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週末読書メモ29. 『つながり 社会的ネットワークの驚くべき力』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

目から鱗!社会学が、経営の可能性を広げてくることを感じます。


そもそも社会学の大きな特色は、「私たちが暮らす日常生活の世界と何層にも取り巻く構造の世界とを、つねに連関し合うものして考える点」にあるそうです(『社会学 新版 (New Liberal Arts Selection) 』参照)。

その社会学の中でも、本書は「つながり(社会的ネットワーク)」に焦点を当てた一冊となります。

いやー、本当に衝撃的。これまで自分が生きていた世界のメカニズムは、こうも詳らかに解き明かせれているなんて。

自分自身が一つの超個体の一部だと考えれば、自分の行動、選択、経験を新たな観点から理解できる。自分が社会的ネットワークに埋め込まれていることから影響を受け、自分とつながっている近くの、あるいは遠くの他人に左右されるとすれば、自分自身の決定権の一部が失われることは避けられない。
(中略)こうした見方を裏返せば、人間は自分自身や自分自身の限界を超えられるということだ。
(中略)脳が一つのニューロンではできないことをできるように、社会的ネットワークは一人の人間ではできないことをやってのけるのである。

最近の研究から、影響力を持つ人が最も発揮できそうな特定の状況が明らかになってきた。結局のところ、影響力を持つ人はそれほどいない。つまり、集団には影響を受ける人もいなければならず、イノベーションの広がるスピードは、前者よりも後者の特質や数に依存する可能性がある。とはいえ、重要なのは以下の三つの点だ。特定の性質やトポロジーを持ったネットワークはカスケードを起こしやすいこと。カスケードが起こるためには両タイプの人が必要であること。自然に起こる、また人為的に引き起こされるカスケードをともに理解するには、ネットワークの形を知ることが不可欠であること。

人間同士の交流は、新たなテクノロジーに育まれ支えられてはいるが、テクノロジーがなくても存在するものだ。こうした交流を通じて個人の経験が拡大させられることにって、個人の経験を越える新たな社会現象が生まれる。このことは、集団の利益にとってきわめて重要な意味がある。ネットワークは、人類全体を個々人の総和をはるかに超えたものとするのに役立つ。よって、新たなつながり方を発明すれば、自然の定めを実現する私たちの力が増すのは間違いない。


今回はじめて社会学に触れましたが、本書、及び、他関連書(下2冊)を読むことで、世界の見え方が一変します。

何かを広めることも、逆に断たせることも、ネットワークによって変えられることが示されているので。

これは凄い。これを知っているか否かで、何か新しいことを立ち上げる際や変革する際の戦略・戦術が、別次元のものになるのではないか…


これら社会学の本を読もうと思ったきっかけは、世界の主要かつ最新の経営論を網羅した『世界標準の経営理論』に、下のことが述べられていたからでした。

世界標準の経営学では、よりはっきりと「人・組織は本質的にこう考え、こう行動するものである」ということにしっかりとした基盤を持った、3つの「理論ディシプリン」とでも呼べるものを応用しているのだ。それが、経済学、心理学、社会学である。

社会学は、人・組織の社会的な関係性のメカニズムを解き明かすのが一つの目的だ。産業も、組織も、企業も、ビジネスの世界は「人と人からなる社会」である。したがって経営学者は、社会学の理論を産業、組織、企業、ビジネスの分析に次々と応用しているだ。現代の経営学で社会学ディシプリン理論は、経営学ディシプリン、心理学ディシプリンに匹敵する一大勢力になっている。

思わず膝を叩く言明。『世界標準の経営理論』自体が良書として呼び名が高いですが、その中でも、この部分の内容が最大の収穫でした。


一方で、社会学ディシプリンとして取り上げられる経営理論は、一般的な経営学の世界では馴染みがないものであり、何一つ聞いたことがありませんでした…

(社会学ディシプリンの経営理論『世界標準の経営理論』)
・エンペデッド理論
・「弱いつながりの強さ」理論
・ストラクチャル・ホール理論
・ソーシャルキャピタル理論
・社会学ベースの制度理論
・資源依存理論
・組織エコロジー理論
・エコロジーベースの進化理論
・レッドクイーン理論

初見では、本当に何これと笑。

しかしながら、今回、本書『つながり』、『新ネットワーク思考』、『信頼の構造』、そして、社会学の入門書を読んでみたことで、ようやく少しは理解することができました。

(↓社会学の入門書)


知らないと、辿り着けない境地がある。そのことを改めて痛感します。

しかしそれは、知れば、今より先へ辿り着ける可能性があるとも言えます。

まさにこのことは、この本の最後の締めくくりにも。

二一世紀の大事業 ー 人類がまとまれば、全体で一人ひとりの総計よりも大きな力を持つと理解すること ー は、諸に就いたばかりだ。目覚めたばかりの子供のように、人間の超個体は自己を認識しつつあり、それによって私たちは確実に目標達成に近づくだろう。だが、この自己認識がもたらす最大の恩恵は、自己を発見する純粋な喜びであり、真に自分を知るためには、人間はなぜ、どのようにつながるかをまず理解しなければならないという悟りである。

"まず理解しなければならないという悟りである"、と。

経営学ですら、世界の一片でしかなく。

社会学然り、この広くて深い世界を、もっともっと理解していきたい。


【本の抜粋】
自分自身が一つの超個体の一部だと考えれば、自分の行動、選択、経験を新たな観点から理解できる。自分が社会的ネットワークに埋め込まれていることから影響を受け、自分とつながっている近くの、あるいは遠くの他人に左右されるとすれば、自分自身の決定権の一部が失われることは避けられない。
(中略)こうした見方を裏返せば、人間は自分自身や自分自身の限界を超えられるということだ。
(中略)脳が一つのニューロンではできないことをできるように、社会的ネットワークは一人の人間ではできないことをやってのけるのである。

社会的ネットワークには創造性が備わっている。ネットワークから生み出されたものは、誰か一人の所有物とはならない。ネットワーク上の全員のものなのだ。この意味で、社会的ネットワークは共有林に似ている。私たち全員がそこから利益を得る立場にあるが、同時に、ネットワークの健全性と生産性を維持するために協力しなければならない。要するに、社会的ネットワークは、個人、グループ、機関などによる手入れを必要とするのだ。

最近の研究から、影響力を持つ人が最も発揮できそうな特定の状況が明らかになってきた。結局のところ、影響力を持つ人はそれほどいない。つまり、集団には影響を受ける人もいなければならず、イノベーションの広がるスピードは、前者よりも後者の特質や数に依存する可能性がある。とはいえ、重要なのは以下の三つの点だ。特定の性質やトポロジーを持ったネットワークはカスケードを起こしやすいこと。カスケードが起こるためには両タイプの人が必要であること。自然に起こる、また人為的に引き起こされるカスケードをともに理解するには、ネットワークの形を知ることが不可欠であること。

弱い絆をたくさん持っている人は、情報やコネを与える代わりに、アドバイスやチャンスをもらえる場合が多いことになる。つまり、集団と集団の橋渡しをする人は、ネットワーク全体で中心的な位置を占めるようになり、経済面をはじめとする見返りを得る可能性が大きいのだ。
もう一つの帰結は、情報や機会を求めて意識的にネットワークを探す際、私たちはときどきネットワークの自然な境界を飛び越えるということだ。

絆を結び、社会的ネットワークのなかで一生を送るという私たちの傾向は、種として人間の発達に大きな影響を与えてきた。社会的ネットワークは脳の急速な巨大化を促し、そのおかげで人間は言葉を手に入れ、地球を支配する種となった。同時に、こうした生物的変化に通じて、人間はある能力を獲得した。大きな集団の中で見ず知らずの相手とさえ協力し、壮大で複雑な社会をつくりだす能力である。

人間同士の交流は、新たなテクノロジーに育まれ支えられてはいるが、テクノロジーがなくても存在するものだ。こうした交流を通じて個人の経験が拡大させられることにって、個人の経験を越える新たな社会現象が生まれる。このことは、集団の利益にとってきわめて重要な意味がある。ネットワークは、人類全体を個々人の総和をはるかに超えたものとするのに役立つ。よって、新たなつながり方を発明すれば、自然の定めを実現する私たちの力が増すのは間違いない。

二一世紀の大事業 ー 人類がまとまれば、全体で一人ひとりの総計よりも大きな力を持つと理解すること ー は、諸に就いたばかりだ。目覚めたばかりの子供のように、人間の超個体は自己を認識しつつあり、それによって私たちは確実に目標達成に近づくだろう。だが、この自己認識がもたらす最大の恩恵は、自己を発見する純粋な喜びであり、真に自分を知るためには、人間はなぜ、どのようにつながるかをまず理解しなければならないという悟りである。

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