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週末読書メモ98. 『歴史とは何か』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

過去は現在の光に照らされて初めて知覚できるようになり、現在は過去の光に照らされて初めて十分に理解できるようになるのです。人が過去の社会を理解できるようにすること、人の現在の社会にたいする制御力を増やせるようにすること、これが歴史学の二重の働きです。

「歴史とは何か」。

過去から現在、現在から未来を考えるための大きなヒントが本書の中に!


「歴史とは、歴史家とその事実のあいだの相互作用の絶えまないプロセスであり、現在と過去のあいだの終わりのない対話なのです」

このフレーズで有名な本書、『歴史とは何か』。歴史学の中では最良の入門書と呼ばれる一冊。

「歴史家とその事実」「社会と個人」「歴史・科学・倫理」「歴史における因果連関」「進歩としての歴史」「地平の広がり」という、歴史を考える上で重要な6つのテーマから構成される本書。

歴史学の専門家でなくとも、歴史に興味のある人であれば、きっと知的好奇心がくすぐられる内容となっています。


本書は、節々に心に残る言葉があります。

歴史とは、歴史家とその事実のあいだの相互作用の絶えまないプロセスであり、現在と過去のあいだの終わりのない対話なのです。

過去の事実に解釈を与えられる者、繋がりを見出せる者こそ、歴史家だと。

社会と個人ーーそのどちらかが先かという問題は、ニワトリと卵の問題に似ています。
(中略)社会と個人は分離できません。どちらも互いに必要で、相互補完の関係にあり、対立しているわけではないのです。
「人は自己完結の島ではない。人はだれしも大地の一片、大海の人掬いなのだ」とはジョン・ダンの有名な表現で、真実の一面を言いあてています。

改めて、社会と個人は不可分なものであることが、身に沁みます。


それらの言葉の中で、最も心を動かされたのは、下の内容でした。

歴史の研究とは原因の研究です。第三項のおしまいに申しましたように、歴史家は絶えまなく「なぜ」と問い続けています。解答の望みがあるかぎり、歴史家は休めません。偉大な歴史家はーーもっと広く、偉大な考える人は、と言うべきでしょうかーー新しいことについて、また新しい文脈において、「なぜ」という問いを立てる人のことです。

良き歴史家は、意識するかどうかは別にして、未来のことが骨髄に徹しています。「なぜ」という問いとともに、また歴史家は「どこへ」と問いかけるのです。

歴史とは、現在と過去のあいだの終わりのない対話とありましたが、同様に現在と未来のあいだの終わりのないプロセスだとも。


ルイ・トルストイも、名著『戦争と平和』の中でこう言いました。

歴史学はその動きのなかで、たえず観察のために、次第次第に小さな単位を取り上げて行って、その方法で真理に近づこうとする。しかし、歴史が取り上げる部分がどんなに小さくても、ほかのものから切り離された単位を仮定すること、何かの現象の発端を仮定すること、すべての人間の気ままな意志が、一人の歴史的人物の行動に表現されていると仮定することは、それ自体が誤りだと、我々は感じる。
(中略)観察のために無限小の単位 ー 歴史の微分、つまり、人間たちの同質の欲求を認め、積分(この無限小の総和をとる)方法を会得したときにはじめて、我々は歴史の法則を把握する期待が持てるのだ。

『戦争と平和』

マクロとミクロのどちらから捉えるかにしても、未来とは、現在・過去の積み重ねの先にあるものだと感じます。

未来の描くには、創るには、過去・現在・未来のあいだで終わりのない対話・プロセスを重ねていけと言っているのだろうなあ…


この期におよびまして、わたしは激動の世界、陣痛の世界を望みつつ、あの偉大な科学者のよく知られた言葉でお答えすることにいたします。ーー
「それでも、世界は動く」

良き歴史家は、未来を問う人間である。そう述べる筆者。

「それでも、世界は動く」。その言葉を胸に刻んで、これからも過去・現在・未来と向き合い続けていきたいです。


【本の抜粋】
歴史とは、歴史家とその事実のあいだの相互作用の絶えまないプロセスであり、現在と過去のあいだの終わりのない対話なのです。

社会と個人ーーそのどちらかが先かという問題は、ニワトリと卵の問題に似ています。
(中略)社会と個人は分離できません。どちらも互いに必要で、相互補完の関係にあり、対立しているわけではないのです。
「人は自己完結の島ではない。人はだれしも大地の一片、大海の人掬いなのだ」とはジョン・ダンの有名な表現で、真実の一面を言いあてています。

大事なことは、偉人のなかに、歴史プロセスの産物であり同時に行為主体であるような傑出した個性を認識することだと思われます。言いかえると、世界の形を変え、人間の思考を変えるような社会諸力を代表し創り出すような傑出した個性を認識することです。

過去は現在の光に照らされて初めて知覚できるようになり、現在は過去の光に照らされて初めて十分に理解できるようになるのです。人が過去の社会を理解できるようにすること、人の現在の社会にたいする制御力を増やせるようにすること、これが歴史学の二重の働きです。

歴史の研究とは原因の研究です。第三項のおしまいに申しましたように、歴史家は絶えまなく「なぜ」と問い続けています。解答の望みがあるかぎり、歴史家は休めません。偉大な歴史家はーーもっと広く、偉大な考える人は、と言うべきでしょうかーー新しいことについて、また新しい文脈において、「なぜ」という問いを立てる人のことです。

良き歴史家は、意識するかどうかは別にして、未来のことが骨髄に徹しています。「なぜ」という問いとともに、また歴史家は「どこへ」と問いかけるのです。

この期におよびまして、わたしは激動の世界、陣痛の世界を望みつつ、あの偉大な科学者のよく知られた言葉でお答えすることにいたします。ーー
「それでも、世界は動く」。

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