心感と、淡々と楽しく読み進めることができるということです。
違和感とか、首をかしげるということがなく、また、文体文調が私に合ってるというか、とにかく読みやすいんです。
他のシリーズも楽しみですが、安積班シリーズの次回作も早く読みたくなりました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。