キャンディーはヤンキーデイ1127
寒さで鼻がツーンとする。
間違いなく木枯らし1号だ、遂に来たのだ
と確信しニュースを観る。
どうやら未だ1号はやって来ていないらしい。
1号来る前に2.3号がやって来てしまうよ。
「ヒーローは遅れて登場する」などと言うことがあるが、では今回の1号はヒーロー級に強く、日本へ寒さをもたらすとでも言うのか。
ほどほどに頼むよ…
冬を感じとった今日の鼻からは様々な香りをも感じとった。本業も忘れない良い鼻だ。
最寄駅へ向かう大通りに路上駐車中の車内。マスクをしていない疲れたおじさんと目が合った。
すれ違いざまに香る紙タバコの焦げた匂いが鼻についた。
やや混みの電車内、斜向かいに寒そうに肩をすくめるおばさんが座った。
ヴァイオリンケースを肩に掛け缶コーヒーを両手に包む。
4号車はコーヒーの切ない香りでいっぱいになった。
高校の同級生、定期的に会うようにしている同性の友達に今日会った。
愛用のiPhone8へ中指で操作する彼女の癖に安心する。
お昼の日差しが心地よく差し入る電車で横並びに座る。乗客もまばらでホッとする。
一息ついた頃、隣の彼女が鞄の中をおもむろに覗き込む。するとハンドクリームが出てきた。
今度は嬉しそうに私の顔を覗き込み、私に訴えかける。
見覚えがあるような無いような…
ピンとこないが…
…思い出した。
彼女の誕生日に、私が彼女へプレゼントしたハンドクリームだ。
使用感のあるハンドクリームと、鞄の中から当たり前かのようにそれを取り出す嬉しそうな彼女の姿を見て嬉しくなった。
車内は柑橘系の爽やかな香りと彼女の温かさで満ちていた。