騙し騙され収支が合う
この世には
二種類の人間が
あるようだ
騙す人と
騙される人と──
騙される人には
なりたくない
けれども
騙す人になるのも
それはそれで
忍びない
☆☆☆
こんにちは!
フジミドリです♡
【癒や詩絵物語】
今回は横行する詐欺事件を扱いました。
道術家の私が成り切って感じたまま詩と物語を編み、朔川揺さんの柴絵に添えました。
創作過程などは、別サイトへ揺さんとお喋りしつつ公開しております。
では早速──
☆☆☆
彼は投資詐欺に遭った。
長年勤めあげた会社を定年退職し、再雇用となったものの、先行きが不安だったのだ。
年金だけでは心許ない。七十過ぎて仕事があるだろうか。健診数値だって芳しくない。
円安からの物価高騰。政情混乱と災害勃発。人々は諦めきってスマホ画面へ逃避する。
彼もまた、だらだらと動画を検索し、観る前よりも迷ってしまう。希望は湧いてこない。
そして、朦朧とした心理状態のまま、ネット記事からラインへと誘い込まれた。
初めは怪しく感じて警戒するものの、個別に交流するうち取り込まれていった。
巧妙に作られた別サイトの口座へ振り込んでしまう。一度振り込めば後は惰性だった。
いつの間にか猜疑心も緩む。詐欺師の言説で脳内が埋まる。自分で自分を騙し始める。
おかしいと気づいた時は手遅れ。慌てて弁護士事務所に依頼したが取り戻せなかった。
なぜこんな目に遭う。どうして騙されたか。
やり切れない──
☆☆☆
『もしもオレが騙されたら、騙されるわけがねえって甘く見たからだろうな。自分の観覚以外を信じたことになる』
『マスコミの煽る事件を見て、許せねえって義侠心が浮かんだかもよ。そういう想念が、詐欺師を引き寄せるんだもんな』
『自虐かもしれない。これまでの人生でやらかしたあれこれ、オレが自分を許せねえから罰を与えた。なんてこともありそうだ』
『前世でオレが騙す側だった。相手はオレを恨んで死んだりしてさ。だとしたら、今生で復讐されているってわけか。やれやれ』
☆☆☆
思ったことが
叶うというなら
何もかも全て
わたしが思ったこと
なのだろうか
騙されたわたし
悔しい悔しい悔しい
腹立ちが収まらない
こんな不幸は望んでない
けれどふと浮かぶ
もしも前世のわたしが
誰かを騙していたならば
悔しくて腹立たしくて
憎くて恨んで恨んで
そんな辛い思いを
誰かにさせていたならば
やっぱり思いが
叶ったことになる
もしもそうならこれで終わり
収支は合った
これで貸し借りナシにしよう
☆☆☆
お読み頂きありがとうございます!