黎明の蜜蜂(第13話)
涼子の机上の電話が鳴ったのは、他の部員がほとんど食事に出かけた昼過ぎだった。行内からだ。左手を伸ばして受話器を取る。
「調査部。高島涼子です」
「ああ、高島君。大澤です」
大澤? 頭取? ゆうゆう銀行に出向した時も、それ以降も直接話をする機会はなかったから、声で判別できない。頭取ですかと電話口で声に出すのを躊躇った。机2つ隣に同僚がいる。
「ちょっと八階の僕の部屋に来てくれませんか」
八階は役員室と応接室と秘書室しかないから声の主は頭取に違いない。それにしても秘書に掛けさ