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映画感想文「不思議の国シドニ」フランスの作家が桜の季節の日本を訪れ自分を再確認するお話

不思議な作品だった。

でも上映館少ないとはいえ8割がた埋まった座席に、一定のニーズあることを理解する。

フランスの女優イザベル・ユペール(70代だが軽くふたまわりは若く見える)が、夫を早くに亡くした作家を演じる。

内省的で孤独を好む彼女。そして知的。いわゆる典型的なフランス人だよね、って感じ。

ある日、本の出版に合わせた行脚で日本にやってくる。それをアテンドする出版社の編集者溝口が、伊原剛志である。

東京、京都、奈良、直島、を旅するふたり。仕事とはいえ連れ立ってお互いを吐露し合ううちに、2人の間に何かが芽生えていく。

大人が恋に落ちるのは確かにこんな感じなのかもしれない。肉感的というより頭で恋する感じ。でもなんだか理屈っぽくて唐突で、嘘くさくもある。

そこに、こそばゆい居心地の悪さを感じる。

しかし、そんなことはどうでも良い。

特筆すべきは桜の季節を狙った日本の風景だ。本当にしみじみと美しく、なぜか泣きそうになる。外国人の撮影した日本の風景の美しさに息を呑む。スクリーンを前に、そんな国に生まれたことを誇りに思う。

そしてフランス人からみた日本の描き方。ほほう、そうなんだねと新鮮な驚きを覚える。彼らからみたら、日本は生と死が近い国。神秘的な国。なのだ。

これもまた、なんだかこそばゆい。

最後に、イザベル・ユペールの知的で女性らしいファッション。たった数日の旅に頻繁に着替える。どれも素敵なファッションだ。そこにファッションショー的な楽しさもある。

要するに、これは外国人から見た日本を体感し、日本の美しさを再確認する作品である。そして歳を重ねても女であるフランス人女性、イザベル・ユペールを堪能する物語である。

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