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猫エッセイ

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猫についてのエッセイです。
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#猫の日

その猫は全部を生きて死んだので悲しいけれど苦しくはない

2年前の猫の日に亡くなった猫の話です。
苦しくない話だけど、苦手な方は読まないで。

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 以前、こんな短歌を作ったことがある。

《衰えた猫はやっぱり撮れなくてアラーキーにはなれそうもない》

 これまで何匹も猫を看取ってきたけれど、「穏やかな最後」なんて嘘だと思っていた。看取った猫はみな辛そうだった。その辛そうな猫に、何もしてあげられないことも辛いのだ。「死」とはそういうものだ、と思っ

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残された者になるのを前提に猫との日々を楽しんでいる

残された者になるのを前提に猫との日々を楽しんでいる

猫の日である。

昨年末にいただいた質問と、自分の回答を読み返しては、考えている。

<質問>
去年愛猫を亡くし、娘のたっての希望で保護猫を迎えました。今の猫もずっと居てくれるわけではないし、逝ってしまう頃は娘も家にいないでしょうし、乗り越えられる気がしません。乗り越えていくには時間しかないでしょうか?

<回答>
僕は「猫との時間は『幸せの前借り』で、借りていた分は看取ることでのみ返済で

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里親を探すつもりの猫の名は「1」 愛着がわかないように

※5年前に書いたエッセイです。

冬になると、甘ったるいものが食べたくなる。

思い返してみると、一昨年の冬はキャラメルばかり食べていたし、去年の冬は黒糖の飴ばかり食べていた。そして、今年は「しょうがミルクのど飴」を3日に一袋の割合で食べている。すごくおいしい、というわけではないのだけれど、止まらない。

9年前の冬、一匹の猫が我が家に来たきっかけも、甘いものだった。

その猫は、元々妻が勤務して

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猫からの手紙

猫からの手紙

見て見ないふりをしてたら死んでいた猫じゃなければ見なかったかな(連作「ネコノイル」より)

猫からの手紙が届いたのは、2006年9月2日土曜日の朝だった。

僕はまだベッドで起きるでも、眠るでもなくうだうだしていた。

先に起きて、なつめ(オス猫)を病院へ連れていったはずの妻が、数分で戻ってきた。(なつめには持病があり、週1回通院していた)

何事かと思い、玄関に行ってみる。

「どうしたの?」と

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