(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)
1千年もの年月を生き抜いた大国が紡ぎ出す一大叙事詩。
ヴェネツィア。日本人からすると、イタリアの一観光地としての印象が大きい場所ですが、歴史上では「地中海の女王」と呼ばれるほどの繁栄したことがありました。
そして特筆すべきことは、冒頭にあるように、国家が生き抜いた年数。
5世紀から18世紀までの1千年以上。日本史だと、古墳時代から江戸の徳川吉宗の時代までと考えると、その凄さが際立ちます。
本書の筆者は、『ローマ人の物語』で有名な塩野七生さん。
古代ローマや古代ギリシアをはじめ、様々な国家を描いた塩野さんですが、本作のヴェネツィア共和国の歴史も、読者に多くの示唆を与えてくれます。
上記のように、ヴェネツィアは、土地も人も資源も貧しい国家でした。
古代ローマやオスマン帝国、江戸幕府のように、他を圧倒するような力をもって、長い年月生き残った国家は、歴史上複数見ることができます。
しかし、圧倒的に不利な環境、それに加えて、群雄割拠、他国の侵略も絶えない地にあって、1千年もの長きに欧州を席巻し、自由と独立を守り続けたヴェネツィア共和国のほかにあるのだろうか。
自給自足が不可能なうえに人口も少なく、国民の頭脳と意志を主要な資源とし、ありとあらゆる試練への対処し続けたその歴史は、零細中小事業者として、ハッとさせられることが多いです。
塩野さんの著書の特徴である、一つの物語の中に様々な観点を織り込む描写は、本作でも健在しています。
政治、経済から人々の暮らし、リーダー層から庶民のことまで取り上げられた内容は、読む人ごとに面白さのあると思われます。その上で、個人的に印象深かったのは、国家最後の衰亡に至ることに関する内容です。
この部分を読んだ時の感情を、いったいどう表現したらよいのだろうか…
平家物語にもあるように「驕れる者久しからず ただ春の夜の夢の如し」であれば、塩野さんの言うように、納得するしかありません。しかし、現実には、驕らずベストを尽くし続けた、けれども滅亡した。そんな事例が枚挙にいとまがありません(それは歴史上の国家だけでなく、企業においても)。
破壊的イノベーションにより、ある時代においては繁栄しても、時と場所の変化により、衰退への道へ落ちていくという真理。盛者必衰が歴史上の理であることから分かるように、それに抗うことが、いかに何事業であるかを改めて再認識します。
それを踏まえると、1千年ものときを、何度も何度も訪れる変化・困難、苦難に満ち溢れた歴史の中で、ヴェネツィア共和国には感服せざるを得ません。それも、頭脳と意志だけを武器にして。
本作は、塩野さんによるルネサンス著作集の中の一編となります。
『ルネサンスとは何であったのか』から始まり、主人公級の英雄『チューザレ・ボルジア』や『マキャヴェリ』、副主人公となる『女たち』、成熟した大人たち(ローマ法皇)を取り上げた『神の代理人』、そして、一大国家『ヴェネツィア共和国』。
その膨大な範囲の調査・考察・執筆に感嘆の意を持つとともに、様々な観点から、ルネサンスという時代を捉えることができたことは、貴重な知を得ることができました。
ルイ・トルストイが『戦争と平和』で描いたように、歴史というものは、本当に様々な事象・人が折り重なり形作られることだと痛感します。
過去の歴史から浮かび上がる原理原則・事例を心に刻み、今この時代の歴史を紡いでいこう。
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