手話を覚えたココが
動物はどこまで
喜び悲しみを
理解できるだろう
とある心理学者が
ゴリラに手話を教えた
思いのほか
覚えはよくて
嘘や冗談まで伝える
ある日──
ゴリラのココは
可愛がった子猫が
車に轢かれて死んだと
知らされた
しばらく黙って
彼女は指を動かす
─話したくない─
それから
子猫への愛と
失った悲しみを訴え始め
大声をあげて泣いた
☆☆☆
こんにちは!
フジミドリです♡
【癒や詩絵物語】
道術家である私が、見聞きした現象から感じたまま詩と物語を編み、朔川揺さんの柴絵に添えました。
創作の背景など、別サイトへ揺さんとお喋りしつつ公開しております。
では早速──
☆☆☆
手話を覚えたゴリラは、仲良く遊んだ子猫が死ぬと悲しみにくれたのである。
しかし、批判もあった。飼育係の心理学者にだけ通じる誤魔化しではないかと。
子猫の死に嘆き悲しむココの姿は、別々の映像を繋ぎ合わせた贋作だと糾弾した。
なぜか。
受け入れたくないのだ。ゴリラが死の概念を理解して悲しみまで表現するなんて──
あなたはどちらだろう?
手話で悲しみを露わにするゴリラを受け入れたいか。飼育係の感情移入と疑いたいか。
人は、自分の見たいものだけ見ようとする。聞きたいことしか聞かないものだ。
安心できるから。
けれどその安心は、死後の世界で木っ端微塵に打ち砕かれてしまう。
なぜなら──
もう、見たいものだけ見る目はない。聞きたくない時に指で塞ぐ耳もないのである。
☆☆☆
『種族の違うゴリラと子猫がね。なのにオレたち人間は、同族で殺し合いまでやってる。なんで仲良くできないんだろう』
『まぁしゃあねえわ。ここは前世の業を吐き出す場所だよ。誰もが迷って悩んで苦しむ。謂わばレストランの調理場なのさ』
『笑い合って美味しく食べるのは、死んだ後の世界だからね。よくまぁ、ここまで生きてきたもんだ。オレもあと少しだぜ』
『このままでいいんだよ。これしかできねえじゃん。ああそれにしても……先に逝った人は呼べば応えてくれる。泣けるぜ』
☆☆☆
時は流れ──
手話を覚えた
ゴリラのココが
今日はからからと
笑っている
新しい友の猫たちと
仲良く遊びつつ
子猫を忘れた
ことはない
霊魂の世界へ戻った
大切な子猫は
いつでも傍にいてくれる
ココの心が透き通り
霊魂の自分であるから
いつでも笑い合えるのだ
☆☆☆
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