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本棚から1冊抜き出す。

「美術手帖 アートと人類学」

「人類学」という単語につられて買いました。普段は美術手帖なんて買ったことありません。この本で取り上げられているのは映像人類学で、僕が期待していたような「民族誌」の類は載っていない。
気軽に映像が残せる今、人類学の形態も変わっていくんだなあ。

僕も一時期、遊牧生活を映像で残したら楽しそうだと考えていたことがある。遊牧がいかに大変な生活形態かを知らしめるような映像が撮りたかったのだ。

遊牧というと、字面だけは呑気な生活形態を連想させるが、冗談じゃない。朝から晩まで肉体労働の連続。どこに遊の要素があるだろうか。まあ確かに僕が奴隷のように働いている間、ホームステイ先のお父さんは呑気に相撲を見ていたが。あの生活を「遊」牧と最初に名付けた人は相当に過酷な生き方をしていたに違いない。地獄出身か。

遊牧生活には「ワーク・ライフ・バランス」という概念が無いように感じる。あの世界は、仕事と生きることが混ざり合っている。2つを切り離して考えることは難しい。仕事の中に生きることが内包されているような、生きることの中に仕事が内包されているような。僕はこの感覚を人に伝えられない。何度も伝えようとするが上手くいかない。もどかしいので「お前、モンゴル行ってこい!」と言ってしまう。百聞は一見にしかず。

「ワーク・ライフ・バランス」の使われ方も少し気になる。どうしても、ワークの部分に負の意識を置きすぎじゃないだろうか。それだけ仕事が嫌な人が多いんだろうか。

留学中に映像を撮っていたら、僕が羊の群れを逃しす日の記録も残せただろうな。なかなかないドキュメンタリーが出来上がったはずだ。

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