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黎明の蜜蜂

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経済や社会や政治や思想はそれぞれ独立してあるのではない、互いに相互作用し合って強靭な一つの動力となる。その動力は地球の資源の効率的な収奪を進め、人類の爆発的繁栄を可能にしたが、今…
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2024年6月の記事一覧

黎明の蜜蜂(第20話)

前回の飲み会で環奈と健斗の「実験」話を聞いてから2週間後、午前9時10分前に結菜はゆうゆう銀…

芳松静恵
4か月前
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黎明の蜜蜂(第19話)

涼子は大阪環状線の天満駅を降りると駅前の比較的広い道を横断し、右に歩き出す。3分も歩くと…

芳松静恵
4か月前
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黎明の蜜蜂(第18話)

例の居酒屋の引き戸を開ける時、結菜はここに来るのは何回目だろうと思った。最初の日からまだ…

芳松静恵
4か月前
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黎明の蜜蜂(第16話)

支店に戻ったのは午後五時前だ。担当者を呼ぶ。 「例の不動産案件ね。うちは手を引くわよ」 …

芳松静恵
4か月前
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黎明の蜜蜂(第15話)

スナックの木のドアを開けると、奥のカウンター・チェアに涼子が座っているのが見えた。声を掛…

芳松静恵
4か月前
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黎明の蜜蜂(第14話)

いつものようにシャワーを浴びて髭を剃っている時に、スマホ・ニュースの着信音がした。 「M…

芳松静恵
4か月前
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黎明の蜜蜂(第13話)

涼子の机上の電話が鳴ったのは、他の部員がほとんど食事に出かけた昼過ぎだった。行内からだ。左手を伸ばして受話器を取る。 「調査部。高島涼子です」 「ああ、高島君。大澤です」 大澤? 頭取? ゆうゆう銀行に出向した時も、それ以降も直接話をする機会はなかったから、声で判別できない。頭取ですかと電話口で声に出すのを躊躇った。机2つ隣に同僚がいる。 「ちょっと八階の僕の部屋に来てくれませんか」 八階は役員室と応接室と秘書室しかないから声の主は頭取に違いない。それにしても秘書に掛けさ

黎明の蜜蜂(第12話)

その居酒屋談義の一週間後に結菜は部長に呼ばれた。『ゆうゆう銀行再生案募集』で役員賞を取っ…

芳松静恵
4か月前
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黎明の蜜蜂(第11話)

もうすっかり慣れた手つきで表のガラス戸をガラガラと引くと、店員たちの聞きなれた声に迎えら…

芳松静恵
4か月前
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黎明の蜜蜂(第10話)

月曜日の朝、結菜はいつもより早めにオフィスに着いたが、部次長以下、主だった人たちの姿はす…

芳松静恵
4か月前
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黎明の蜜蜂(第9話)

章太郎は玄関の鍵を開け、ドアノブをゆっくり回した。音をさせないようにそっとドアを開く。も…

芳松静恵
4か月前
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黎明の蜜蜂(第8話)

その上司とは日本にいる時も、バーゼルに来てからもほとんど話などしたことはない。職位ランク…

芳松静恵
4か月前
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黎明の蜜蜂(第7話)

章太郎は駅の近くのスナックでウイスキーのシングルを注文し、一口喉に送り込んだ。熱い液体が…

芳松静恵
4か月前
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黎明の蜜蜂(第6話)

あくる日、午前6時前、結菜は寝不足の頭をむりやり布団から持ち上げた。台所で手早く四人分の味噌汁を作り、卵を一個割入れて一人分をお椀に盛り、その間に電子レンジで温めたごはんと一緒に掻き込んだ。朝食の味噌汁はいつも結菜が家族分も作って置いておく。 大夢が家に戻ってから母はパートを辞めたが、大夢の為にしばしば夜中も起きなくてはならないため、朝は結菜が味噌汁を作る。そして父、母、大夢はそれぞれの時間帯で卵を割り入れて食べる習慣になっている。 バター付トーストにコーヒーやハムエッグ