映画感想文「対外秘」韓国映画。情報を握る者が権力を掴み、権力を持つ者が情報を握る
政治家にはぜったいなれないわー。
こういう作品を観た時、しみじみと思う。
うまく立ち回れない。いや、そもそも勝つとか負けるとか、出し抜くとか、そんな気迫は持ち合わせない。かつ、それを凌駕する頭脳もない。自分がつくづく平凡な人間だと自覚する。
韓国発。政治家、ヤクザ、商売人などなどが絡む、騙し騙されのサスペンス劇である。
舞台は海辺の街、釜山。政治家のヘウンは浮き足立っていた。何しろ、やっとのことで党の公認をもらい、国会議員選挙に出馬するのだ。後ろ盾にはヘウンが散々尽くしてきた政界のフィクサーのスンテ。盤石のはず、だった。
しかし、思わぬことでその当てが外れ、梯子を外される。怒りに燃えた彼が再び国会議員を目指し、奮闘する。あらゆる手を使って。という物語。
妻には尻に敷かれ、人のいいおじさん的な風貌のヘウン。登場人物のなかで1人だけいい人風情なもんで、思わず応援したくなる。
それでも、だ。
ともかく権力を得たい。いままで我慢したんだから俺にはその権利がある、当然だ。というヘウンの態度には、全く共感できなかった。
たぶん(というのはこの件で誰かと会話してみたりしたことないので、誰でもそうなのか平均値が分からないが)、私は権力闘争が最も嫌いだ。この映画まで行かずとも、日常生活でも沢山いる、あらゆる手を使い、人をねじ伏せようとする人が苦手なのだ。
登場人物の誰かに共感できるポイントがないと辛い。なんだかなー、の気持ちになる。
大抵は何かしら共感ポイント見つかるが、本作は珍しく見つけられず、居心地悪かった。
映画を観ることは自分にとって、誰かと気持ちを分かち合うってことなんだなと改めて悟る。
しかし、ひとそれぞれ、である。
レビューも高い本作。騙し騙されが楽しめる人なら充分に堪能できる作品である。
ちなみにタイトル「対外秘」は、機密情報のこと。どこの世界も情報を握る者が権力を持ち、権力を持つ者が情報を握るのである。