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『ツバキ文具店』/読書感想文(2022上半期5冊その4)

2022年上半期に読んだ本の中で、好きだった本を5冊選んで、書いています。

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本日は4冊目。
小川糸『ツバキ文具店』

舞台設定も、登場する道具たちも、人物も、ストーリーもすべていい!!大好きが詰まった作品でした。

この本は、雨宮鳩子という女性が、
先代から引き継いだばかりの代書屋という仕事を通し、
依頼人や、鎌倉に住む個性豊かな友人との関わりを通し、
心を成長させ、置き去りにしてきた過去に向き合っていく物語です。


まず、描かれている鎌倉での生活がすごく好きです。
鎌倉の日本家屋で、ツバキ文具店という文具屋兼代書屋を営む鳩子。

鎌倉は土地柄、よく行く地域なのですが、
観光化も著しく、外からだけではそこにふつうの生活があるなんて想像できない。

けれど、この本からは、
そこで生活していないと感じられない空気感が、
本を開いた瞬間から立ち上がってきます。
しかも、夏から始まり、すべての季節を体感できるのも良い。

六月三十日は、毎年決まって八幡様での大祓が行われる。(中略)
新しいおはらひさんをもらうためである。
おはらひさんとは、よく鎌倉の家の玄関先にぶら下げてある、しめ縄の端と箸をくっつけたような円形の飾りのことだ。それを新しいものと替えられるのが、年二回の大祓の時だった。

小川糸『ツバキ文具店』夏

境内へ入ると紅白の花が咲いている。雛あられみたいでかわいらしい。目を閉じて息を吸い込むと、ふわりと甘い香りが体の奥に体の奥に流れ込んでくる。こんなに寒くても、春は一歩ずつ近づいているのだ。

小川糸『ツバキ文具店』冬


鎌倉に根付く、昔からある美しい文化に、
若い鳩子が、背伸びしすぎずに身を置いているおかげで、
現代の私たちも難しく考えず、その世界に浸ることができると思います。



そして、手紙の世界の奥深さを、
この本を読んで初めて目の当たりにしました。

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