(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)
超巨大グローバルカンパニーの内実とは。登場人物たちの生き様に、心を大きく揺すぶられる一冊です。
出版と同時に、経済界で大きな話題となったビジネス小説、『トヨトミの野望』、続編の『トヨトミの逆襲』。
ある人は半分、ある人は99%が真実と語る内容。
ビジネスの舞台は、愛知県豊臣市に本社を構える世界的自動車企業、トヨトミ自動車。創業出身の豊臣統一。左遷から這い上がりサラリーマン社長となった武田剛平。そして会長であり、統一の父、豊臣新太郎。この3人を中心に、彼らを取り巻く社内外、国内外の人物達。
読めばモデルが分かってしまう本作。巨大グローバルカンパニー、産業を背負った人々が、社内外でどのようなものと向き合いながら、戦うように生きているのか。通常のメディアでは取り上げないような内実が、小説という形だからこそ、ありありと描かれていきます。
本書で触れられる内容は、非常に多岐に渡ります。
創業から巨大企業にまで成長するまでの軌跡。政治をも巻き込んだ国家間での産業争い。保身と野心が入り混じる組織内政治。創業家が背負うものと社内での確執。
清濁併せ吞んだビジネス内情。愛憎混じり合う人々模様。普段では触れることも、近づくことも難しいような、グローバルトップクラスの世界で起こり得る出来事を追体験できます。
また同時に、そこでの人々の喜怒哀楽、葛藤の先にある生き様は、組織の規模が違えど似たようなものであり、人という存在の多面性、生々しさに、思わず心がざわめきます(詳細が気になる方は、ぜひ本書を手に!)。
末尾にある慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛さんの解説も、本書の内容を要点が書かれているとともに、その考察には一読の価値があります。
特に下の2箇所。
トップのリーダーシップのあり方は、本作の大きなテーマの一つです。
数十人もの登場人物がいる中でも、やはり際立つのは、社長豊臣統一、前社長武田剛平、会長豊臣新太郎の3名。第11代社長豊田章男さん、第8代社長奥田碩さん、第6代社長豊田章一郎さんその人。
組織という枠組みの中で、各自が己の自己利益を取ろうとする中でも、誰よりも組織利益と向き合い続けたお3方。
その技量、その才覚、何よりそのオーナーシップに、背筋が伸びます。
今や、豊田章男さんのリーダーとしての実績は間違い無いものがあります。
その上で、奥田碩さん、豊田章一郎さんら、トヨタという企業、自動車という産業の歴史の一端を率い、紡いできた人の凄みも知ることができます。
上記の3名が強烈な存在であることに加え、本作に登場する各登場人物達の生き様にも、胸に残るものがあります。
一人一人が自らの背負ったものと向き合いながら、他者と関わり・ぶつかり、世界が動いていく様子。
ルイ・トルストイは、”歴史(この世界)は、一人ひとりの人間の総和によって、形作られる(『戦争と平和』)”ことを描きました。
本作を通じ、TOYOTA社と自動車産業も、傑出した一部の人間達だけでなく、取り巻く膨大な名も無き人々の総和によって、その歴史が積み重なってきたことが、まざまざと浮かび上がります。
ドラスチックな面白さがあるのはもちろん、心が揺すぶられるものが余りに多く、読んだあとに平静を保てなくなってしまった本はいつ以来だろう…
きっと読む人によって、印象深い点は異なると思われますが、ビジネスや政治の世界で身を置く人であれば、一読の価値がある内容でした。
P.S.
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