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8年間追いかけていた物語が終わる 「劇場版 Free!-the Final Stroke-」公開によせて
8年にわたり追いかけてきた物語が今日、終わりを迎えた。
休暇を取って観ようかと思っていたが、体調を崩して数日休んでしまったので、鑑賞は明日となった。
ずっと、追いかけてきた物語が終わる。
どう受け止めたらいいのかわからない。
どう終わるのかも、あまり想像ができない。
本作は、水泳に打ち込む青年たちの物語だ。
主人公は世界での戦いを経験し、王者の泳ぎに衝撃を受け、強くなりたいと決意を新たにした。しかしそれは、側から見ると迷走しているようにも見え……という状態。
スポーツものであれば「優勝エンド」が王道だが、
Free!はいわゆるスポ根ものとは若干趣が異なり、競技としての結果よりも精神的な充足や成長に重きを置いてきた。
だから、もちろん主人公たちの活躍はみたいし、できれば結果も伴ってほしい。けれど、それだけでは”終わり”として受け入れられる気がしない。
作品としては9年もの長きに渡り続いているので、これまで3人の監督が継投してきた。
同じ作品と言ってもやはり監督が変わると、色が、哲学が、そして当然画面が変わる。
競技としての「勝ち」要素も強くなってきた気がするので、本当にどう終わるのか、想像ができないでいる。
★
そもそも私がこの作品を好きになったのは、あるキャラクターの、たった一言の台詞がきっかけだった。
片田舎に住む、水に愛された天才スイマーとその幼馴染。2人は語らずともわかるというほど仲が良く、ずっと一緒に泳いできた。そんな2人も高校生になり、進路選択の時が訪れる。
そんな時期に、幼馴染が主人公に「俺と、本気で勝負してほしい」と挑んだのだ。
結果は歴然の差なのだけれども、挑んだ幼馴染は納得したらしい笑顔を見せた。(解釈に幅がもてる素敵な演出で、私もまだ判断を保留にしている)
その後、なぜいつも仲の良い主人公に挑むようなことをしたのかと問われた彼は「なんでだろ……凛が、羨ましかったのかな」と、言う。
私が落ちたのはこの瞬間だ。
凛(主人公のライバル)が羨ましい、という自分でも明確には自覚していなかったかもしれない本音がぽつりと漏れた、その切なさといじらしさに、落ちた。
ずっと主人公の隣にいた。幼い頃からずっと。でも、これからは? 仲の良い幼馴染ではあっても、これから先もずっと横に並び立つライバルには、なれない。
彼には、ここから先は一緒に行けないという予感があったのかもしれない。
別にそのままフェードアウトすることだってできただろうに、幼馴染の彼は、真っ向から勝負し、ぶつかることを決めた。
その強さ、そしてやはり敵わない切なさ。
そんな現実を受け止めたしなやかさ。
そしてひとり、夢を定め、東京の大学への進学を決めた芯の強さ。
惚れた。
この作品ではもう一人好きなキャラクターがいるのだが、そちらは原作小説のたった一文でストンと落ちた。
たったひと言、たった一文で魅力され、長期にわたり狂わせられることがあるのだと知ったのはFree!だった。
★
Free!にハマったあの頃、20代独身で、一人暮らしの部屋のベッドで日付が変わる頃始まるアニメをリアルタイムで鑑賞しながらTwitterで実況していた私は、30代子持ちになり、家事や育児や仕事に追われながらも、Free!だけは家族が寝静まったあとリアルタイムで鑑賞しながらやはりTwitterで実況していた。
環境はどんどん変わっていったけれど、ずっとFree!と共にいた。
思い返せば、映画は映画館で1回観れば充分、という感覚が覆り何度も映画館に通ったのも、
初めてアニメイベントに行ったのも、
初めてオールナイト上映に行ったのも、
初めて舞台巡礼に遠征したのも、
Free!だった。
初めてユーフォーキャッチャーでぬいぐるみを取り、
巨大広告を見るために普段降りない駅で降りて、
今まで買わなかったグッズも家に並ぶようになり、
アニメを何度も見、設定資料を読み返して
ぬいママになり
ローソンコラボ商品を求めて1万歩以上彷徨い歩き
ココスコラボが楽しすぎてファミレスに通い
Free!にハマらなければ行かなかった場所、できなかった経験、出会わなかった人たちがたくさんいる。
長い時間の中では、悲しい事もあった。
制作元の京都アニメーションの放火事件は本当に悲しかった。今でも事件の話が出ると、とても苦しくなる。
それでも、今日まで、物語を続けてくださって、本当に感謝しかない。
病める時も、健やかなるときも、
Free!とともに歩んできた。
不思議なもので、こんなに好きなFree!だけれども、完璧によくできた物語だとは思っていない。
これどうなのよ、と思う点も、荒いなと感じる部分もある。それでも総体としては大好きなのだ。
まるで結婚みたいだなと思う。
それでも2015年の映画『映画 ハイ☆スピード!-Free! Starting Days-』はマジで名作だと思うので是非観てほしい。この映画単体で楽しめるし、中学生男子がロボットに乗るでも、異世界転生するでも、悪と戦うでも厨二病を妙に拗らせるでも恋愛するでもなく、中学進学と部活での日々という極めて日常的な題材で、あの年代の、少し世界が広がって戸惑いながらも成長していく、子どもからほんの少し脱しつつある「あわい」の時期を、そのきらめきを、正面から繊細に描いている。
特に詰襟の学生服を着ていた人に観てもらいたい。
Free!がどのように終わるのか、終わってしまったら私がどうなるのか、本当に想像がつかない。
けれど、これまでの8年間は間違いなく最高だった。
願わくば、主人公が、実家の縁側でのんびり笑顔でお茶を飲んでいるような、そんな未来が想像できる終わり方だったらいいな。
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